NYノマド 第16回 コロナウィルスが変えた日常~長期化するStay homeとSocial Distancingの影響と新たなビジネスチャンス 

20.05.07 09:30 PM By s.budo

"Re open"の機運と長期化するコロナウィルスとの闘いの狭間に揺れるアメリカ

皆さんこんにちは。


日本でもStay homeが続き、ゴールデンウィークもStay home weekに変わり、外出が制限される日々をお過ごしのことと思います。

こちらでは、自宅待機令や厳しいSocial Distancing策が功を奏し、コロナウィルス感染の患者数、死者数共に減少に転じ、ピークが過ぎたのではと報じられつつあります。


アメリカでは、4月27日時点でバージニア州、サウスカロライナ州、オクラホマ州、アラスカ州が部分的な"Re open(経済や社会活動の再開)"を宣言し、州ごとに異なりますが、部分的に経済活動が再開されています。

これら4州の州知事は全て共和党で、トランプ大統領が支持する早期のRe openに呼応した州政策であると言えるでしょう。


例えば、サウスカロライナ州のケンプ知事は4月21日からジムなどの運動施設、ヘアサロン、ネイルサロンなどの理容業の再開を許可し、さらに4月27日からはレストランでの限定的な店内での飲食、映画館などの娯楽施設の営業許可を与えました。

しかしながら、Re openは第二波、第三波の発生可能性を高め、医療や社会生活へのさらなる混乱をもたらすことがすでに指摘されています。


州ごとにコロナウィルスに関する政策対応は、失業者の増加や景気の停滞といった経済活動のネガティブな影響を抑え、復興を希求するRe openと、経済的なダメージを受け入れ、人命や公衆衛生における安全を担保することを最優先するShut downの継続という二つの選択肢の狭間に揺れています。

画像:Demonstrators begin to gather at a protest opposing Washington state's stay-home order to slow the coronavirus outbreak, April 19, 2020, in Olympia, Wash. Demonstrators begin to gather at a protest opposing Washington state's stay-home order to slow the coronavirus outbreak, April 19, 2020, in Olympia, Wash. Elaine Thompson/APより引用

しかしながら多くの州では在宅生活は長期化しており、私たちの生活に様々な変化をもたらしています。


我が家では子どもも大人も含めて、ストリーミング配信や動画を観る時間が格段に増えてしまっています。

そして日々の買い物もできる限り宅配サービスを利用すべく、規格外野菜の定期宅配や業務用食品業者、日系の農場からの野菜宅配など日々色んな宅配サービスを探し、トライしています。


毎日続けているラジオ体操は、ラジオ体操第一、第二に加え、NHKあさイチで紹介されていた『超ラジオ体操』が仲間入り!毎朝掃除を終えると三本立てて体操することが新たな日課となっています。

本当にちっちゃな、ちっちゃなものですが、生活者も日々、この長期化する在宅生活に工夫やイノベーションを試行錯誤しているといえるのではないでしょうか。

第16回NYノマドでは、「コロナウィルスが変えた日常」をテーマに、長期化する在宅生活がアメリカの生活や消費にもたらしている変化とそこから生まれているニーズや課題に対する新たなサービスやソリューションについてPart1~4でご紹介させていただきます。

  • Part1. 困窮する生活者、増える社会課題~フードバンクに救済を求める生活困窮者と家庭内暴力の増加
  • Part2. コロナウィルスで増えた消費~自転車、ドライブスルー、犬、そしてオンライン
  • Part3. メディア利用行動の変化~仕事、学校、人付き合い、オンライン中心に回る生活
  • Part4. 非常事態が生む新ビジネスやソリューション~ドライブイン/ドライブスルー〇〇とSocial Distancingビジネス


Part1.困窮する生活者、増える社会課題~
フードバンクに救済を求める生活困窮者と家庭内暴力の増加

フードバンクでの食料品供給に並ぶ車 画像:Gene J. Puskar/AP Photo( http://www.apimages.com/metadata/Index/Virus-Outbreak-Pennsylvania-Daily-Life/8c7d80df0f54434dae489bd5632fc799/11/0)より引用

