NYノマド 第20回 注目を浴びるフードテック(Foodtech)ー百花繚乱のオンライン宅食サービスPart3

20.09.15 01:59 PM By s.budo

Part3. ユニークなポジショニングのCookunity
ミシュラン星付きのレストランなどNYで活躍するシェフによる美食メニュー提供

さて今回は多様なプレイヤーがしのぎを削るサブスクリプション型オンライン宅食サービスの中で、独自のポジショニングをとるcookunityのサービスを実際に試し、顧客視点からサービスデザインのプロセスや提供価値について検討してみたいと思います。

画像:https://www.cookunity.com/よりスクリーンショット画像を引用
こちらのCookunityもニューヨーク発のスタートアップです。
本拠地はニューヨーク市内のBrooklyn区、市内でもアートやファッション、フードなどの面でもおしゃれでローカルな文化発信が次々と生まれている地域です。


さて、このCookunityは2015年に起業、アルゼンチン人で、アルゼンチンですでにフードデリバリー企業を立ち上げた経験を持つMateo Felix Marietti氏とヘッドシェフの Lucia Cisilotto氏の2人の共同創業者によって立ち上げられました。
ここ最近、共同CEOの企業が増えているといいますが、このCookunityも然りです。

ウェブサイトには、
"Let New York's most talented chefs change the way you eat."
「ニューヨークの最も才能あるシェフたちに、あなたの食事のしかたを変えさせよう」
という言葉が掲げられ、「どんなサービスなの?」という関心を喚起するキャッチコピーですね。
NYで活躍するシェフたちが作る美食を日常の食生活に組み込み、食事のしかたをもっとポジティブなものに変えようというコンセプトが伝わってきます。


Cookunityの特徴をウェブサイトから簡単にまとめたものを始めにご紹介し、実際の第1回目の注文から実食までのサービス体験について皆さんに共有させていただきたいと思います。

健康コンシャスで舌の肥えたニューヨーカーたちの支持を得るか?

現在Cookunityはニューヨーク州、コネチカット州、ニュージャージー州などの東部の州を中心に9つの州でサービス展開をしています。

Cookiunityのウェブサイトはデザインがシンプルで、簡潔でキャッチ―にコンセプトやサービスの特徴が記載されています。これもせっかちなニューヨーカーに対応したウェブデザインなのかもしれません。


サービスの特徴としては、

  • 毎週4食(1食あたり、13.49ドル)から16食(1食あたり、10.49ドル)を自宅に配達、配達料は無料。
  • 初回注文はなんと太っ腹の50%オフ!
  • 食事はおよそ4~5日間冷蔵保存することができ、レンジやオーブンで温めてすぐに(およそ2分以下)で食べる準備が完了。
  • 200種類以上の多様なメニューの手作りの食事が楽しめ、中にはJean-Georges Vongerichtenといった、世界で活躍するミシュランスターシェフのメニューも!
  • Farm to Kitchen to Table(農場から調理場、そして食卓)の質の高い食材
  • 遺伝子組み換え食品(GMOs)、人工的な保存料(Artificial)を使用しておらず、人道的に育てられた食材(Humanely Raised)を使用。
  • 栄養の専門家から健康的な食習慣を続けるための食事の選び方についてのアドバイスを毎週得ることができる。

Coockunityの1食の価格帯については、コンビニやスーパーなどで安くて美味しいお惣菜やお弁当を購入できる日本と比較すると、高く感じられる方が多いのではないでしょうか?

しかしながら、今回ご紹介した16社の価格帯と比較すると平均より少し高めという程度で、マンハッタンなどのニューヨーク市内のレストランでデリバリーをしたり、ランチをすると実際にこの金額では済みません。また、前述のConsumers Pay a Premium for Increasing Levels of Convenienceの図でご紹介したように、温めるだけの調理済みの食品と比較してレストランでは25%以上プラスで支払っているとされていますので、レストランレベルの食事がこの金額で可能になるのであれば、ニューヨーカーにとっては魅力的な価格帯と言えるかもしれません。


プロのレストランシェフの料理が手軽に楽しめるという点では、日本のプライベートシェフ出張サービスのマイシェフが若干類似のサービスといえるかもしれません。

こちらは自宅にシェフが出張し、料理を自宅キッチンで作ってくれるサービスですので、品数が多く、作り立てのお料理をいただくことができますので食事自体の価値は全く異なり、1名あたり5000円程度かかり、複数人での利用が必要です。

せっかちなニューヨーカーも納得のサブスクリプションデザイン

では、実際にこのCookunityを試してみた結果のご紹介に移りたいと思います。

Facebookの広告からCookunityのウェブサイトにアクセスし、サブスクリプションと1回目の宅食配達を行いました。

完了までの大まかな手続きは下記の図に示したように6つのステップで完了、非常にシンプルです。
全体的に感じるのは、Coockunityのサービスに関心を持った顧客に初回のサブスクリプションを完了させるためのUIをデザインしているという点です。
図:筆者作成

