NYノマド 第18回 孤立経済と社会的課題解決の懸け橋となるか?!次世代サブスクリプションサービス Part2

20.07.07 06:14 PM By s.budo

Part2.コロナウィルスによる孤立経済"The Isolated Economy"の到来と存在感が増すサブスクリプションサービス

リオープンの段階が着々と進んでいるものの、その反動でコロナウィルス感染が爆発的に増加する州なども増える中、アメリカではまだまだ自宅にこもる生活が中心となっていると言えます。

先にもご紹介したように、なるべく自宅から、様々な経済、社会活動を行うという生活スタイルが続いています。


こうした、消費者が自宅から外出をあまりせずに生活を営み、自宅から様々な経済活動を営む"The Isolation Economy(孤立経済)"に移行したといいます。

画像:https://www.forbes.com/より引用
孤立経済では、学校での学びはオンラインとなり、医師の診察もテレメディスンへと移行、そして映画館やモールにショッピングに行くことが過去のものに。


そして、オンラインミーティングプラットフォームを提供するZoom、ストリーミング配信サービスのNetfilix、そしてオンラインエクササイズトレーニング機器のPetlonが孤立経済を代表するリーディングカンパニーです。

自宅内生活の生産性を向上させるサービスやエンターテインメント、自宅への宅配サービス、リモートサービス、セキュリティ業者、通信業者といった"動かず、固定化された消費者"に価値を提供する企業が孤立経済をけん引します


私もコロナウィルスによる自宅待機令に入った後、オンラインでの消費や自宅にいながら楽しめるNetflix、Zoomなどを利用した人付き合いやコミュニケーションなど、社会、経済活動のほとんどを自宅からオンラインを介してこなす生活がスタンダードとなり、以前とは全く変わった生活となりました。


そして毎日の生活ではNetflixやディズニープラスなどの動画配信サービス、Amazonの定期購買をはじめとし、定期的に野菜などの食品を配達してくれる配送サービスなどの需要がぐぐっと増えています。


そしてその多くが、サブスクリプション型の課金モデルを採用しています。

新聞購読や生協、子どもの学習教育の進研ゼミなど、サブスクリプション型のサービスは目新しいものではありません。
しかしながら、このコロナ禍で自宅にいながらオンラインで購入できるこれらのサブスクリプション型のサービスはその存在感を増しているように感じます。


そこで、今回は私がこの孤立経済下で利用しているサブスクリプションサービスをいくつかご紹介し、その共通点と可能性を探ってみたいと思います。

フードロス(食品廃棄)問題と戦う定期規格外野菜宅配サービス ーMisfits Market

画像: https://www.misfitsmarket.com/よりスクリーンショット画像を掲載
最初にご紹介するのは、私のコラムでも何度か取り上げたことがあるMisfits Marketです。

こちらは、廃棄予定だったオーガニックもしくは遺伝子組み換えでない規格外野菜を市場価格の約25%から40%安い価格で自宅に宅配してくれるサービスです。


定期宅配は2つのコースがあります。
Madnessコースは1回35ドルで8~10kg相当の、Misfitsコースは22ドル約4~5kg程度の季節の野菜とフルーツが届きます。
週1回もしくは隔週の宅配が選べ、定期宅配を開始しても、いつでも休止することが可能です。
写真:筆者撮影、Misfitsから届いた野菜や果物たち(Misfitsコースと追加購入した野菜)
宅配される野菜やフルーツは、毎週同社のウェブサイトには、”What we're rescuing this week.(今週、私たちが助けようとしているもの)”と題されたブログがアップされ、およそ、どのような野菜や果物が届くのかがわかります。
具体的に何が届くのかわからないと、冷蔵庫の在庫管理に困るなあと思っていたのですが、現在は一部地域でこの内容をカスタマイズできるサービスが開始されました。

また、宅配予定の野菜とフルーツ以外に、その週に購入可能な野菜、フルーツ、ハーブ、調味料、パン、菓子、飲料などを追加購入することも可能です。

取扱数はおおくはありませんが、これらは生産過剰や余剰在庫をの製品などを中心に取り扱っているようで、市価よりも安価な価格であることと、こんなオーガニック食品があるんだと新たな商品を知るといった買い物のちょっとした楽しみを与えてくれます。
ただし、牛乳や卵、魚や肉類もしくはその加工品は取り扱い対象になっていないため、これらは別途購入しなければならない点がデメリットです。



私は隔週の利用で、5回ほど利用しましたが、配送をアメリカのユナイテッドパーセルサービス(UPS)に委託しているのですが、この配送が雑で、箱の中の野菜たちがしっちゃかめっちゃかになってしまっていることが少なからずあり、一時的に定期購買を休止しています。

アメリカの配送クオリティの悪さは日常茶飯事で、ティッシュペーパーの箱は見るも無残にぼこぼこになったり、シャンプーのノズルが破損していたりすることはしょっちゅうあります。

粗く雑なアメリカの配送に慣れてきてはいるのですが、配送される生鮮食品の鮮度やクオリティが比較的良い分、生鮮食品がぐちゃぐちゃになって配送されると悲しいものがありました。

画像:https://www.misfitsmarket.com/より引用
さて、Misfits Marketは2018年にAbhi Ramesh氏により設立されました。

Rames氏が農場を訪れた際に交わした農家の人との会話から、規格外という理由でたくさんの食べ物が捨てられている現状を知り、アメリカで年間およそ1610億ドル、食品供給全体の30~40%にのぼるという食品廃棄の社会問題を解決しようと立ち上げられました。

農家などで生産された野菜や果物は見た目が悪いなど規格外という理由で、食べられるものであるにもかかわらず、大量に廃棄がなされています。
この課題に着目し、たくさんの農家にインタビューを行い、規格外野菜を市価より安価に、各家庭に届ける定期宅配サービスの展開を始めました。


現在までにおよそ4500トン以上もの食品廃棄を救ったといいます。


食品廃棄だけではありません。Misfitsは、アメリカに存在するもう一つの食にまつわる課題を解決しようとしています。それは、健康で手頃な価格の野菜や果物を食べる機会です。


アメリカでは、社会的弱者や低所得者層が居住する地域を中心に、生鮮食品流通網が撤退するなどして、スーパーマーケットや食料品店といった場所へのアクセスが制限され、買い物に困窮するフードデザート(食品砂漠)と呼ばれる地域がみられます。
市価よりも安価にオーガニックの野菜や果物を販売、宅配するサービスを提供することで、この食品砂漠にみずみずしい野菜や果物を届ける新たな流通のパイプラインをもたらそうとしているのです。

こうした社会的課題解決に取り組む事業であること、遺伝子組み換え技術を使わないオーガニック食品を取り扱っていること、また、孤立経済の追い風を受け、今年の3月末から4月は定期購入の申し込みが殺到し、ウェイトリストとなっていました。
現在は人員を増員するなどして同社のオペレーションのキャパシティを拡大しながら、需要に応えているようです。

配送クオリティや野菜や果物以外の食品は別途購入しなければならないという問題はあるものの、規格外野菜を安価で購入するだけで、社会的課題の解決に参加できる点は本業とはまた違った異なる価値を提供しているといえるでしょう。

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ビジネス、公的な活動問わず、アメリカのこれらの事例から何かのヒントがお届けできれば幸いです。みなさんからのコラムに関するご質問や、こんなことを聞いてみたい、知りたい!というリクエスト、叱咤激励などなど、24時間365日お待ちしております。ではまた次回コラムでお会いしましょう。

columnist
Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。

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