ナィーブ(理想的?)な組織

24.04.23 12:24 PM By s.budo

今回は、ナィーブ(理想的?)な組織をテーマに、目にとまる、心に留めた人と組織にまつわる内外のあれこれをクリッピングしつつ考察します。

従業員満足度調査に映る日本の現状

近年、欧米を始め、国内でも従業員の満足度調査(Employee Satisfaction)やエンゲージメント調査(Employee Engagiment)を通じて、従業員のパフォーマンスやモチベーションを評価、組織の課題等を洗い出し、業績の向上や組織の改善、離職率の低下等、経営に役立てる企業が増えています。

オランダのランスタッド社の2019年に実施したグローバル調査によれば、日本は「仕事に対して満足」と回答したのは42%と、調査対象34カ国中最下位であり、また、米調査会社ギャラップの2022年の調査では、日本は熱意ある社員の割合は5%で調査対象129カ国中128位となっています。さらに、2022年10月に厚生労働省が公表した「平成31年3月に卒業した新規学卒就職者の離職状況」では、就職後3年以内の離職率は新規高卒就職者が35.9%(前年比1.0ポイント低下)、新規大学卒就職者が31.5%(同0.3ポイント上昇)と高止まりしています。

満足度やエンゲージメントの向上には、“企業と従業員との信頼関係”、“企業の目指す方向性に対する従業員の理解・共感、職務を通じた貢献”の2点を如何にマネジメントするかが肝要と思われますが、今日の経営は、業績不振を理由としたリストラや「調整弁」とした派遣社員の雇用が慣行化しており、甚だ心許なく感じられます。

従業員満足度調査に映る日本の現状

人と組織にまつわる問題解決だけでなく、子育て給付金の様な家族手当やベーシックインカム制度をも先取りした経営哲学として100年前に創業した出光興産が想起されます。

ご存じのように、出光氏は経営者として「人間尊重主義」と「大家族主義」をモットーに、「会社を支えているのは人、人を大切にせずして、何をしようというのかと」いい、「クビを切らない」「定年制がない」「出勤簿がない」「労働組合がない」という四無主義を打ち出しました。敗戦で海外部門をすべて失い、従業員をどうするかという話し合いの席上でも、「君たち、店員(従業員)を何と思っておるのか。店員と会社は一つだ。家計が苦しいからと、家族を追い出すようなことができるか!」といい、一人もリストラせずに経営を立て直しました。

また、「一人ひとりが経営者、仕事の上ではお互いに独立して、ぼくはぼくなりの仕事をしておるし、従業員は従業員なりの仕事をしておる。言い換えれば、各自の受持の仕事の上では、お互いに自主独立の経営者だということだ。出光の若い人が「私は経営者です」といっているそうだが、それはみなが権限の規定もなく、自由に働いているということであって、ぼくはこういう形が理想だと思う。」と話しています。※「出光佐三の言葉」Webページ より抜粋編集

この様な一貫性ある経営哲学は、ひとり経営者のカリスマ性によるのでしょうか?

稲盛和夫氏のアメーバ経営

出光氏の経営哲学を具現化する経営手法の一例として稲盛氏のアメーバ経営が想起されます。

ご承知の通り、アメーバ経営とは、組織をアメーバと呼ばれる独立採算で運営する小集団に分け、その小さな小集団にリーダーを任命し、共同経営のような形で会社を経営する手法です。この経営手法は、稲盛氏が創業した京セラ、KDDIの前身である第二電電で高収益を上げ、日本航空(JAL)の再建においても目覚ましい成果を残し、医療・介護分野にも導入が進むなど、業種を問わず、国内はもとより海外でも大きく進化・発展を遂げています。

アメーバ経営は、稲盛和夫の「会社経営とは一部の経営トップのみで行うものではなく、全社員が関わって行うものだ」という考えが貫かれています。
※京セラコミュニケーションシステムWebサイトより抜粋編集

NTTの「リモートスタンダード制度」

コロナ禍におけるリモートワークの進展で社員の働き方が変わりつつある現在、一歩先を行く企業としてNTTグループが目に留まります。

NTTは、リモートワークの推進に伴い、社員の働き方に関する意識調査を定期的に実施しており、2021年度「リモートワークの実施状況に関するアンケート(国内グループ社員約113,000名が回答)」では、リモートワークの実施率が高い社員ほど生産性が上がったと回答している傾向が高いという結果が出ました。
NTTは、多様な人材の活躍機会の拡大、働きがいや働きやすさの向上を目的に2022年7月から「居住地」にとらわれない働き方を実現するため「リモートスタンダード制度」を導入しています。リモートワーク中心の働き方にふさわしい処遇・環境の整備に力点をおき、ワークスタイル(働き方)の変革を進めることで、社員エンゲージメントも向上し、イノベーションの創出につながると考えています。
※Annual Report 2022 - NTT Group Sustainability より抜粋編集

完全リモート、グローバル展開する組織

世界には更に進んだ企業があります。
Creative Forceは、助成金やアワード管理ソフトウエアのクラウドサービスをグローバルに展開する会社で、16の国籍を持ち、15 の言語を話し、18 か国の 30 の都市に住んでいる社員で組織され、完全にリモートで、分散した、どこからでも仕事をし、24 時間365日体制で緊密に連携している専門家のグローバルチームとしてマネジメントされ、そのサービスの5つ星評価から、ヨーロッパの東西、中東、アフリカ、アジア太平洋、南北アメリカで顧客を獲得しています。
因みに、Creative Forceは、三省堂 辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2022」で大賞を得たタイパ(タイムパフォーマンス)の最大化を経営目的にしています。
      • 忙しい世界では、時間は私たちの最も貴重な商品です
      • Creative Force の目的は、あなたが時間を最大限に活用できるようにすることです
      • Creative Force製品で過ごす時間は、絶対に有意義なものです
      • そして、好きなことに費やす時間を取り戻すために
※Creative Force Webサイトより抜粋編集

商品に対する顧客満足度評価が、企業に対する従業員満足(不満足)に転じ、ワークスタイル(働き方)が変革、進展する今こそ、企業と人(従業員)の関係(組織)を再構築、原点回帰する転換点かもしれません。

s.budo