NYノマド 第13回  2020年、気になるビジネス!ーグリーンラッシュに沸く、娯楽用大麻産業 Part3

20.02.18 10:16 AM By s.budo

Part3. チョコレートから美容、スパークリングウォーター、そしてペットのおやつまで!? 幅広い商品・サービス展開

チョコレートから美容、スパークリングウォーター、そしてペットのおやつまで!? 幅広い商品・サービス展開

それでは早速、具体的にどんな消費者向け製品・サービスがあるのか眺めてみましょう。


CBD商品としては、主要なものとしてオイル製品が挙げられます。

こちらの商品はコロラド州生まれの会社、CBDistillery        のCBD商品で、アメリカ産CBDと手軽な価格帯をPRしています。


例えば、CBDオイルでは、最も安いものが30mlで20ドルから30ドルの価格で、CBDの含有量によって多いほど価格が上がります。



効用としては植物由来のCBD成分を含んだオイルが睡眠、食欲、気分、免疫機能、体温などを整えたり、吐き気、炎症などを抑えると記載され、直接舌に数滴を垂らして服用したり、飲料に垂らして服用することを推奨しています。

画像: https://www.thecbdistillery.com/より引用

同じオイルタイプの商品で、同じくコロラド発の Stanley Brothers社 が展開するCBD製品ブランド、Charlotte's WebのCBDオイルは149.99ドルと高級ラインのオイルです。


高価格帯の商品だけあって、パッケージデザインも洗練されていて、高品質のオイルであることを強調しています。


効用としては、日々のストレス軽減、集中のための落ち着き、運動による炎症反応からの回復などをあげ、これらCBD製品は毎日決まった時間に定期的に摂取することが望ましいとウェブサイトに記載しています。


私もサプリを飲むことがありますが、よくありがちですが、なかなか続かない(笑)、のです。

容易に服用を忘れます。

そして賞味期限切れのサプリのボトルが大掃除の時にまとめて捨てられることになります。


これだけの高価なオイル、かつ、毎日服用するのが難しいという人間の性質も相まって、1回購入して終わり、ということになりがちなのではないかと思います。


ワンタイムパーチェイス(初回購入)のみだと売り上げ増加も期待できませんので、化粧品のように毎日必ず使用するような価値やデザインを考えたり、よほどの強い摂取理由、動機付けと価値の3つを丁寧にデザインして提供しないと難しい商品ですね。


商品のポジショニングとしては、植物性由来のオイル、ハーブや漢方などのエキスといった商品群に近いものを感じます。

CBD成分が入った食品も次々と開発されています。

こちらは先の高級オイルと同じ会社、Charlotte's Web

CBDグです。


価格は1個54.99ドルで、グミタイプのサプリメントとして販売されています。


ジンジャーやストロベリー味の展開があり、CBD成分とともに高品質なナチュラルな植物由来成分を配合していることを謳い、睡眠、落ち着き、そして疲労回復の3つの機能と効用を展開しています。


錠剤のサプリメントよりも食べやすく、口寂しいときなどにも手が伸びそうです。

Stanely Brother社はもともとStanely兄弟の叔父がガンに冒され、ガンの代替治療として大麻に出会い、ビジネスを立ち上げたそうです。

そしてこのCharlotte's Webラインは、この兄弟が乳幼児性難治てんかんの一つであるドラベ(Dravet)症候群を抱えるCharlotteという女の子に出会い、てんかんを抑える様々な治療薬が効かなく、途方に暮れていた両親とこの女の子のために商品を開発しようと始めたものだそうです。


商品開発の背景にストーリーがあり、このストーリーがブランディングに力を与えていますね。


医療用大麻を使用するためにはもちろん、医師の診断と処方箋が必要となります。

それには手間も時間もお金もかかります。


こうしたペインポイントを解決し、気軽に試せる代替医療としてのCBD成分入りのオイルやサプリはある一定程度のニーズがありそうです。

続いてはとってもお洒落なCBD入りチョコレートです。

画像: https://shopserra.com/productsより引用

SERRA社のもので、リラクゼーション、ハッピネスなど、効用テーマごとの種類があります。

例えば、ダークチョコレートはタンザニアとエクアドルのカカオ成分70%にチェリー、レモン、コーヒーの風味を加え、ハッピネスを高めてくれるとあります。

価格は一つ10ドルから20ドルほど。なかなかの高級チョコレートですね!