①ではサービス提供エリアに顧客の配達先があるかどうかでスクリーニング

②と③のステップでは、サブスクリプションの基本条件を選択させています。

では5つのコースから選ぶようになっていますが、人間が認知しやすいチャンクである、マジカルナンバー7の数(7±2の数に設定すると、人間がその情報を認識しやすく、選びやすいと言われています)に設定されており、選び安くなっています。

また、ではすでに初回配達日と時間帯などを選ばせ、ほぼサブスクリプションサービスへの顧客の必要条件を3ステップで完了させています。

コロナウィルス対応で、配達員との接触が全くない、「ドアの前に置く」というコンタクトフリーの配達方法を選ぶこともできます。

その後のステップ④では、いよいよメインの食事メニューを選択するプロセスに移行しますが、ここではメニューの選択のしやすさと、メニューを探索する楽しみを同時に提供しようと設計を試みているようすが伺えます。

メニューに関する情報はシンプルですが、図で提示しているようにかなり細かい情報が呈示されており、 肉、シーフード、野菜といった食材カテゴリや、600キロカロリー以下、グルテンフリー、 低糖質, 低炭水化物 もしくはケトダイエットなどダイエットの制限カテゴリでのソートが可能です。恐らく、Cookunityが想定する顧客ペルソナでは、これらの条件やカテゴリが重視されていると想定しているのだと思いますが、シェフをフィーチャーしているサービスですので、個人的にはシェフ名やレビュー評価点数順にソートできたらよかったなと感じました。


また、メニューの情報もデザイン的にはシンプルですが、メニュー提供者であるシェフの顔写真と名前、使用している食材の種類やカロリー、成分表などが細かく記載され、準備方法やレビューも参照することができます。


食材の種類は写真で表示され、視覚的に認識できる点もいいですね。


レストランに入ってメニューを選ぶのは、食事をするという体験のなかでも最も顧客の期待が高まる瞬間の一つです。
物理的なレストランでは、周囲のお客さんがどんな料理を頼んでいるのか、どんな料理の匂いがしているのか等、五感をフルに活用してメニューを選ぶことができます。他方、オンライン上のメニュー選択の体験では、視覚情報というリソースに頼らざるを得ません。視覚情報のみでいかに選び、購入する意欲を喚起できるかは、まだ体験したことがないこの種のサービス購入には重要なデザインポイントだと思います。


シェフの顔を見ながら、美味しそうな料理を写真で選び、レビューやその他の情報を参照して購入の意思決定をすることで、購買の意欲を徐々に喚起されていくように感じました。
そしてメニューを選び終わった後には、すでに購入する意思決定がされています。
そしてステップ⑤の購入決済のための情報入力に移行させています。これはもう入力するのみになりますね。
そしてめでたく⑥の購入完了となります。すると、早速スマートフォンのテキストメッセージにウェルカムメッセージと配達予定に関する情報が届き、さらにemailにはCEOからのウェルカムメッセージが届きました。
サブスクリプション型のサービスはとにかく、購買契約をさせること、サービスを体験させることからスタートしますので、初回50%オフというプロモーションの設定も購買意思決定のかなりの程度の後押しになっています。実際、これがなければ、日本の安くて美味しいコンビニ食に慣れている私は購買のクリックができなかったと思います。


そして、注文完了画面から個人アカウントのページへと自動的に移行、ここで家族(配偶者・パートナーのみ)の登録、顧客とパートナーの健康状態や食事制限、健康や食の嗜好に関する情報登録をさせるかたちになっており、もちろんこのプロセスをスキップすることもできます。


こうした情報登録はサブスクリプション完了後に設定させる形式になっているのは、せっかちなニューヨーカーの性向を理解していると思います。


そして、自分のアカウント内のデリバリー情報のページでは、来週以降のサブスクリプションのスキップ(skip:その注文を1回飛ばすこと)もしくはアンスキップ(unskip:スキップした注文を注文するステータスに戻すこと)が配達予定日の3日前まで可能になっていました。メニュー選択も同様に3日前までなら変更可能です。
不要な時はスキップすればいいですし、必要な時でも3日前までにアンスキップをすればいいのは比較的フレキシビリティがありますね。


ちなみに、Coockunityの専用アプリもあるのですが、モバイルウェブと比較して操作できること、参照できる情報が少なく、使いづらい印象でした。
シェフバージョンのアプリもあるようです。
アプリ利用は何回かサービスを利用したユーザーが今後の利用をしやすくするためのものであり、注文の初回からアプリをダウンロードしてという手間を喜んで引き受けるニューヨーカーはほとんどいないと踏んで、あまりアプリ開発には力を入れていないのかもしれません。


逆に、モバイルウェブサイトはUIもサクサクで利用しやすい印象を持ちましたので、「モバイルウェブ>PCウェブ>アプリ」の順に力を入れているのかもしれません。
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Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。