NYノマド 第20回 注目を浴びるフードテック(Foodtech)ー百花繚乱のオンライン宅食サービスPart4

20.09.23 02:14 PM By s.budo

Part4. 果たして、実際の味は?

さて、配達日となり、いよいよ実食です!


金曜日の配達にしたのですが、午後2時から9時までという配達時間帯で、8時を過ぎてもなかなか配達されず、やきもきしていたところ、8時20分頃にようやく、配達完了したというテキストメッセージが届きました。

写真(筆者撮影):配達のオリジナル保冷バッグと、保冷バッグを開けた写真

玄関ドアをあけて確認すると、オリジナルの白い保冷バッグに入った商品が置いてありました。中には大きな保冷剤に挟まれたミールが入っていました。

ミールのパッケージは写真のように外装(スリーブ部分)と食事が入った内装部分のフィルム以外は全て紙でできています。フィルムをはがし、外装パッケージに記載されている調理指示に従って温めなおします。食事によって、温めの時間や、温度などが異なり、最適な形で食事をいただけるように食事毎に調理指示がきちんとデザインされている印象です。

写真(筆者撮影)

食事のパッケージと中身、温め指示に従って調理完了した食事、右の食事はトルティーヤがついており、ライス、黒豆、エビと野菜のソテーの構成になっており、温めムラが少しありました。左のベルペッパーのグラタンはオーブントースターで温めると、焦げ目が美味しく、熱々でいただけました!

筆者が今回注文した8食の中で最も美味しかったのは、マンハッタンのフレンチインドネシアンレストランWayanの食事です。


グリルしたエビにスパイシーなソースとライスが添えてあり、これらを混ぜて食べるとなかなかの美味しさで、期待以上でした!


シェフのCédric Vongerichten氏は父にミシュランスターシェフのJean-Georges Vongerichten氏を持つ、サラブレッド。行ってみたいと思ってなかなか訪問する機会がなかったレストランの一つでしたので、ここのメニューを味わうことができる楽しい経験になり、単価がおよそ50ドルから75ドル(プラス、チップ)のレストランの食事を初回50%オフもあり、6ドル程度で味わえるのはかなりのお得感です。

そしてきちんと最適な状態に温めなおすことをしますので、冷めた状態で食べるデリバリーフードより美味で、配達料やチップがかかるデリバリーよりも支払いをかなり安く抑えることができます。

加えて、レストランの屋内での飲食提供ができない現在、手軽にNYレストランやプライベートシェフの美食が楽しめるという経験は面白い提供価値だと思いました。


しかしながら、中には、いまいちの味もあり、もし次回注文するときには、気に入ったメニューを作ったシェフの他のメニューを選ぶ、もしくは食べた人のレビューをある程度しっかりと確認して注文しなければですね。


メインメニュー以外にも、副菜やドリンク、デザートなどのメニューもあり、デザートはパティシエが作っているようで、カヌレなど焼き菓子のメニューがありました。

これらのメイン以外のメニューも組み合わせると、自宅にいながら、美味で楽しい食事をデザインすることができそうです。

写真(筆者撮影)

写真は、筆者が今回注文した8食の中で最もお気に入りだったマンハッタンのフレンチインドネシアンレストランンWayanの食事。

環境コンシャスなミレニアル世代とそれ以降の世代にも受け入れられるパッケージデザイン

味やメニューの豊富さとともにもう一点強調したいのが、パッケージです。


通常、レストランのデリバリーや同様の宅食サービスではプラスチックの容器が使われていることが多く、食べているときに味気無さを感じたり、食べた後にこのプラスチック容器を捨てることに罪悪感を感じることが多くありました。

