NYノマド 第20回 注目を浴びるフードテック(Foodtech)ー百花繚乱のオンライン宅食サービス

20.09.02 02:15 PM By s.budo

閑古鳥が鳴くマンハッタンのタイムズスクエア、再開へ向けて歩き出すニューヨーク

皆さん、こんにちは。


このニューヨークノマドマーケティングのコラムもおかげさまで20回目を迎えることが出来ました。短い夏が終わりを告げ、早々に秋の涼しさを感じるようになったニューヨークです。日本ではまだまだ暑い日が続いているのではないでしょうか?


先月は半年ぶりに美容院へヘアカットに行くため、5ヶ月ぶりにマンハッタンのタイムズスクエア近辺まで公共交通機関を利用して行きました。
写真:筆者撮影
バスに乗りましたが、乗客は7-8人ほど。
そして、例年、夏休みの観光客で賑わっていたタイムズスクエアは、写真のようにほぼ観光客の姿はなく、ブロードウェイなどももちろんまだ閉鎖されたまま、見られる機会を失ったたくさんのデジタルサイネージが寂しそうに光を放っていました。
少し路地に入ると、閉まっている店舗のシャッターなどにグラフィティ(落書き)が目に飛び込んできます。


エネルギーに満ち溢れた都市、ニューヨークへのコロナウィルスの影響の大きさを感じずにはいられませんでした。


唯一、タイムスクエア直結の42st station には、ニューヨークシティを鼓舞するメッセージのアートが大きく掲げられ、ニューヨークの持つエネルギーを発信してくれているように感じました。


しかしながら、3月から閉鎖されていた、マンハッタンの眺望が360度楽しめるロックフェラーセンターの「トップ・オブ・ザ・ロック展望台」が8月6日に5か月ぶりにオープンしました。レイバーデーの祝日まで、12歳未満は無料で訪れることができます。

同様に、ロワーマンハッタンのミートディストリクトにある人気観光スポットで、元廃路線を再活用した空中庭園のハイラインも8月16日からオープンし、予約制、人数制限を行っているため、人混みでごった返したハイラインではなく、静かな散歩を楽しむことができるようです。さらに、アメリカ自然史博物館が9月9日から、メトロポリタン美術館は8月29日からの再開がアナウンスされ、徐々に、少しずつではありますが、観光施設などのリオープンや再開予定がアナウンスされ、活気を取り戻すための道のりに光が差しつつあります。


そしてニューヨーク市内の景観を変えているのがレストランのアウトドアダイニングです。


ニューヨーク市では6月22日からレストランは屋外での食事が許可されるようになっていますが、再開していないレストランも多くあります。
そこで、アウトドアダイニングを提供しているレストランを簡単に探すことができる地図検索サービス「NYC Open Restaurants」が、ニューヨーク市運輸局から提供されています。


アウトドアダイニングを提供しているレストランの名前、場所、席が設置されている場所(道路や歩行者通路、もしくは両方など)、アルコール飲料の提供有無などの最新情報を調べることができます。
また、このサイトを参考に、屋外での密集エリアなどの安全性を確認することもできます。


行政とレストランが一体となって、ビジネスや経済回復に向けて取り組むようすが伝わってきます。
写真:NYC Open Restaurants(https://experience.arcgis.com/experience/ba953db7d541423a8e67ae1cf52bc698)よりスクリーンショット画像を引用

第20回NYノマドでは、「注目を浴びるフードテック(Foodtech)ー百花繚乱のオンライン宅食サービス」をテーマに、続々と新たなスタートアップが参入しているいわゆる、フードテック業界の中でも、オンラインのPrepared meal デリバリーサービスについてご紹介させて頂きます。

そして、私が体験したCookunityというニューヨークのBrooklyn初のサブスクリプション型のオンライン宅食サービスを取り上げ、そのサービスデザインと顧客への提供価値について検討してみたいと思います。

  • Part1. 中食、外食にプレミアムなお金を払うアメリカ
  • Part2. サブスクリプション型オンライン宅食サービス、「健康志向」でも、異なるコンセプトとメニュー展開
  • Part3. ユニークなポジショニングのCookunityーミシュラン星付きのレストランなどNYで活躍するシェフによる美食メニュー提供
  • Part4. 果たして、実際の味は?、Coockunityの5つの提供価値

Part1. 中食、外食にプレミアムなお金を払うアメリカ

従来であれば、たくさんの人で賑わう夏のレストランやバーですが、コロナウィルスによるパンデミックで室内での食事提供ができないなど、大幅な営業制限を強いられている中で、需要が伸びている市場の一つが、"Prepared Meal Delivery Service(宅食・食事宅配サービス)"です。


このサービスは、アマゾンのミールキットなどのレシピと食材がセットになって自宅に配送される食材キット宅配サービスとは異なり、電子レンジで温めるだけですぐに食べることができる、いわゆる宅食を自宅に配送するサービスです。


アメリカでは、"Ready to eat meal""Prepared meal"といいます。


日本では調理された食品を購入して家で食べる"中食"が同じカテゴリに該当します。
ちなみに、内食は「素材を買ってきて家で調理すること」と定義されるようです。


日本惣菜協会発行の「惣菜白書2020年版」によれば、2018年の日本における中食市場は10年前と比較すると27.3%増の10兆2,518億円で、食市場全体の中でも特に成長著しく分野となっています。
最新の公開データがなかったため、具体的な日本との市場規模比較ができないことが残念ですが、恐らく、日本のカテゴリでいう、外食がレストランの室内での飲食提供がまだ許可されていない州も多くあるため、内食や中食需要が増加していることが推察されます。


図:Consumers Pay a Premium for Increasing Levels of Convenience, https://www.luxresearchinc.com/press-releases/new-food-business-models-capture-5-percent-to-25-percent-premium-for-added-convenienceより引用
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Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。

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