NYノマド 第16回 コロナウィルスが変えた日常~長期化するStay homeとSocial Distancingの影響と新たなビジネスチャンス Part2 

20.05.14 07:29 PM By s.budo

Part2. コロナウィルスで増えた消費~自転車、ドライブスルー、犬、そしてオンライン

コロナウィルスへの感染対策で世界的にマスク、消毒剤、トイレットペーパーなどの消費が増加しましたが、長期的な籠り生活への備え、増加する在宅時間や社会的接触の制限などが、生活者の行動や消費に対しても大きな変化をもたらしていることは皆さんも実感されていると思います。


食料品や日用品を始め、消費財のオンラインでの購入機会が増加するとともに、アメリカではWalmartやTargetといった小売店でBOPIS(Buy online pick up in store)というウェブからオンラインで注文、決済を済ませ、特定の店舗まで車で行き、店員が車のトランクに購入した商品を入れてくれるというSocial Distancingを考慮した買い物スタイルが広まっています。


そしてもちろん、売れ筋もかなり今までと変わってきています。


BBCのビジネス記事に『コロナウィルスにより大幅に売り上げが増加している6つのもの』が紹介されていました


その6つのものは、、、

  1. 自転車、フィットネス/エクササイズ用品
  2.   室外/室内ゲーム玩具・用品
  3.   ガーデニング、家庭菜園用品
  4.   本
  5.   家電(ラップトップコンピュータ、プリンター、テレビ、ゲーム機器、冷蔵庫、など)
  6.  コーヒー
画像:https://www.bbc.com/news/business-52066454のスクリーンショット画像

みなさんの予想や実感とどの程度合っていましたか?


これはBBCの記事ですので、主にイギリスの状況を反映したものかと推察しますが、アメリカでも同様の傾向がありそうだなあと思うものが多い印象です。

日本ではどうでしょうか。環境が異なりますので、売れ筋商品の傾向に当然違いはあると思います。

まず一つ目のデータはAdobeです。

コロナウィルスでeコマースの売上が増加した商品のデータを紹介しています。


フィットネス関連用品が55%増、デスクトップおよびラップトップコンピュータが40%増とのこと

運動関連施設や室内ジムが閉鎖され、利用できないため、自宅内にエクササイズマシンやグッズを購入して運動する人が増えているのでしょう。


転車に関しては、アメリカではスポーツと移動の二つの用途でニーズが異なりますが、コロナウィルス感染が拡大するなか、単独で移動することができ、人との接触を減らすことができるという点公共交通機関に代わる移動手段として、そして外に出て、人との距離を保ちつつ運動やリフレッシュするためのスポーツ、エクササイズ目的で利用が増えているようです

そのため、道路が混雑、Social Distancingが難しくなる状況も発生しているため、カリフォルニアなどの街では道路で自転車専用レーンを拡大しているところもあるようです。

画像:https://www.forbes.com/sites/callyrussell/2020/04/15/what-retail-categories-are-booming-due-to-coronavirus/#2d107962e93d  のスクリーンショット画像

いずれも在宅ワークとなり、リモートワークのための自宅の仕事環境を整備したり、学校などもGoogle Meetなどを利用したオンラインラーニングに移行していますので、そのためのコンピュータ環境の構築が消費を後押ししているのでしょう。
我が家でも、娘のオンラインラーニングに対応するために、学校が休校になることが分かった翌日にTargetにプリンターを購入しに行きました。しかしながら、ある程度のところで需要が飽和し、増加傾向が長くは続かないようにに思います。



外出が制限され、長時間化する在宅時間を楽しく過ごすためのグッズも売り上げ増となっています。

実は先週、我が家でも卓上の卓球セットを購入したいとAmazonやTargetで探していたのですが、手ごろな値段のものはすでに売り切れ状態でした。

皆考えることは同じですね。
画像:https://www.criteo.com/insights/coronavirus-shopping-trends/ のスクリーンショット画像
次は食に関する消費財、ベーカリー用品です。

美味しいレストランに行って店内で食べることができなくなり、自炊が増えたことと、時間に余裕ができたことが影響しているのでしょう。

確かに、3月半ばからのロックダウン移行、何度かスーパーに買い物に行っていますが、小麦粉の棚がいつも空っぽ、もしくは品薄状態が続いています。

食べ物では、他に保存のきく食品、缶やパスタ、冷凍ピザなどの消費と、ポテトチップなどのスナック菓子、アイスクリームなど加工食品の消費が増加しており、近年拡大していたオーガニック食品やベジタリアンといったヘルシー志向とは真逆の、今では不健康の代名詞である食品への嗜好が着実に復活してきているといいます。

家でクッキーやケーキを焼いたりするのは時間があり、持て余しているので何か自分で手を動かして、この時間を埋め、充実させたいという欲求が根底にありそうです。
加工食品の摂取は、手持無沙汰感や口寂しさがある点は同じですが、それを手軽に、インスタントに埋めたいという欲求が見え隠れしています。


さらに続いては身だしなみを整えるための理美容用品。

ヘアサロンやバーバーショップといった理美容ビジネスも閉鎖されたままの州が多いため、自宅でできる、ヘアカラー用品が115%増バリカンがなんと241%増です。
髪の毛が比較的短い人が多く、こまめな手入れが必要な男性で自宅でのヘアカット需要が高まっていることが考えられますね。

他にも、一戸建てで庭のある家庭が、外での時間を楽しむためのアウトドア家具、折り畳みの椅子やテーブルなどの売上も428%増となっています



以上のデータを整理すると、概ね以下のニーズに集約しそうです。


    1. 日々の健康維持とリフレッシュ
    2. 在宅ワーク、リモートワーク、オンラインラーニング環境の整備と向上
    3. 在宅時間や余暇を楽しむ、充実させるためのもの・こと
    4. 自宅でできる理美容ケア
    5. 外出機会を減らす、外出せずにできるもの・こと、外出気分を手軽に楽しめるもの・こと