​フードバンクに救済を求める生活困窮者

経済活動や社会活動がストップし、全米で失業者と経済的な打撃が日に日に増しています。

その結果、毎日の食べ物を買うお金もないという生活が困窮した生活者が急増、フードバンクにドネーション(食料品の寄付)を求め、人々が殺到しています。


フードバンクとは、食品メーカーや外食産業などでは、品質には問題がないものの、包装不備などで市場での流通が困難になり、商品価値を失った食品が発生し、従来は廃棄されていた食品を無償で受け、生活困窮者を支援しているNGO・NPO等の市民団体を通じて野外生活者や児童施設入居者などの生活困窮者に供給する活動や団体です

アメリカでは、FEEDING AMERICAが最も大きな団体です。

国土が広いアメリカでは、主にドライブスルー形式で食料品を配布していますが、食料品の寄付を求めて人々が殺到しており、車の長蛇の列ができているようです。


かなりの人々が食料品を求めてフードバンクのサイトに訪れているようすが伺えるかと思います。

画像:https://twitter.com/ricburton/status/1248758627592069120よりスクリーンショット画像引用
写真:アパートのエントランスに置かれた寄付ボックス(筆者撮影)


私の住んでいるアパートメントでは、つい先日から、アパートのエントランスにこのようなボックスが置かれ始めました。


在宅生活で食料品や日用品などのデリバリーが増える中、第一線で私たちの生活を支えてくれているデリバリーワーカーの人たちに感謝の気持ちを込めて、食料品などを住人が寄付し、デリバリーに来てくれる人たちに自由に持って行ってもらうための箱です。

写真:寄付ボックスの中身(筆者撮影)

我が家でも、さて、何が寄付できるかなと、食品が入った棚を眺めて一考。

なかなか楽しい時間です。


長期保存できそうで、かつ、アメリカ人が持っていってくれそうな缶詰やパスタ食品を寄付することに。


家族以外の物理的な社会的接触が極端に減った生活を送る日々で、箱に食料品を寄付することは、生活を支えてくれている配達員の方々に感謝の気持ちを示せるだけでなく、社会に関わっているという実感や人に貢献することができる喜びをもらいました。


他のアパートの住人が、どんなものを寄付しているのか、箱の中を眺める楽しみもあります。


寄付を持って行った日の箱の中は、、、、、


ティッシュ、トイレットペーパー、缶詰、スナック菓子、ジュース、オムツ、などなど。中にはドッグフードもありますね。

家庭内暴力の増加

画像:筆者が登録しているNYCのCOVID-19情報提供サービスのテキストメッセージ画面のスクリーンショット
もう一つ指摘されている社会的課題が、Stay homeにより、自宅に閉じ込められる時間が長くなる中で起きている家庭内暴力の増加です。


アメリカだけでなく、全世界的に家庭内暴力が増加しており、ニューヨーク市では、家庭内暴力に関する支援や情報を提供するウェブサイト、NYC Hope訪問者数が、一日当たり約45件から、3月18日から4月5日の期間は115件と、急増、その後、ニューヨーク市が提供するコロナウィルス関連情報提供のテキストメッセージでは、家庭内暴力を受けた人に対し、ウェブサイトと電話による相談窓口の情報を知らせるメッセージが届いていました。

コロナウイルス感染の拡大で外出自粛、自宅待機令が敷かれる中、失業や自宅内で長期に過ごすストレスなど、家庭内暴力が引き起こされる要因が通常より増えていることと、その上、逃げ場のない閉鎖的な環境にならざるを得ないことが家庭内暴力の被害者を生み出してしまっているようです。

コロナウィルスがもたらす健康や公衆衛生への被害だけでなく、経済活動、そして家庭や人間関係の不協和といった副次的な被害の大きさを痛感します。

こうした被害者たちが救済されるための支援や情報が整備され、届くことを願ってやみません。



Keep in Touch !

ビジネス、公的な活動問わず、アメリカのこれらの事例から何かのヒントがお届けできれば幸いです。みなさんからのコラムに関するご質問や、こんなことを聞いてみたい、知りたい!というリクエスト、叱咤激励などなど、24時間365日お待ちしております。ではまた次回コラムでお会いしましょう。

columnist
Aya Kubosumi ノマドマーケター


コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。

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