後半 ロックダウンの日々を生きる
厳しいSocial Distancing策の追加と徹底
皆さんこんにちは。
日本でも4月7日に7都府県を対象に、法律に基づく「緊急事態宣言」が行われ、対人接触を制限するための外出自粛が対象の都府県知事などから出され、自宅で過ごされる方が多くなっていることと思います。東京でも商業施設の休業などが始まりつつあり、在宅ワークや学校の休校など、皆さんも普段の生活に大きな変化もたらしているのではないでしょうか。
かれこれ、こちらでも自宅待機要請が始まってから3週間が経ちますが、4月13日現在で、ニューヨーク州ではあれよあれよという間に感染者数202,208名(195,031名)、死者数10,834名にのぼり、全世界の中で他国の数字を抜くとともに、アメリカでも感染の中心地となってしまいました。
そしてNY州の隣、私が住むNJ州は、全米でもNY州に次いでコロナ感染が拡大する地域となっています。
日々様々なことが起き、状況が変わるようすはニュースやネット、テキストメッセージなど様々な媒体から毎日のように流れ込み、状況の悪化という痛ましい内容だけでなく、その量や変化の速さにも圧倒されてしまいそうですが、皆一丸となって、この危機的状況に立ち向かっています。
医療スタッフも物資も不足している中、ニューヨーク州ではリタイアした医療従事者にボランティアを募ったり、また、州ごとに看護士や医師免許が付与されていますが、州外から他の州の免許を持っている医療スタッフを募り、働いてもらうということをニュージャージー州では行っています。
また、ニューヨーク大学(NYU)やコロンビア大学では医学部の学生を通常より早く卒業させ、医療現場に送り込むということをしようとしています。
マンハッタンの観光客で埋め尽くされていたホテルはもちろん閑古鳥ですが、今はいくつかの大手ホテルが医療従事者が宿泊できるようにしています。
こうした措置が迅速に決断、実行される、アメリカだからなのでしょうか。
しかしながら、悪化する状況の中、さらなる厳しいSocial Distancing策を講ずるため、NY州ではSocial Distancingに違反した場合、1000ドルの罰金が科されることとなりました。
公立学校は今学期まで休校となることが決められました。
NJ州では食料品店など生活必需品を販売する店舗では、店員、顧客共にマスクの着用が義務付けられることになりました。
マスクを着用していなければ入店することはできません。
前々回のコラムでも書かせていただきましたが、アメリカではマスクをして予防をするという習慣がほとんどありません。
医療従事者を中心とした、職務で必要な人が利用するものでした。
しかし、4月3日にトランプ大統領が新型コロナウィルス流行の拡大防止に向けた米政府の新たな方針として、国民に対し外出時に公衆でマスク着用(もしくは顔を覆うもの)を推奨すると発表しました。
これは非常に大きな転換です。
アメリカ国民が習慣や意識を変えざるを得ないほど深刻な非常事態に陥っていることを再認識することとなりました。
インスタグラムではハッシュタグ”#nystrong”でニューヨークがこの困難に立ち向かっているようすや人の投稿がされていますが、こちらのハッシュタグを検索してみてみると、マスク姿の写真の投稿が明らかに増えています。
You Can What You Can Do ~一人ひとりができることを
日本では安倍首相と星野源さんの動画がかなり話題になっているようですが、こちらアメリカでも市民や著名人といった個人から企業、病院、行政など様々な人々が、TVやソーシャルメディア、インターネットなどを通じて、Social Distancingや一人ひとりの協力を求めるメッセージが流されています。
米広告協議会でも#StayHomeや#AlongTogetherといったハッシュタグで企業が消費者に向けた広告メッセージを出すよう促しています。
毎日のテレビCMでも、Walmartなどの小売業、自動車製造業、Googleなどのテクノロジー企業など様々な業種から、このような企業広告を多く目にするようになりました。
例えば、Uberはハッシュタグ #stayhome で"Thank you for not riding Uber"というメッセージを発し、外出しないことを呼び掛けています。
先日は朝ニュースを見ていると、アメリカのロック歌手のジョン・ボン・ジョビさんが、自身がNJ州で経営している地域コミュニティを支援するレストラン、JBJソウルキッチンコミュニティレストランで、従業員と一緒にお皿洗いをしているようすが伝えられていました。
こちらのレストランでは、コロナウィルス感染が広がる中、食べ物を入手できない、準備することができない人を中心にテイクアウトやデリバリーを行っており、ご本人も一緒に活動されているということでした。
