NYノマド:第2回 あなたの声?愛?お金?を届けてください~ 

19.02.14 12:02 PM By s.budo

-日常に埋め込まれるリソースの再分配網 ノマドマーケター at NY

交差点のど真ん中で警察官に怒鳴られる、、、

皆さん、ついにやってしまいました。はい、私は、交差点のど真ん中で、ポリスに怒られました。娘をベビーカーに乗せ、車がビュンビュン走る交差点を渡っている最中です。アメリカでは右折は信号が赤でも車が曲がれますので、右折車が来ないうちに早く渡らねばと、歩行者信号がGOになるやいなや、猛突進。そこに、なんと警察のパトカーが走ってきたのです、サイレンを鳴らしながら。歩行者に優しくないアメリカの大きな道路で、緊張しながらベビーカーを押していた私は、サイレンの音が耳に入っていたものの、視界には入っておらず、交差点を渡り切ろうとしていました。その瞬間、目の間にパトカーが停車し、窓を開け、警察官が私に大声で怒鳴りました。第一声は、"Are you kidding me?!(お前、ふざけてんのか!という風に私には聞こえる言い方でした)" 。ものすごい、権幕でした。緊急車両が交差点通ってるんだから、さっさとどけ、お前は何考えてんだ!というようなことを言われて、しばらく怒鳴られました。そんなに怒らなくても、、、思わず、頭真っ白、涙目に。こちらでは、ひとりひとり、言いたいことがあれば、声を大にして言いますね。

先日も、とあるアジア系スーパーのレジに並んでいたら、カートを持っていた夫が娘をあやすのにレジの列から少し離れてしまったことがあったんですが(もちろん、私は列に並んでいます、何も品物を手にしていないですが)、私の番になったので、夫に声をかけてカートをレジに並ばせると、私の後ろに並んでいたアメリカ人男性のおじさまに、結構な長さで文句を言われましたね。品物を持ってレジに並んでいないのはおかしいとか、フェアじゃないとか、いろんな理由をまくしたてられましたよ。日本だと、どちらかといえば、よっぽどでないとクレームはしませんが、こちらは声を上げる、言いたいことを言うことが”当たり前”です。逆にポジティブに捉えると、これはかなりオープンな環境ともいえそうです。

極寒でもパワフルに声をあげる!NYのウィメンズマーチ

さて、声を上げる、といえば、先月はニューヨークのマンハッタンでウィメンズマーチが催されました。今年3回目を迎える女性による行進デモで、トランプ大統領就任に危機感を覚えた女性たちが立ち上がり、2017年に始まったもので、初年度は全米600都市で400万人以上が参加したそうです。今年は内部組織の問題が発生し、参加者がかなり減ったそうですが、それでもニューヨークセントラルパークの西側の外周を気温約0度の中、女性をメインに約1500人の人々がポスターやプラカードに女性の権利や人権に関する主張を中心に、自分の考えや主張を表現して行進しました。私もちょうど当日その様子を少し見る機会に恵まれ、どんな人たちが、どんな言葉を掲げ、どんな様子で行進しているのかを観ていました。行進しているのは女性だけでなく、男性や子どもの姿も、そしてその行進を眺める観衆たちが沿道を囲みます。


どんなメッセージが掲げられているのでしょうか。女性の平等な権利や立場を主張しているもの、トランプ大統領への痛烈な批判をするもの(写真左)、偏見や人種差別の根絶を訴えるもの、"♯Me Too"のメッセージを掲げるもの。写真左下のように"Love Not Hate Make America Great" などポジティブでウィットに富んだメッセージも多く、見ていて飽きません。私が一番力強いメッセージを受け取ったのは、なんと、8歳の女の子の行進です。写真を撮れなかったのが残念ですが、彼女が掲げていた段ボールには、「私は8歳です。私には夢があります、、、。」の言葉が。ちょうどアメリカでは毎年1月の第3月曜日はマーティン・ルーサー・キング牧師の日で祝日となっており、キング牧師の言葉をもじった彼女の未来の希望にあふれるメッセージに、子どもでも1人の個人として、自分の言葉を表現し、周囲に発し、届けるというそのアメリカンスピリットと、一人一人の個人の声から世論が成り立っている国であるアメリカを十二分に実感したのでした。