画像:SERRA社の店舗 https://shopserra.com/aboutより引用

SERRA社は自社のミッションとして、大麻のイメージを刷新していくこと、大麻がもっと人々の毎日の生活を高め、洗練されたお客様に心地よさや好奇心をもたらすことを掲げています。

ネガティブなイメージのある大麻をファッションや嗜好品のポジショニングに近づけていこうとしているのではないでしょうか。


もっとお洒落で、洗練された存在にしようという意思がこのプロダクトデザインやウェブデザインからも感じられます。そして同社の商品を販売する店舗も同様にインテリア、店舗デザインなどにもそのハイエンドで洗練されたブランディングが体現されています。


どんどん行きましょう。

続いてはCBD入りのスパークリングウォーターです。


こちらはRecess社のもので355ml缶8本で39.99ドル、1本あたり5ドル弱ですね。なかなかの高級スパークリングウォーターです。


画像の商品はブラックベリーチャイですが、こちら含めてピーチジンジャー、ポメグランテハイビスカスの3種類のフレイバーがあります。

味の違いはありますが、中身はジンジャー、お茶にも含まれるLテアニン、そして大麻エキスの3つが入っているようです。



それぞれ、ショウガは集中や記憶力を高める効果、Lテアニンはストレス軽減と気分向上、大麻エキスは精神を落ち着け、身体を整えると謳い、現代人が抱える、インターネットでたくさんのタブをブラウザで開いて脳を緊張させ続けているというストレスや疲労、神経の昂りからの解放を提供したいと”Not tired, not wired.(疲れない、神経が高ぶらない)”というキャッチコピーを掲げて商品を展開しています。


商品のポジショニングとしては、カフェイン入りのエナジードリンクやハーブティーが近いでしょうか。


身体的な効用というよりは、リフレッシュする、ネガティブな心身状況から脱出できるという精神的なお守りの価値を提供しているように思います。

美の領域にも大麻は進出しています。


こちらはニューヨークベースのHerb Essentials社のスキンケアです。

価格帯としてはクレンジングオイルは48ドル、保湿クリームが60ドルと、高価格帯の化粧品に近い価格設定になっています。


大麻の種子から抽出したオイル成分を配合したこれらの商品は、肌が持つ保湿機能を引き出すと謳っています。

大麻成分入りのオーガニックスキンケアは女性だけでなく、男性の両方に向けられて作られており、ウェブサイトにも「私たちの製品は全て男性、女性の両方に等しく機能するようにつくられています」と記載されているのが印象的です。

確かに製品パッケージもシンプルでユニセックスなデザインですね。


原材料もオーガニックのみを利用し、動物を使った製品テストもしませんと宣言し、エシカルなブランド、製品であることをアピールしています。

ブランド名にもあるように、大麻をどちらかといえば、自然の植物由来かつ高麗人参などのスーパーフードのように様々な効用や力を秘めたものであることを強調し、ハーブや漢方系製品に位置づけられそうです。

画像: https://herbessntls.com/より引用

大麻商品の最後のご紹介はこちら。


CBD入りペットフード、ペット用のおやつです。






ニューヨークポストの記事を紹介した日経紙のデイリーサンは、『ペットに大麻由来CBD入りフード 「気持ちを落ち着かせてあげたい」』という見出しでCBD入りペットフードの人気について紹介していました。 

"ニューヨーク都心部での生活にストレスはつきもの。ペットの犬や猫も同じだ。ニューヨークポストによると、こうしたペットの不安や痛み、ストレスの解消に、大麻(マリファナ)から抽出されるカンナビジオール(CBD)入りのペットフードが人気だ。…中略


 同紙はマンハッタン区ウエストビレッジのCBD入り食品店「ヘンプド」を取材。


経営者、ロニー・アルマーニさんは、CBD入りペットフードが飛ぶように売れると話した。ブルックリン区在住のアビー・クレバーさん(24)は常連客。週に2回はけいれん発作を起こしていたという愛犬のチワワにCBDを与えたところ、その回数はずっと減ったという。「CBDが愛犬の命を救ってくれた」とその効能にぞっこんだ。神経過敏症のコッカリアを飼うロングアイランド在住のジョン・デラフォンテさん(37)は、「気持ちを落ち着かせてあげたい。人間と同じさ」と、CBD入りビスケットを日常的に与えているという。


 ただ、マンハッタン区の獣医、カーリー・フォックスさんは「CBDの犬や猫に対する効能については研究が始まったところ」と指摘。規制も不十分だとして「ペットに与える際には十分気をつけて」と警告している。CBDは違法ではないが、ニューヨーク市は今年2月、飲食店でのCBD含有食品の取り締まりを始めている。"


犬用だけでなく、もちろん猫用もあります。

ペットも家族と同じ存在となっている現代、ストレスや不調を抱える愛犬、愛猫にも薬以外で何かしてあげたいと思う飼い主が増えているのでしょう。


大麻はなかなか汎用性の高い素材ですね。

食品、飲料、嗜好品、美容、ペット用品、すでにこれだけの展開があるということは、今後もますますそのアプリケーションが拡大していきそうです。

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ビジネス、公的な活動問わず、アメリカのこれらの事例から何かのヒントがお届けできれば幸いです。みなさんからのコラムに関するご質問や、こんなことを聞いてみたい、知りたい!というリクエスト、叱咤激励などなど、24時間365日お待ちしております。ではまた次回コラムでお会いしましょう。

columnist
Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。

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