NYノマド 第11回:ホリデー商戦と手放せないメディア

19.12.05 04:51 PM By s.budo

サンクスギビングデーからホリデーシーズンのスタート!

皆さん、こんにちは。ニューヨークはいよいよ冬シーズンに突入しました。気温がマイナスになる日も増え、マンハッタンを歩く人々もニット帽にマフラーの重装備になりつつあります。

11月末には感謝祭(サンクスギビング)、そして12月のクリスマスといよいよホリデーシーズンの到来です。サンクスギビングは11月の最終木曜日と決まっており、その翌日はブラックフライデー、ビジネスをする人にとっては一年の中でもビッグな商戦が繰り広げられる時期です。サンクスギビングは、元々は神の恵みに感謝して収穫を祝うもので、アメリカでは家族や親しい人で集まり、食卓を囲み、愛や感謝を伝え合うアメリカでもクリスマスに匹敵する国民の祝日です。

感謝祭の由来はウィキペディアに譲らせていただくとして(興味のある方はこちらを参照ください )、

感謝祭が近づくと、学校でも感謝祭を学ぶようで、4歳の娘もプリスクールでサンクスギビングの歴史、意義、そして自分の家族ではどんなふうに過ごすのか、などを学ぶようです。

娘が学校から持って帰ってきたサンクスギビングの教材をパラパラとめくってみると、塗り絵をしながら学べるプリントが中心で、知識を学ぶというよりも、まずは手を動かして塗り絵をしてサンクスギビングのイメージを作り、そこからサンクスギビングのストーリーを展開していく構成になっているのでしょう。


4歳の日本人の娘でもすんなりと入り込んでいけたようです。



自宅でも、「サンクスギビングってなあに?」と娘に尋ねると、「ネイティブアメリカンの人たちがピルグリム(アメリカに渡ったイギリスの清教徒たち)に食べ物をあげたんだよ」と話してくれました。


写真(筆者撮影):娘の学校のサンクスギビングを学ぶプリント教材

そしてもう一つ、これは素敵だなあと思ったのが、そのプリント教材の中に、先生から生徒への感謝のメッセージが表彰状のようにカード形式になって送られているものが入っていることでした。


先生から娘への感謝のメッセージには、"You care and share"と書かれており、"お友達への心配りと、共有をしてくれること"に感謝してくれていることが分かり、親としても子どもの日頃の学校生活の様子や良いところをこのメッセージから受け取り、知ることができるのはとても有難く、嬉しいことに感じました。


先生から生徒全員、一人一人に、その生徒への感謝のメッセージをプレゼントしてくれるというのはいいですね。


日本でもディズニーが有名ですが、サンクスカードを渡し合うというのを企業内で実践していたりしますね。

企業での実践は組織のコミュニケーションを活発にしたり、関係性をよくしたりするのを目的としていますが、皆で集まり日頃の感謝を交わし合う機会が年に1回あることは、日々の目に見えない感謝や自分を支えている関係性に改めて気づき、またそれらを育み、紡いでゆく機会となるとても素敵な行事だと思います。


写真(筆者撮影):娘の学校の先生から娘への感謝のメッセージプリント

ホリデー商戦開始!

さて、サンクスギビングデーから始まるホリデーシーズンは、アメリカでも大型連休の相次ぐ大きな商戦機会となっており、この時期は様々なお店のセールやクーポン合戦が繰り広げられます。


我が家の郵便ポストにも、購入したことのあるお店や、それ以外のお店からのブラックフライデーセールやクーポンのダイレクトメールが溢れるようになってきました。


いつもお世話になっているAmazonさんからも、早々に、子どものクリスマスプレゼントのカタログが届き、キッチンテーブルの上に置いておいたところ、目ざとく4歳の娘が発見し、夢中でカタログを眺めていました。


このおもちゃカタログ、なかなかやるんです。


私もおもむろにカタログを開いて眺めていると、「むむ、おぬし、やりおる。。」という気持ちになっていきました。


大人に簡単に捨てさせないデザイン、子どもが飽きずに眺める工夫、そして親子でクリスマスのプレゼントをコミュニケーションし合える仕掛けなど、随所にデザインの工夫がなされているのです。