他にも、地元の警察官が高齢者単身世帯の生活を支援するために、一人ひとりの家を窓越しに訪問し、声をかけて元気でいることを確認したり、ゴミ捨てを手伝ったりしているようすや、Facebookなどのソーシャルメディアでローカルコミュニティでは、小学校の図書返却ボックスに、日持ち可能な食品を入れ、必要な人に提供できるようにしていることを呼び掛けていたり、日々のスーパーの品揃え状況を伝え合うメッセージがやり取りされていたりと、地域で知らない人同士が協力し合っているようすを日々目にすることができます。
友人が住む隣町では、Self quarantine(自宅隔離)の言葉をもじり、Self quaran"tune”というイベントが立ち上がり、毎日夕方6時に、その時間までに投票されて1位を取った歌を自宅からそれぞれが歌うということをしていると話していました。
同様に、私が通っていた教会の英語クラスの先生がマンハッタンに住んでいますが、そこでもアパートの窓からみんなで歌を歌い、励まし合うという活動を始めたら、その様子がTwitterで拡散され、ニュースで取り上げられたと話していました。
個人、企業に関わらず、一人ひとりが、こうした状況下で自分ができることをする、実践しているようすは大いに励まされ、引きこもることはストレスではありますが、自宅にできる限りとどまること、そして自分もできることを何かしたいというエネルギーや勇気をもらっています。
そこで、私も自宅からでも何かできないかともやもやしているところに、私たちが住む街でも、感染者治療の医療現場や日々の生活を支えるために働いてくれている人に感謝のメッセージを送ろうという活動を目にし、早速娘と一緒に感謝の気持ちを伝えるポスターを作り、アパートのベランダに張り出しました。
感謝の気持ちを表現することができると、こちらもなぜか励まされるような気持になったのと、外を歩いている人がこのポスターを指さしながら歩いてくれたり、友人がポスターを見たよと連絡してきてくれたりなど、外出が制限されている中でも人との繋がりを物理的に感じることができる素敵な機会をもらうことができました。
続く自宅待機令と外出自粛生活の実~日々の過ごし方①家事
食料品の買い物も、Social Distancingにより、顔を覆うものの着用義務と共にスーパーへの入場制限がさらに厳しくなり、一度に入場できる人数をかなり制限しており、入場までの待ち時間もかなり長くなっているようです。そのため、できる限り食料品はAmazonプライム会員向けのホールフーズのオンラインデリバリーを利用したいと思うのですが、配達需要の大幅増に対応するにもホールフーズ側も注文を取り、配送するスタッフに対してSocial Distancingが義務付けられているため、むやみに人員を増やすことができない状況で、注文しようとしても、配達可能日時がまったくない状態で注文ができません。一日中、どこかのタイミングで配達可能日時が出てくるようなのですが、ずっとAmazonの注文画面をリロードし続けないとその画面にお目にかかることができないため、先日は、コンピュータのバックグラウンドで注文画面を常にリロードし、配達日時が出てくると通知を送ってくれるプログラムを開発した人がニュースに紹介され、話題になっていました。こうした便利なプログラムは歓迎したい気持ちがありますが、さらにデリバリー枠をゲットする競争が熾烈になり、逆にコンピュータやネットワークへのアクセスがない、詳しくないという高齢者や貧困家庭といったテクノロジー弱者の人がデリバリーを利用できなくなることが懸念されます。また、この機会に以前から関心があった、不揃いだったり、色が悪いといった規格外野菜の定期配送サービスにトライしてみましたが、3月末に登録注文したものの、同じように考える消費者が多く、需要がひっ迫しているため、1社は3日間配送が遅れ、もう1社はまだ1回も配送が届かない状況です。こうしたショッピング環境ですから、依然と比較して、格段に買い物の方法を検討したり、オンラインでの注文、パソコンやスマホとにらめっこしながら配達日時のスロットをページをリロードし続けて獲得する、直接スーパーに行って長い列に並び、購入する、など、とにかく時間がかかるのです。そして無事買い物ができると、前回前半のコラムでご紹介した、買い物してきた食料品のウィルス除去作業に入ります。一つずつ、除菌ワイプで拭いたり、洗ったり。押しなべてみると、一日に1時間くらいは毎日買い物についてのなんらかのことに時間を割いているような気がしています。
買い物などで外出した場合、帰宅後は全て洋服を着替え、シャワーを浴びるようにするという人が増えているようです。洗濯物も減るわけではありません。こちらではアパートメントの場合、部屋内に専用の洗濯機がなく、共用の洗濯機、乾燥機が置かれたフロアがあり、そこに行って利用したり、共用のランドリーフロアがない物件も非常に多くあります。その場合は日本でもありますが、コインランドリーに行く必要があります。通常コインランドリーでは洗濯物を畳むスペースがありますが、そこも全て使用禁止になり、洗濯や乾燥中の待合スペースについてもSocial Distancingのため、利用することができないようになっているようです。
