デジタルトランスフォーメーション 第1回

19.05.13 04:25 PM By s.budo

中小企業に見るデジタルトランスフォーメーション(DX)の超克(前編)

デジタルトランスフォーメーション概観

デジタルトランスフォーメーション(Digital transformation; DX)とは、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱したとされる概念で、ビジネスでは、「企業がテクノロジーを利用して事業の業績や対象範囲を根底から変化させる」と定義されています。※Wikipediaから抜粋

国内では、その提唱から10年余りを経過した2015年頃よりクラウドサービスの普及と呼応して、これからのITの方向性としてその概念が認知されてきた感があります。
一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会が2019.2.28に発表した『企業IT動向調査2019』プレスリリース第2弾(ビジネスのデジタル化)では、国内におけるその取組状況について上場企業とそれに準じる企業を中心に以下の調査(期間:2018.9.25-10.17)結果が報告されています。※PRより図1転載


対前年比(2017年)では、ほぼ全ての項目が増加しておりデジタル化の進展を伺わせますが、他方、現在でも、29.2%の企業はデジタル化を未実施であり、検討中を含めれば61.1%と、ほぼ5社に3社はまだデジタル化が手つかずの状況となっています。

また、実施中の38.9%の企業では、従来の取り組みとは様相が異なり、経営層の巻き込み、部門横断プロジェクト、スモールスタートからの着手や、事業部門、IT部門、全社による予算措置、また、事業部門+IT部門+既存ベンダーや大手ベンダーの体制等、その展開も各社各様となっている模様です。
上場企業とそれに準じる企業の「デジタル化」状況を鑑みるに、中堅・中小企業における「デジタル化」は、一層ハードルの高い取り組みに映ります。

中堅・中小企業のデジタルトランスフォーメーションへの課題

デジタルトランスフォーメーションでは、基本的に「商品・サービスのデジタル化」は競争優位性、「プロセスのデジタル化」は生産性向上、効率化を目的とすることが多いと思われますが、中堅・中小企業にあっては、以下の様な経営環境から、その目的(デジタルトランスフォーメーションのインセンティブ)が設定しづらい状況にあります。

【経営環境の特徴】
商品・サービス
  • 既存顧客が中心の長年のビジネス展開による競争環境の回避
  • 商品・サービスの長寿化による抜本的な革新の先送り
プロセス
  • 属人的な取り組みによる業務のブラックボックス化
  • 顧客、商品・サービスの安定(固定)化による業務変革の先送り
経営
  • 既存のビジネス市場に連動した安定~停滞~衰退傾向による利益の低下
  • デジタル化が威力を持つデータ量の不十分さ、社内IT人材の不足

この様な、克服が容易ならざる状況に加え、中堅・中小企業におけるデジタルトランスフォーメーションでは、更に以下の3つの課題が重く伸し掛かります

【3つの課題】
  • 新規顧客開拓、商品・サービス開発、プロセス変革のノウハウ、リソースの不足
  • トランスフォーメーションによる「商品・サービス」の期待売上、「プロセス改善」の効果が事前評価できない
  • デジタル化計画(目標設定、IT投資予算、体制、工程、ノウハウ等)が策定できない

既存の中堅・中小企業が、これらの状況を超克できずレガシー企業のまま、デジタルネィティブ企業の後塵を拝することになるか否か、これから正念場を迎えるものと思われます。

中小企業におけるデジタルトランスフォーメーション事例

当認識のもと、今回、弊社が展開するmo4maサービスで取り組んだ中小企業A社におけるサービスとプロセスのデジタル化事例を、前編と後編の2回にわたりご紹介させて頂きます。

【Keyword】
  • オンライン予約システムの導入
  • サービス開発による予約件数の向上、収益化
  • データの蓄積、一元化
  • データ分析による効果的なマーケティング施策
  • 業務の現状・問題点分析による新業務フローの確立
  • 働き方改革
  • IT投資

ルームサービス事業を展開するA社が、デジタル化の取り組みにゴーサインを出した理由はシンプルで、競争優位性という相対的な視点でなく、生産性向上、効率化という合理的な視点でもなく、お客様からの予約連絡(コミュニケーション)は、今後加速度的に電話からネットに移行するという社会動向の予想からでした。
実験的で試行錯誤の要素はあるものの、社会動向を洞察しつつ、業界動向に半歩先んじることで、新たなノウハウの蓄積、デジタル化の評価フィードバックから、漸進的なデジタル化の取り組みが可能になると判断されました。中堅・中小企業にとっては具体的な変革イメージを描きづらいデジタルトランスフォーメーションですが、経営者の迅速な意思決定、計画と実施の柔軟な展開、中期的展望等は、変革を実現する大きな要因であり、また、社内が一丸となることで組織レジリエンスが高まることも期待されます。
 
今回のプロジェクトでは、mo4maのコンサルタントとITスペシャリストが、A社のビジネス環境の分析から、オンライン予約システムの導入展開、業務フローの変革まで、ほぼすべての領域にわたって支援を行いました。
オンライン予約システムの選定では、グローバルにSaaSサービスを展開するデジタルネィティブ企業の最新ITサービスと業務プロセスをベンチマークにしたいとの思惑も手伝い、積極的に海外SaaSベンダーの情報収集、比較評価を行いました。
いみじくも、2018年10月16日の記者会見で小林喜光経済同友会代表幹事が「世界と比べて(日本の)デジタルの活用が3周遅れている」との危機感の滲む発言に共感しつつ、その遠い背中に焦燥感を募らせるプロジェクトとなりました。

次回、Keywordの具体的な取り組みをご説明させて頂きます。