黙っていては何も変化は起きない、起こせない、だから私から声を上げるアメリカ。黙って、波風立てない日本。ここに、異なる個人がその声を"Speak out"することによってアイディアや思想の多様性の新陳代謝を促し、イノベーションを生み出すアメリカパワーの源があるのでしょう。アメリカが多様性の塊であることと、いい意味でも、悪い意味でも、1人1人が自分の声を発して、表明することで成り立っている社会であることを実感するこの数か月でした。と書いたあとに念のため調べたところ、本場の運動に共感して日本でも「 ウィメンズマーチ東京」が開催されており、今年は2019年3月8日の「国際女性デー」に開催の予定とのこと。。もっとも日本での運動は、女性運動の社会的背景や歴史においてもアメリカと差異があり、少し活動の様相や変化を起こす切り口が異なるようです。

日常に埋め込まれたドネーション(寄付)とファンドレイジング 

声を上げる以外にも、様々な折に、個人の自主的な参画や行動を求められるのがこのアメリカ社会です。先月から娘を近隣の現地のプリスクールに通わせていますが、毎月、"Jean Day"となるものがあります。この学校は普段は簡易な制服を着せるのですが、このJean Dayは、(ジーンズが語源)カジュアルな服装、私服で来ていいですよ、という日です。しかしながら、条件があります。私服で来る子どもは、2ドルを学校に持ってきてねという条件です。そしてこれは学校への寄付として扱われます。これだけではありません。この他にも学校主催の類似の寄付やファンドレイジング(民間非営利団体が、活動のための資金を個人、法人、政府などから集める行為の総称)機会は想像以上にたくさんあります。例えば、クリスピークリームドーナッツは皆さんご存知かと思いますが、学校のファンドレイジング手段の定番です。家庭にクリスピークリームドーナツの特別価格の注文用紙が配られ、家庭ごとに何箱も購入して、他の人に売ってくださいねという趣旨のものです。オリジナルドーナツ10個で10ドル、チョコレートドーナツ10個で12ドル、コーヒー豆が10ドルというようにだいたい単価は10ドル前後ですが、通常の市販価格より若干高い価格で、この注文用紙が学校からのお知らせに入っているのです。そして各家庭が購入した金額の幾ばくかが、学校に落ちているはずです。


それ以外にも、先日は学校の先生からとあるE-mailが送られてきました。そのタイトルは、"Amazon Wishlist"。そしてもちろん、本文にはAmazonのウィッシュリストが!!。メールのメッセージには、「クラスの教育や活動をもっと充実したものにするために役に立つと考えるグッズをリストしましたので、もしよろしければぜひ購入してください。もちろん、全て義務ではなく、任意です。」との先生の言葉が。ウィッシュリストをクリックすると、あります、あります、20~30個の品物が。5ドルから40ドルくらいの価格帯の、文房具やパズル、絵の具、知育玩具などよりどりみどりです。うーん、子どもの教育環境を考える親であれば、一つくらい協力しなくてはとか?、他の家庭や先生の目を気にしつつ、、程よい値段のハーブを育てるキットをぽちっと購入してしまう日本人の私がそこにいるのでした。

ちなみに、また最近は学校でブックフェアなる、子ども推薦図書を購入するイベントがありました。そこには、各学年のクラスの担任が選んだ本が5冊から10冊ほど先生の名前が掲げられた籠の中に入れられています。先生がおすすめの本ということなのかなと思った私でしたが、よくよくブックフェアのお知らせ(写真)を見てみると、そこには、教室に置きたい本をぜひ購入してクラスにドネーションしてくださいという説明が。学校は学費だけでなく、ドネーションやファンドレイジングような様々な手段で、積極的に各家庭や関係者からリソースを獲得しています。そして、周囲に聞いてみると、全員がこのドネーションやファンドレイジングに協力しているわけではなく、趣旨やその申し出に賛同し、かつ、金額を支払ってもよいと考える家庭だけやるようですが、半分以上の家庭が賛同、協力すれば、かなりの金額やリソースになるのではないでしょうか?