- 自宅内に具合の悪い人がいる場合、その人と他の人とは分けて洗濯すること
- 洗濯の際は、水温は最も高い温度に設定し、完全に乾燥させること
- 洗濯籠は使い捨て出来るようなゴミ袋などを籠の内側に取り付けて利用することが望ましい
- 洗濯後は必ず手洗いをすること
このように洗濯についても、家庭内でのウィルス感染対策が推奨されている状況です。
日々の過ごし方②外出と人付き合い
日々の過ごし方③学校や習い事
学校から配布されたプリント類とともに、クラス毎に先生がクラスのウェブサイトを用意し、そこで1週間に一度、今週やることのリストが先生から投稿されます。それを見て親が子どもの学習をさせることと、1週間に1回、およそ20分くらい、先生やクラスメートとGoogle Meetで繋ぎ、コミュニケーションをする時間が設けられています。また、音楽、アート、ジム、サイエンス・コンピュータ、リーディングといった教科毎のページが設けられ、各専科の先生もしくは担任の先生から、YouTubeやオリジナルの短い動画やゲームなどの教材のリンクがアップされ、それを子どもに見せたり、先生とGoogle Meetで繋いで短い授業を行ったりということもあります。
日々の過ごし方④健康維持、ストレス解消、趣味
最近スーパーに行けるときに様々な棚を眺めるのですが、小麦粉の在庫が全くなくなっているようすをよく目にします。
なぜだろうと思っていたのですが、自宅にこもる日々で、パンやクッキーなどを焼く人が増えているようです。
最近もNew York Timesで自宅でパンなどを焼くことで、精神的な健康を保っていることを紹介するコラムが紹介されていました。
自宅にこもる日々、身体的、精神的な健康の維持は重要だとわかっていても、なかなか実行できず、だらだらと過ごす日々が続きがちです。
幸いなことに、6か月になる赤ちゃんと4歳の娘がいますので、朝は泣く声でだいたい同じ時間、7時には目覚めることができます。
そして子どもがお腹を空かせますので、ご飯も作り、食べるというリズムは崩れていません。が、最近、友人が3食食べることをやめて2食にしたという話を聞き、確かに、カロリー消費が普段より減っていること、3食作り、片づけをしていると、一日中食事作りで終わっている気がしていたということに気づき、週末のように、ブランチと夕食の2食制にしてみようかということになり、2日ほどトライをしてみたのですが、親の方がお腹が空いてしまい断念。
その代わり、朝食はフルーツとお茶など、ごく簡単なものにすることにしました。
身体を動かす機会を作ることもなかなか億劫になります。
ニューヨーク州、ニュージャージー州のジムやヨガスタジオ、テニスコート、体育館といった運動施設は全て閉鎖されています。
主要な公園も閉鎖され、利用できなくなっている状況で、例えば、ニューヨークの植物園(ボタニカルガーデン)では、バーチャルツアーができるコンテンツがウェブサイトで提供されており、自宅から公園を楽しみ、気晴らしをする機会を作ってくれています。
運動エクササイズに関しては、ヨガやピラティスなど、Zoomなどのオンラインツールを使ったクラスが有料、無料で利用できるので、時間が許す場合はこうしたクラスに参加したいと思うのですが、子どもがいるとなかなか定期的にクラスに参加することが難しく、参加できても、途中で抜けたりすることが多くなり、足が遠のいてしまっていました。
そこで、簡単に、短くできるもの、、、
やはり、ラジオ体操だろうということで、朝食を食べ終わって、掃除をした後に家族全員で、ラジオ体操第一と第二をすることを新たな日課にすることにしました。
本当はエクササイズマシンの小さなものを自宅に導入したかったのですが、悲しいかな我が家の狭い自宅でできるようなコンパクトで価格も手ごろなエクササイズマシンがあまりなく、期間も限定的なため、エクササイズマシンをレンタルできないかと考え探してみました。
手ごろな価格で自宅にエクササイズマシンをレンタルできるFitDelというサービスがテキサス州オースティンの会社が提供するものがあったものの、需要増のため、一時的にオースティン限定でのサービス提供になっており、残念ながら利用できませんでした。
ひとまずはラジオ体操を地道に続けていきたいと思います。
日々の過ごし方④コロナウィルス関連の情報収集~行政からのコロナウィルス感染状況に関する毎日の情報発信、アップデート
R=i x a
デマの流布量(R)は問題の重要さ(i) とその内容についての曖昧さ(a) との積に比例する。
→iは“内容の重要性(Importance)”、aは“内容の曖昧さ(Ambiguity)”