外出が制限され、Social Distancingを実行しなければならない環境で、在宅で仕事や家事育児をこなしたり、健康や身なりを整える、そして在宅時間を充実させるというニーズを反映した結果、ご紹介したような消費が生まれていると考えられます。


そしてもう一つ、最後に紹介したいものが、6.不安・ストレス軽減のためのもの、ことです。


ペットの里親募集の申し込みが急増~不安やストレス軽減と癒しを求めて

画像:https://www.instagram.com/p/B753wwfHv--/?utm_source=ig_embed のスクリーンショット画像

長引く在宅生活、Social Distancingの中、動物保護団体が運営するアニマルシェルターから犬や猫の里親になり、引き取ろうとする人が増えているといいます。


ニューヨークにある動物保護団体、Foster Dogs Inc.では、犬の里親希望者が2020年3月は昨年の同時期と比較して、なんと1000%増となっているそうです


犬の散歩は、アメリカでは非常に人気のある気分転換、娯楽手段となっていますが、コロナウィルスによる自宅待機下、ペットが癒しと話し相手となってくれているといいます


そしてペットと過ごす時間が増える中、アメリカではペット用品の売上がなんと274%増となっています


コロナウィルス感染が拡大するなか、一人で毎日を過ごすことに寂しさや不安を抱える独り暮らしの人を中心にペットを飼うことへのニーズが強まっていると想像します。

そして同様に不安やストレス軽減ニーズの特需が表れているのが、以前コラムでご紹介した、大麻(マリファナ)と、銃です。

アメリカらしい、アメリカだからこその需要増!

大麻市場は主要プレイヤーの株価が上昇傾向で、ニューヨークタイムズ紙によれば、ニューヨーク市内のある合法マリファナ販売店では3月以降売り上げが2倍、


先のニューヨークタイムズ紙には、銃販売がEssential businessかどうかの議論が各地域行政であったようですが、銃関連団体のロビー活動などの結果、トランプ政権がEssential businessとして認めたといいます。

マリファナ、銃、この二つが、コロナウィルスによるロックダウン下でも必要なビジネス(Essential business)として営業許可が下りていることに驚きます。

アメリカにおける不安、ストレス軽減マーケットの大きさと、政治的な利権が絡んだビジネス構造にくらくらしてしまいます。

さて、コロナウィルスのパンデミック下で売れている商品サービスと6つのニーズの背景を深堀すると、3つの消費に整理することができそうです。




A. エッセンシャル消費:ロックダウン、Stay home、Social Distancingの環境下で、生活、仕事、教育を滞りなく遂行するために必要なもの・こと


→オンラインショッピング、オンラインミーティングツール、パソコン、プリンター、インターネット、理美容品、自転車、など




B. 心身のコンディショニング・チューニング(調整)消費:感染や在宅生活の不安やストレスを軽減したり、心身の健康やハリを得る、生活のリズム作りのために必要なもの、こと


→健康器具、エクササイズ用品、自転車、ペット、大麻、銃、アルコール類、ベーカリー用品、コーヒーやお茶、ガーデニング用品、本、音楽、アウトドア家具、など




C. 手持無沙汰、口寂しさ消費:有り余る時間や心の隙間を埋めたり、口寂しさを紛らわせたりするもの・こと


→ゲーム関連機器・サービス、ストリーミング・動画配信サービス、SNS、スナック菓子やアイスクリームなどの加工食品、アルコール類、ベーカリー用品、ガーデニング用品、本、など




いくつかの商品は複数の消費類型を包含しているものもありますね。日本ではどんなものが売れているのでしょうか?売れているものは異なっても、それらの消費を生み出すニーズや消費の類型は共通点があるのではないでしょうか。



画像: https://seedsheets.com/products/product-options-custom-testの スクリーンショット画像

蛇足ですが、私と言えば、もっと平和で癒しが欲しいなと思っていた矢先、スーパーに行かないために農場野菜のデリバリーはないかと探していたところ、この広告が目に飛び込んできました。


"Seedsheet"という、家庭菜園が簡単にできる野菜の種と栄養が埋め込まれたビニールシートの商品です。


ビニールシートのサイズを選び、自分で好きな野菜やフルーツの種を選ぶだけで、ビニールシートをカスタマイズデザインし、送ってくれるというもの。

このビニールシートを自宅の庭や土を入れたポットに敷くだけで、あら簡単、お好きな野菜やフルーツが収穫出来ちゃいます、という商品です。


買い物で外出することなく、自宅で野菜の収穫ができ、フレッシュな野菜を食べることができること。

子どもと一緒に野菜を育てて、子どもの勉強にもなりそう、親子で水やりや世話をして、成長してゆく野菜たちに癒しをもらい、親子間コミュニケーションも潤滑になりそうという一度で何度も美味しいサービスではないか!と思ってしまったのであります。


しかしながら、皆考えることは同じですね。


この商品も需要が増加し、配送に2~3週間かかってしまうとのこと。

5月いっぱいは少なくともロックダウンが続きそうだというニュースを聞き、それでもトライしようかどうか、未だ迷っているところです。

Keep in Touch !

ビジネス、公的な活動問わず、アメリカのこれらの事例から何かのヒントがお届けできれば幸いです。みなさんからのコラムに関するご質問や、こんなことを聞いてみたい、知りたい!というリクエスト、叱咤激励などなど、24時間365日お待ちしております。ではまた次回コラムでお会いしましょう。

columnist
Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。