NYノマド 第14回 悪戦苦闘するリアル店舗、進化する売り場~顧客のジョブを片付ける  Part1 Amazonも虎視眈々と狙うオンライン処方箋薬局市場~NY地下鉄の広告

20.03.04 02:04 PM By s.budo

春の訪れを告げるヤマネズミ

皆さん、こんにちは。2月3日の節分、そして2月4日の立春を経て、春の訪れの芽吹きを感じる季節となりました。アメリカでも春の到来を占う古くからの儀式があります。


日本の節分とも時期がほぼ同じというのは興味深いですね。春が訪れる暦は万国共通なのかもしれません。

さて、どのように占うかといいますと、このグラウンドホッグ、冬眠から目覚めた1匹を籠の中から外に出します。
そしてこのグラウンドホッグが自分の影を見ると春の到来を啓示し、見なければまだ冬が続くというものです。


子どもたちも学校でグランドホッグについて学んだりもします。
私の娘のプリスクールでもグラウンドホッグについて学んだようで、先生からはグラウンドホッグデーの前日にニュースやテレビでグラウンドホッグの結果を見てきてねと保護者に連絡がありました。

さて今年の結果はいかに、、、!?。

Phil君、影を見ました!
冬はもう終わりを告げ、春の到来です。
確かに今年は暖冬で、2月下旬になっても平均気温が10℃以上になる暖かい日が多く、降雪はほとんどありませんでした。
Phil君のお告げは正しそうです!

マスクをしないアメリカ人~インフルエンザが猛威をふるうアメリカ

さて、世界各地で新型肺炎コロナウィルスによる感染が拡大しつつある現在、日本でも日々の生活やお仕事に大きな影響が出ているかと思います。
こちらでもコロナウィルスに関してはアメリカ大統領選に次ぐ連日トップニュースの一つとして主要メディアで毎日報道されています。

地域毎のローカルメディアでも、その地域でコロナウィルス感染の疑いがある患者の人数やテスト結果などが報じられ、日本や韓国への渡航についてもアメリカ疫病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention (CDC), )レベル2の勧告が出され、持病など慢性的な疾患を持つ人や体調不良の人の日本への不要不急の渡航を避けるようアドバイスが出されています。
私の周りでも、日本出張や一時帰国を控える人が多く、遠く離れたアメリカでもその影響の余波を感じ、感染が拡大している地域の様子に胸を痛めています。
一刻も早いこの新型肺炎の終息と感染された方の回復をお祈りするばかりです。


一方、アメリカではインフルエンザが猛威を振るっており、娘の学校でも大流行しています。

昨年10月早々にインフルエンザの予防接種を終えた我が家でも、予防接種済みにもかかわらず、娘がインフルエンザA型に罹り、タミフルのお世話になりました。
娘の疾患中は、家族内で感染しないよう、娘を別部屋に隔離し、家の中で日本から持参していたマスクを家族みんなでしながら過ごすという隔離生活をしばらく送っていました。
しかしながら、外出時にマスクをすることはしていません。

子どもの学校でも、そして職場など様々な公共の場で、マスクをしている人はこちらではほとんど見かけることはありません。

2月中旬に、家族旅行でフロリダに行く際にアメリカ国内フライトを利用しました。
その時にどのくらいの人がマスクをしているのか観察してみることにしましたが、空港や機内でマスクをしていた人を見たのは、行き帰りを含めて10人にも満たなかったと思います。
先日ニューヨーク市内の地下鉄でも観察してみましたが、マスクをしていたのはたった一人、妊婦の方でした。

なぜアメリカ人はマスクをしないのでしょうか。

いくつか日本でいうYahoo!知恵袋のようなウェブサイトのアメリカ版をみてみましたが、「マスクをするのは人口密度の高い地域に住むアジア人だけ、アメリカは広いし、マスクをする必要はない」といったアメリカは広く、移動も車中心で、日本などアジアの都市のように人口密度が集中している土地とのとの違いを指摘している意見もあれば、「正しくマスクを着けている人が少なく、そのためマスクの効果は疑わしいのでしても意味がない」という意見、さらには「マスクをつけてるのは相当程度深刻な病気で病院から抜け出してきているか、変な人だけなので、マスクをつけるのはよくない印象だ」というものなどありました。

こちらで暮らしている感覚では、確かに、車移動が多く、日本の満員電車のような密接空間で過ごすことが少ないことは確かです。
そして周りの日本人の友人、知人も、日本ではマスクをするが、アメリカではしないという人が多いので、なぜマスクをしないのか聞いてみると、「マスクをしていると、この人なんか病気持ちなのかという奇特な目で見られるのでそれが嫌でしない。」という意見が多く聞かれました。

そういえば、風邪のシーズンになる頃に、娘が咳やくしゃみをしていた際、両手で口を覆って人に飛ばさないようにねと伝えた時に、「ママ、違うよ、こうやるんだよ!」と娘が肘を曲げ、洋服の袖で口元を抑えました。


このような感じです。

写真:http://etikids.blogspot.com/2011/02/please-sneeze-into-your-sleeve.htmlより引用


娘曰く、学校の先生からこのように教えてもらっているそうで、確かにCDCにも、咳やくしゃみをしたときには、ティッシュで覆ってすぐに捨てること、ない場合は洋服の袖で覆ってすることとあります。


