Part4.プレイヤーが豊富なアメリカの子ども向けe-learning市場
ざっと3つのオンラインラーニングサービスをご紹介しましたが、他にも我が家でコロナウィルスのパンデミックによって自宅待機生活を過ごす間、いくつかの子ども向けオンライン学習サービスを利用しました。
娘が気に入ったもので私たちが有料課金で利用したものには、スマートフォンもしくはタブレット端末で利用できるサイエンス教材アプリの"Tappity"や、教えたい人と学びたい人をつなぐ日本のストリートアカデミーの子ども向けオンラインクラスを展開する"Outschool"があります。
Tappity
Outschool
ニューノーマル時代のオンライン体験やサービスからの示唆
今回ご紹介した体験型おもちゃ屋さんCAMP、そして子ども向けの教育、いずれも元来は物理的な場所で、顧客に体験を提供していました。しかしながら、コロナウィルスによるパンデミックでオンラインプラットフォームを活用した体験の提供に少なからず移行することとなりました。今回実際のオンラインで提供され、私が経験してみたサービス体験から学んだこと、感じたことをもとにオンラインへのサービス移行やオンラインでの新たな体験、価値提供への示唆を考え、簡単に2点まとめてみたいと思います。
1. オンラインやテクノロジーを通してでしか提供できない価値や体験を組み込む
一つ目は、オンラインやテクノロジーを使ってできる新たな体験や価値を提供することです。例えば、CAMPのオンラインバースデーパーティは、一度に複数の家庭や子どもたちに、バースデーパーティを提供し、その家族や友達と共に自宅にいながら(コロナウィルスの心配をすることなく)みんなでエンターテイメントを楽しんだり、1年に1度の大切な時間を共に過ごすことができます。また、CAMPではスカベンジャーハントなどのアクティビティで、各家庭内の場をつないだゲームをしたりすることで、自宅にいるからこそできる、参加者の今いる場所とみんなで繋がる新たな体験も提供していたと感じます。
オンライン教材では、テキスト、動画、インタラクティブなコンテンツなど複数のメディア形式を組み合わせ、子どもの関心や集中力を高めるようなデザインが肝要となるでしょう。また、epic!は本の読み上げ機能と共に、読み上げている箇所を反転表示させるという機能も同様にオンラインだからこその提供価値と言えるでしょう。これにより、子どもの学びだけでなく、学びが拡がるという価値により、親が子どものスクリーン時間が長くなることの罪悪感を減らせる可能性もあります。物理的な店舗や経験を代替する、しないの二元論ではなく、オンラインだからこそ、フレキシブルに、自宅にいながら受容できる価値をデザインし、サービスに組み込むことが求められていると考えます。
2. 意図的に関連する複数のステークホルダーにリーチし、巻き込み、エコシステムを作るデザイン
二つ目は、オンラインでは特に意識して関連するステークホルダーにリーチし、巻き込む、エコシステムを作るデザインをすることです。
例えば、通常の子ども向け学習教材であれば、教師と生徒が学ぶためにデザインしたものを学校や教師に売り込み、販売し、最終的に教師と生徒が利用する、もしくは子どもの家庭学習向けにデザインし、子どもの保護者に販売するという、利用する場面やユーザーごとに、コンテンツやサービスをデザインするかたちが多くみられると思います。
しかしながら、ご紹介したいくつかのオンライン教材では、学校、教師、保護者、子どもという利用に関わるマルチステークホルダーに向けて、コンテンツがデザインされています。学校や教師向けのインストラクションなどは別途提供されていますが、基本的に利用するコンテンツやサービスは同じです。これによってコンテンツ制作やサービスデザインのコストを低減するとともに、タッチポイントがあるステークホルダーを通じて、複数のユーザーにリーチしたり、利用機会を提供したりしやすくなるのではないでしょうか。
今回の例でいえば、私たちがオンラインラーニング教材を利用し始めたのは学校からのフリーアカウント提供がきっかけです。他にも、CAMPの無料のオンラインバースデーパーティでは、パーティの最後にCAMPの司会から、今日のパーティの写真や動画などは自由にソーシャルメディアにアップしてください、その際、CAMPのハッシュタグをぜひつけて投稿してくださいというコメントがありました。ポテンシャルユーザーやカスタマーに効率的に広告し、リーチするにはもってこいの方法です。特に現在、コロナ禍で在宅時間が多いユーザーとのタッチポイントをいかに増やすかという課題をかかえる企業も多いのではないかと思います。
自社サービスのステークホルダー間の関係性を活用したり、構築するデザインを意図的に取り入れることで、自社サービスへの関心やエンゲージメントを高めるエコシステムを醸成することができるかもしれません。