NYノマド 第18回 孤立経済と社会的課題解決の懸け橋となるか?!次世代サブスクリプションサービス Part4

20.07.27 05:36 PM By s.budo

Part 4. 3社の共通点とは? -サステナビリティを実現する循環型ビジネス

サブスクリプションサービスを展開するMisfits MarketNuuly、そしてLiteratiの3社をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?

最後に、この3社の事例から共通する未来への価値や示唆について考えてみたいと思います。
近年、「SDGs:Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」や「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」のキーワードに代表される、消費社会による大量生産・大量消費・大量廃棄がもたらす環境問題などの社会的課題を解決することが積極的に求められています。Good.Must.Grow.社によれば、コロナウィルスによるパンデミックは、アメリカ人の47%の人が、パンデミックの結果として、より"socially responsible(社会的責任)"な企業を信じるようになったと回答したといいます


コロナウィルスによるパンデミック、そして孤立経済は、意識的に社会や他者と繋がらなければならない状況を生み出しました。その結果、生活者たちは自分たちの意思で主体的にそれらのつながりを選択し、醸成するようになりました。その結果、自宅から自分の日々の生活を営むために必要なモノやサービスの購入先や選択肢を選ぶ際にも、その企業が提供しているモノやサービスだけでなく、その企業の活動や企業がつくろうとしているコミュニティや社会にまで目を向け、選ぶという姿勢がこのコロナ禍でますます強まったと解釈できます。
安く、大量に買わせ、消費させるという消費社会型のビジネスモデルでは継続した顧客獲得に限界があるといえるでしょう。そして、この3社はそれらを乗り越えるため、自社のビジネスモデル、サービスデザイン、バリューチェーンなどに消費社会が抱える問題を解決するプラットフォームやパイプラインを組み込み、サステナブルなコミュニティや社会を自分たちで生み出そうとしています。


そして3社の方法やアプローチにはいくつかの共通点があります。

1.サブスクリプション型サービスによる継続的な関係性づくり

サブスクリプション型の課金モデルは、コロナ禍の孤独経済では、外出せずに一定のサービスを購買したり、享受することができ、顧客にとっても購買コストが低い支払い方法です。


企業側にとっても、ある程度固定的な収入が見込みやすく、顧客の購買データを継続して収集できる点もメリットです。

そして、1回ごとに購買するワンタイム購買と比較して、一旦加入すると顧客と比較的安定、継続した関係性を構築しやすいことが特徴の一つです。


サブスクリプション型サービスを採用することで、データを活用した包括的な顧客理解と長期的な関係性の構築がビジネスのアセットとして蓄積されます。

2.余剰財や廃材を循環させ価値化するとともに、廃棄コストを最小化することで社会課題解決を目指す

Misfits Marketは廃棄予定だった規格外野菜・果物という余剰財を安価に販売することでフードロスとフードデザートを減らすことを目指しています。

nuulyは洋服レンタルと寄付で廃棄される洋服を減らし、環境に配慮した消費の選択肢を提供しています、そしてLiteratiは不要な本を寄付できることで、個人や社会にとっての廃棄コストの低減を図っています。

3社いずれも、消費社会がもたらす大量清算、大量消費、大量廃棄がもたらした社会的課題にサービスやビジネスのプラットフォームを提供することを通じて取り組んでおり、こうした企業姿勢や活動はよりコミュニティを支援し、社会的責任を全うしている企業を選び、利用したいと考える生活者の支持および信頼獲得に繋がります。

3.消費者を"消費者"という受け身の存在に限定しない

消費者という言葉は、企業がサービスや製品を購入する対象としてのみ認識した限定的な関係性です

モノを売り、買ってもらって、それでおしまいの受け身の存在であり、関係性です。


それと異なり3社のビジネスやサービスでは、顧客はサービスや製品を購入するだけでなく、各企業が展開するバリューチェーンやコミュニティにおいて、積極的に価値を生み出し、流通させ、社会的課題を共に解決する関係性を構築しようとしています。


顧客側は、3社のサービスを利用することで、自宅にいながら社会的課題を解決したり、コミュニティを支援する活動に参画したりすることができます。

類似のサービスが数多とあり、次々と生まれる中で、選ばれ続けるためには、顧客と消費者としての関係性をでは不十分といえるでしょう。

世界でまだまだ猛威を振るうコロナウィルスと孤独経済で変わりつつある私たちの生活は、循環型経済や環境問題といったサステナビリティ志向と交錯し、20世紀型消費社会における企業と顧客との関係性に変革を求めているように思います。
外出が制限され、思うように活動したり、コミュニティに参画したり、人と繋がったりすることが難しくなった今、新たな繋がりを在宅しながらでも構築し、醸成できることがますます求められるでしょう。

リオープンが進む中、孤独経済の次にやってくるのはどんな経済社会でしょうか。

引き続き、私も在宅しながら考えてみたいと思います。


それではみなさん、また次回のコラムでお会いしましょう。

columnist
Aya Kubosumi ノマドマーケター



コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。

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