日本でも今回のコロナウィルスの感染を避けるためには手よりもティッシュや袖などで飛沫をふき取ることを勧めていますね。

手で覆うとその手に付着した飛沫が、手で触ったりすることを通じて様々なところに移る可能性があるためですが、洋服の袖も飛沫を覆ってそのままにすることの方が汚いようにも思いますし、手と同様の可能性があるのではと思いながら、娘の話を聞いていました。

第14回NYノマドでは、「悪戦苦闘するリアル店舗、進化する売り場~顧客のジョブを片付ける」をテーマに、Part1~4まで次世代のリアル店舗の方向性をクリステンセン氏のジョブ理論の切り口からご紹介させていただきます。

  • Part1. Amazonも虎視眈々と狙うオンライン処方箋薬局市場~NY地下鉄の広告
  • Part2. 顧客のジョブを片付ける~遊べるニューヨークのおもちゃ屋さん:CAMP
  • Part3. おもちゃと遊具スペースだけではありません
  • Part4. CAMPは誰のどんなジョブを解決しているのか

Part1. Amazonも虎視眈々と狙うオンライン処方箋薬局市場~NY地下鉄の広告

ちょうど先日も地下鉄に乗った際に、マスクのことを考えながらぼんやりと車内を見ていたところ、新しいオンライン処方箋サービスの広告が掲載されていました。

ニューヨークの地下鉄の広告はしばしば新しいビジネスやサービスを発見できるお気に入りの媒体の一つです。そのオンライン処方箋サービスはニューヨークシティベースのCapsuleです。

画像: https://www.capsulecares.com/より引用

アメリカでは診察を受けた医療機関、医師に自分の処方箋薬局を伝え、医師から自分の処方箋薬局に処方薬を手配する連絡をしてもらった上で薬局に処方薬を取りに行く、もしくは処方箋を書いてもらい、直接処方箋薬局で購入するというスタイルが一般的です。
日本も同様かと思いますが、いずれにしても、処方箋薬局に薬を購入しに行かなければなりません。
しかしながら、しばしば、その処方箋薬局で指定された処方薬の在庫がなかったり、あったとしても準備してもらうのに時間がかかり、場合によっては半日から数日以上入手に時間がかかることもあります。

私も、こちらに来てから自分自身や子どもの処方箋薬を購入するために処方箋薬局に何度も行っていますが、日本のように比較的すぐに処方してもらえるケースもありますが、薬局によっては1時間後に取りにきてくださいと言われ、何度も薬局に足を運ばなければならなかったり、薬の在庫がなく、入荷するまでに数日かかると言われたりすることがかなりの程度あります。
こちらは体調を崩して薬を投与したいためにきているわけですから、一刻も早く入手したいというのが当たり前ですが一番のニーズです。
しかし、現状の処方箋薬局では、それさえもままならないこと、さらに、国土の広く、医療制度やサービスに地域ごとにかなりの程度のばらつきがあるアメリカでは、かかりつけ医が自宅や職場の近隣になく、わざわざ遠出して定期的に通院しているケースも多くあります。
そういった場合にも処方箋薬局から薬をきらすことなく、定期的に、確実に入手することが必要となります。

こうしたニーズが満たされていない現状で登場しているのがこのCapsuleのようなオンライン処方箋薬局です。

このCapsule、診察してもらった医師に自分の処方箋薬局をCapsuleだと伝えて、保険などの必要な情報をオンライン登録すると、スマートフォンのアプリで処方箋薬のデリバリーオーダーができ、定期的な投薬についてはアプリやテキストメッセージでデリバリー予定を通知してくれます。
デリバリーは登録した自宅または職場などで受け渡し可能で、当日のオーダーでもニューヨーク市内であれば2時間以内にデリバリーをしてくれるというものです。
テキストメッセージやチャットで薬剤師に相談したり、薬の副作用の情報についても入手することができます。


このオンライン処方箋薬局ビジネスはAmazonがすでにPillPackというオンライン薬局を2018年に約830億円で買収し、自社グループ内でオンライン処方箋サービスビジネスを始めたように、魅力的な成長市場であるとともに、熾烈な競争と複雑な医療制度やステークホルダーとの調整が必要とされる難しいビジネス領域でもあります。


処方箋薬局に行くことなく短時間で確実に処方薬を購入したいという顧客が抱えるジョブを片付けてあげるオンライン処方箋薬局サービスは確実に大きなニーズがあるとともに、今回のコロナウィルスやインフルエンザの流行時などにも、感染の機会を減らせるという利点もありそうです。

このように、成長するビジネスは、きちんと顧客が抱えるジョブを片付けるというサービスや製品を提供しているといえるでしょう。


Keep in Touch !

ビジネス、公的な活動問わず、アメリカのこれらの事例から何かのヒントがお届けできれば幸いです。みなさんからのコラムに関するご質問や、こんなことを聞いてみたい、知りたい!というリクエスト、叱咤激励などなど、24時間365日お待ちしております。ではまた次回コラムでお会いしましょう。

columnist

Aya Kubosumi ノマドマーケター


コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。

s.budo