写真(筆者撮影):送られてきたAmazonのクリスマスギフトカタログDM

子どもが大好きなシールと親が思わず知りたくなる仕掛け

およそ80ページのおもちゃカタログから娘が早速見つけたのが、ページの中についていたシール
シールのシートの上には、「Tag your favorite gifts」と書いてあり、自分が好きなもの、欲しいプレゼントにシールを貼れるようなデザインになっています。

シールがあれば、どこかに貼りたくなるのが子どもの性。気が付くと、娘はバービーのページに”YAY”のシールを貼っていました。
娘はまだ英語の文章は読めませんが、直感的にわかってしまうんですね。

今年はバービーのおもちゃが欲しいのね、ふむふむ、はて、このお着換えドレッシングルームセットはいくらくらいなのかしら?
と思いながらページをしげしげ見つめていると、ページの左下には、「SCAN & SHOP Barbie」のAmazonスマイルコード(QRコード)があるではないですか。
このスマイルコードにアクセスすると、Amazonのバービーのおもちゃページに飛ぶわけですね。
こんなスマイルコードがあると、価格を確認してみたい気持ちがむくむくと湧いてくるではありませんか!なんとまたAmazonにまんまと購買の動線に乗せられそうになっていました。

危ない、危ない。


そして気を取り直して、カタログの最初のほうをめくってみると、「TOP TOYS」という人気のおもちゃを紹介するページが。ついつい、最近はどんなおもちゃが人気なのかなと眺めてみてしまうではないですか。

何このパンダ?何がおもしろくて人気なワケ??

とまたもやこのパンダのおもちゃにアクセスしたくなってしまう私がおりました。気が付けばAmazonのページをサーフィンしている私。いや、敵ながらあっぱれ、です。

親に簡単に捨てさせないアナログな情報、コミュニケーション機会の提供

他にもまだまだ仕掛けがありました。
表紙を開くと、「この本(カタログ)を2回はチェックしたくなるよ」という自信に満ち溢れたメッセージとともに、ウィッシュリストが。そしてその次のページには、子どもと一緒に穴埋めをして面白いお話を作って楽しもうというお話づくりのスクリプトが。

実際にやるかどうかは別にして、ウィッシュリストやお話づくりはクリスマスという機会に親子間のコミュニケーションを生み、楽しむ機会を提供してくれており、おもちゃの広告だけで始まらないカタログのデザインに好感度が上がります。
お話づくりの次のページには、カタログを使ったショッピング方法やメリットなど、Amazon側の販促にプラクティカルな情報がばっちり掲載されていたりはするのですが、、、。


そして、裏表紙の前のページには、Amazonで購入したクリスマスプレゼントの段ボールが届いたら、という前提で、段ボールを使ってホッキョクグマを作ろうというクラフト遊びが紹介されています。

最後のページにAmazonの段ボール、スマイルマークを余すことなく活用したホッキョクグマのクラフトづくりの提案、完璧ですね。

クリスマスを全てAmazonにハイジャックされた気分になりました(笑)。

クラフトづくりやお話づくりのページがあると、もしかして子どもとやるかもしれないからすぐに捨てなくてもよいかなという気分にさせられてしまいます。
カタログは見られなければ意味がありません。ただ単に分厚くて、買わせるだけの広告やカタログデザインでは、それを繊細に感じ取った消費者はゴミ箱にぽいと捨ててしまうことが多いのではないでしょうか。
そうではなく、購買の動線をがっちりと抑えつつ、随所にクリスマスという機会にちなんだ、これは使えそうだな、やったら楽しそうだなというアクティビティの提案を挟み込み、めくって楽しめる緩急のある情報デザインになっており、おもちゃの広告や商品情報を見せられるだけのカタログとは一線を画すカタログになっています。
紙質も厚みがあって比較的よく、お金をかけて作っているのではないでしょうか。

この近年で一消費者としても、最もしげしげと見入ってしまったカタログでした。
恐ろしや、Amazon!

Part2では、ブラックフライデー用、親のショッピングのための子どもを預かるサービス、映画館の最新事情、そして競争が激化する動画配信サービスをご紹介させて頂きます。

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ビジネス、公的な活動問わず、アメリカのこれらの事例から何かのヒントがお届けできれば幸いです。みなさんからのコラムに関するご質問や、こんなことを聞いてみたい、知りたい!というリクエスト、叱咤激励などなど、24時間365日お待ちしております。ではまた次回コラムでお会いしましょう。

columnist
Aya Kubosumi ノマドマーケター


コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。



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