"現在の状況はチャーチルの言葉を引用すれば、せいぜい「おそらく始まりの終わり」に過ぎない(Now this is not the end. It is not even the beginning of the end. But it is, perhaps, the end of the beginning)。(社会経済の)「再開」(Reopening)はファクトとデータに基づいて決定されるべき。政治を持ち込んではならない。将来の決定のためにこれまで起きたことから学ぶ必要がある。社会経済の再開は,公衆衛生問題であるとともに経済の問題である。NY州は「再開」と(感染症拡大の)「第二波」(Second Wave)について検討するためベストな専門家を集める。「再開」は段階的なプロセスとなる。"
日々の過ごし方⑤ 仕事、家計、経済
(1)個人向け給付
- 直接給付(予算規模:2,900億ドル程度):大人1,200ドル,子供500ドルを給付(年収75,000ドル以上は減額、99,000ドル以上で支給なし)。
- 失業給付の拡大(予算規模:2,600億ドル):給付対象者の拡大(自営業、フリーランス等)、週当たり600ドルの給付額上乗せ(4ヶ月間),給付期間の13週間延長
(2)中小企業向け支援策
- 緊急補助金(予算規模:100億ドル):中小企業の緊急の運営資金を賄うため最大10,000ドルの補助金を提供するもの。
- 返済免除条項付きローン(予算規模:3,500億ドル):米国中小企業庁(SBA)が一事業者あたり最大1,000万ドルのローンを提供するもの。6月末まで従業員の雇用を維持した場合、借り入れたローンのうち給与、家賃、既存の借金の支払い等に充てられた金額については返済が免除される場合がある。
- 既存ローンの救済(予算規模:170億ドル):すでにSBAのローンを使用している中小企業に対し, 6か月間にわたる返済をカバーする。
上記以外に、州ごとに異なる対策が次々と打ち出され、決定されています。
このような連邦政府や州政府の施策に加え、中小企業や個人は各自で必死に対策をしようとしています。
例えば先日はマンハッタンにある老舗ジャズバー、Blune Noteから、飲食に利用できるギフト券を購入して、閉店の間の支援をしてほしいというメールが届いていました。
小さなレストランでもこうしたギフト券の購入や、寄付金を募るといった対策を取っているところが多くあるようです。
ニューヨークはブロードウェイやニューヨークシティバレエ、メトロポリタン美術館やMoMAといった人を集めることで経営が成立している事業がたくさんあります。
こうした事業も全てクローズされ、MoMAなどはアート教育を担当する職種の人々の契約を終了するなど、厳しい状況に置かれています。
寄付金を募るといったかたちでの対処がされてはいますが、効果はかなり限定的だと思われます。
経営難がこのニューヨークの素晴らしい文化基盤までをも蝕んでいることには心が本当に痛みます。
もう少しミクロな個人の働き方、在宅ワークはどうなっているのでしょうか。
この点は日本でも大手企業などを中心に在宅ワークが始まっているようですが、Zoomなどを利用して必要な電話会議をする、メールやチャットを中心としたコミュニケーションツールでやり取りするという状況です。国土が広いアメリカでは、国内でも時差が存在し、かつ、従業員で勤務時間の約6割以上をリモートワークで行う人の割合が42%となっており、オンラインツールを利用した在宅でのリモートワークについてのトラブルや課題は、Zoomの脆弱性の指摘などを除いてそこまで多く聞かれません。
コロナウィルスパンデミックに伴う自宅待機や隔離にどう準備すべきかという情報を収集していた時にも、食料品や消毒関連商品などの購入すべきもののリスト以外等と共に在宅ワークの準備についての項目を見つけました。
最初の項目は、「Get dressed and ready for work each day.(毎日着替えて仕事の準備をしよう)」というものでした。
例えばNew York Timesでは、オンラインで働く在宅ワークに移行している現状で、「What Does ‘Dressing for Work’ Mean Now?」と題して、仕事着の変化、自宅で仕事するスタイルについての対談が掲載されていました。
洋服のトップスはよいものを、ボトムスはリラックスできるもの、マスカラと口紅はしっかりつけてといった、リモートワークファッションやメイクアップのアドバイスがされています。
なかなか、面白いですね。
日常の日々が戻ることを願って
Keep in Touch !
ビジネス、公的な活動問わず、アメリカのこれらの事例から何かのヒントがお届けできれば幸いです。みなさんからのコラムに関するご質問や、こんなことを聞いてみたい、知りたい!というリクエスト、叱咤激励などなど、24時間365日お待ちしております。ではまた次回コラムでお会いしましょう。