寄付活動に熱心なEthically responsible(道徳的責任) な企業たち

学校だけではありません。アメリカの企業では企業の社会的責任(CSR)の一環で、ドネーション活動にも熱心です。

例えば、先日はショッピングモールのGymboree https://www.gymboree.com というお店に子ども服を購入しに行きました。パジャマなどいくつか選んでレジに並び、支払いをカードで済ませようとすると、カードの金額確認のボタンを押した後に、カード支払いの端末に表示された情報は、「いくらドネーションしますか?1ドル、2ドル、5ドル、10ドル、任意金額、ドネーションしない」という表記です。残念ながら、どれかを押さないと、洋服の支払いは完了しません。目の前には店員さん、そして私の後ろには、レジを待つママたちの列が見えます。周りからどう思われるかがまたもやさっと頭をよぎってしまった、生粋の日本人である私は、無難そうに思われた2ドルの寄付のボタンを押し、カードにサインをするのでした。いえ、もちろん、しなくてもいいのです。しても1ドルだって構いません。おそらく、アメリカ人でしていない人もたくさんいると思います、が、後日、また別のCarter’s https://www.carters.com という子ども服のお店に行った際も、同じように支払いの際に寄付を求められました。そして、店員の手元を見ると、小さなメモの端切れがあり、どうやらドネーションをした人の数を日にちごとにカウントしているようなのです。それをささっと盗み見してみると、一日に10人から20人くらいでしょうか。そのお店は小規模で、そこまでたくさん顧客が来るようなお店ではなく、当時も2~3組の家族がいる程度でしたので、一日何人くらいの顧客が来店しているのかは定かではありませんが、一日10人1ドルを寄付したとして、10ドル、一か月で300ドル、まあまあの金額を獲得することができますね。リソースを持っていて、提供したい人が積極的に声を上げて提供するスタンスのアメリカだからこそ、Uberなどのシェアエコノミーが興隆するのでしょう。

referenced from https://www.gymboree.com/baby2baby-donate.html?lang=en_JP

ターゲティングされた寄付経験


ここで子ども服の企業がこのドネーション活動をしていることに、二つの点で感心してしまいました。一つ目は、ターゲティングです。子ども服を買いに来るのは誰でしょうか。はい、当たり前ですが、メインは子どもを持つお母さん、そしてお父さんやおじいちゃん、おばあちゃんですね。そしてこれらの子どもを持つ人たちは、子どもの環境や健康のことを考え、日々生活をしており、他の層と比較しても、環境問題や健康に関心を持つ人が多いはずです。狙うべき顧客層にピンポイントにお願いをしているわけです。ですので、こうした顧客がメインの子ども服企業がドネーションを求めればまさに、他の顧客層よりも圧倒的にドネーション成功率が高いはずです。


二つ目は企業のブランディングです。こうしたドネーション活動を積極的にしていることは、企業の道徳的責任をしっかりと全うしている会社であることを印象付けられます。そしてこの印象は、顧客の自発的な寄付行為という経験を通じて、顧客の記憶の中に埋め込まれます。テレビや新聞でコマーシャルをしたり、特定の団体に寄付をしたりするよりも、ずっとずっと効率的で、強固なブランド認知策となっているはずです。

アメリカでは直接的な消費や税金が、富の再分配の動脈だとすると、寄付やファンドレイジングは日常の中に細かく埋め込まれた静脈のようなものでしょうか。アメリカの富の再分配の血液循環の活発さに驚き、そしてまた個人の行動を促す様々な機会と策に、おぬしなかなかやるな、、、と唸る私でした。


Keep in Touch !


ではまた皆さん、次回のコラムでお会いしましょう~。

取り上げてほしいトピックやテーマなど、いつでもお待ちしております。

Columnist

Aya Kubosumi ノマドマーケター


コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。