意外と身近な?フェムテック市場

22.10.28 01:20 PM By s.budo

偶然に知ったフェムテック市場について様々なデータをもとに考察してみます。

改めてフェムテックとは?


フェムテック(Femtech)とは、女性(Female)+テクノロジー(technology)の造語です。

Wikipediaによれば、2016年にデンマーク出身の起業家イダ・ティン氏を始めとする女性イノベーターの生理トラッキングサービスを端緒に、女性のライフステージにおける「生理・月経」「妊活・妊よう性」「妊娠期・産後」「プレ更現在、年期・更年期」などの様々な課題を解決できる製品やサービスの急成長分野として注目を集めています。日本では2020年が「フェムテック元年」と言われ、世界では2025年までに5兆円規模の市場になると予想されています。

妊活(妊娠活動)のアイディア

多くの読者の方々にとって、フェムテックは馴染みのない市場と思います。私自身、ヘルステックに興味はあってもフェムテックに関心がおよぶことはありませんでした。が、偶然、私が通院する施術院で一緒になった女性から妊活に関するアイディアの相談を受け、この新市場を知る機会を得ました。最近の施術院は、ぎっくり腰や四十肩、膝痛などの身体機能の回復を目指す方だけでなく、慢性疲労や自律神経失調、持病などの心身の健康に悩みを抱える方の利用も増えており、一部には妊娠しやすい体作りを目的に利用する女性もいます。

そもそも妊活(妊娠活動)とは、妊娠に関する知識を得たり、妊娠に向けて体調管理を心掛けたりする諸々の活動を指しており、一般的に、食事療法や漢方薬、基礎体温、性交渉のタイミング管理、運動などが知られていますが、相談された妊活のアイディアはとても面白くてユニークな内容で、俄然、興味が湧きました。


妊娠の実態

令和3年に厚生労働省が発行した「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」によれば、日本では2019年に60,598人が生殖補助医療により誕生しており、全出生児(865,239人)7.0%の割合を占め、その割合は年々増加傾向にあります。

ちなみに生殖補助医療には、排卵日を診断して性交のタイミングを合わせるタイミング法、内服薬や注射で卵巣を刺激して排卵をおこさせる排卵誘発法、精液を子宮に注入する人工授精などの一般不妊治療と「体外受精」や「顕微授精」などの生殖補助医療があり、今年4月より、これらの治療が保険適用されることになりました。

またもう一方の実態として、不妊を心配したことがある夫婦は、2015年に35.0%(2021年の最新調査では39.2%)、実際に不妊の検査または治療経験がある夫婦は18.2%(同22.7%)にもおよんでおり、自然に妊娠を迎えられる夫婦が減少している深刻な状況が浮かび上がっています。

フェムテックの最新動向、展望、成長予測

次に、フェムテックの最新動向、展望、市場の成長予測に関する情報をいくつかご紹介します。

1つ目は、2021年発表の矢野経済研究所の「フェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場に関する調査」です。当調査によれば、国内の市場規模は2020年が597億800万円、2021年が635億840万円と見込まれ、その中で「不妊・妊よう性ケア/妊娠・産後ケア」分野は約30%の約200億円を占めています。
2つ目は、今秋に開催される「第1回FemtechTokyo(2022/10/20-22東京ビックサイト)」です。当展示会は企業・メーカー・流通・自治体・医療機関などとの商談、一般消費者へのPRを目的に企画され、女性と関連の高いメディアパートナーや協力媒体、協力団体、支援団体等が開催に関わっています。

3つ目は、McKinsey & Companyが今年2月に発表した「The dawn of the FemTech revolution(フェムテック革命の夜明け」と題するレポートです。その中で「FemTech企業の70%以上が1人の女性創業者である点、女性の研究者、発明者、投資家、創業者が増えることで、女性特有のヘルスケアのニーズ、より消費者中心の製品とソリューションが開発される点、女性の健康状態の改善が社会のより良い結果につながる点」を当市場の特徴として挙げています。

最後は、Precedence Researchの市場成長予測です。当調査によれば、世界のフェムテック市場規模は、2030年までに約1,030億米ドルを超えると予想され、2022年から2030年までの期間中に8.12%の複合年間成長率(CAGR)を予測、その成長要因を5つ挙げています。

 ・女性における健康意識の向上
 ・「生理の貧困」等の社会問題、女性特有の健康問題に関する意識の高まり
 ・スマートフォンの普及によるデジタルヘルス関連サービス提供インフラの充実
 ・政府機関の様々な施策、助成等による市場の育成
 ・ウェアラブルデバイス需要の増加と積極的な投資



これらを見る限り、フェムテックは大変有望な市場に映ります。

歯止めのかからない少子化

フェムテック市場への期待が高まる一方で、国内の出生数は歯止めがかからず低下の一途を辿っています。

厚生労働省が公表した「令和3年人口動態統計月報年計(概数)の概況」調査によれば、2021年の出生数は過去最低の81万1604人、前年の84万835人より2万9231人減少、出生率(人口千対)は6.6で、前年の6.8より低下しています。

そして、同省が8月30日公表した人口動態統計(速報値)によれば2022年上半期(1~6月)の出生数は、前年同期と比べて5%少ない38万4942人となっており、上半期では、2000年以降最も少なく、初めて40万人を下回りました。
また、2022年9月9日公表の「第16回(2021年)出生動向基本調査」調査では、結婚意思のある18〜34歳の未婚男女の平均希望子ども数は、男性で1.82人(前回2015年では1.91人)、女性では初めて2人を下回り1.79人(同2.02人)と過去最低を更新しています。

供給が需要を生む?

「供給が需要を生む」としたセイの法則(諸説あり)に倣えば、フェムテック市場の成長とともに少子化も改善されるはずですが、本当にそうなるのか期待と不安が交錯します。これらの状況を踏まえつつ、現在、新市場に一石を投じる面白くてユニークな妊活アイディアの商品化を検討中です。

プロフィール

筆者:武道 誠芳 株式会社テンプロクシー 代表取締役

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