画像:筆者宛に送られてきたCoockunityのメールからスクリーンショット画像を引用

しかしながら、このCoockunityのパッケージはほとんどが紙でできており、内装も熱耐性のある紙でできたものです。


紙の容器のまま、オーブンや電子レンジで温めることができ、さらに陶器など通常の熱耐性のある容器と比較して、温め後の容器自体の温度も比較的低く、持ちやすいのです。

革新的なこのパッケージには、包装技術の進展を存分に実感しました。


そして紙でできていますので、ゴミを捨てやすく、プラスチック容器と比較して罪悪感はかなり低くなります。

デザイン自体もとてもシンプルで、おしゃれです。インストラクションがシンプルで分かりやすいですし、食材によって異なる4食のパッケージデザインとなっています。


黄色は鶏肉もしくはターキー

ピンクは牛肉もしくは豚肉

青は魚もしくはシーフード

そして緑は野菜です。


さらに、シェフの顔の写真が掲載されており、作った人の顔を思い浮かべながら食べることできます。

シンプルでおしゃれで環境に配慮した紙パッケージのボックスは持ち運ぶにも問題なさそうで、仕事で忙しいニューヨーカーたちがこのCoockunityのボックスをランチとしてオフィスに持参する姿をイメージすることができます。

Coockunityの5つの提供価値

初回の50%オフという価格と、期待値を高く持っていなかったことを差し引いても、このCoockunityの食事は美味しさとニューヨークのシェフのメニューを食べるという楽しさを手軽に提供してくれていると今回の初回注文で実感しました。最後に今回の体験とサービスプロセスの分析を通じて検討したCoockunityの提供価値を下記の5つにまとめてみたいと思います。

    1. 手間をかけることなく、美味しい料理を時短で食べることができる価値
    2. 健康やダイエットを考慮した食生活をデザインすることができる価値
    3. ニューヨークの有名レストランやプライベートシェフの料理を自宅やオフィスで安価に楽しむことができる価値
    4. 環境に配慮した紙のパッケージや梱包材が使われていることで、デリバリーや宅食で通常使用されているプラスチック容器で食べる味気無さが軽減される、環境負荷への罪悪感が軽減される価値
    5. シェフという個人と地域との繋がりを感じることができる、コロナウィルスによるパンデミックで経済的な困難を抱えるシェフやレストラン業界を支援、貢献している気持ちになれる価値
5.の価値については、ニューヨークでは閉店したままのレストランもまだまだ多くあり、寄付金やレストランのギフト券の購入を募っているレストランも少なくありません。
プライベートシェフをしている個人の人はさらに困難な経済状況を抱えているかもしれません。
そんな中で、この宅食サービスを通じて、食事を購入することでシェフを応援することができるという、シェフやレストラン業界を支援する一つの手段としても魅力を感じました。


同時に、レストランで屋内飲食ができない現在、私のように外出をあまりせずに、自宅に引きこもっているようなライフスタイルでも、レストランに行った気持ちになれたり、外との接点を感じたりすることができます。


Cookunityのウェブサイトにも、
"忙しい世界にこそ、大量生産され、喜びのないものではなく、創造性を与えるとともに利便性を届けます。"


"食べることを通じて繋がりを創ります。多様な人々や文化を反映した超ローカルなフードシステムを構築、私たちの役割はこの繋がりを強化し、より質の高い生活を楽しんでもらうことです。"
と明確に記載され、Coockunityが作りたい世界観と彼らの役割が社会に組み込まれた形で定義されているようすが伺えます。


前回のコラムでも述べさせていただきましたが、自社のビジネスを通じて、顧客だけでなく、関わる全てのステークホルダーにとって、Win-winであり、価値が循環するビジネス環境を作ることは、今の企業に最も求められる要件の一つだと強く感じています。日々刻々と環境が変化する中で、こうした循環ビジネス環境を作り続ける企業こそが生き残っていけるのではないでしょうか。


皆さんは自社や自分が利用するサービスには、このような価値の循環を生んでいるものにはどんなものがあるでしょうか。
日本にもこんな循環ビジネスやサービスが生まれているよというものがあればぜひ共有いただき、私もどんどん学ばせていただきたいと思います!


それではみなさん、また次回のコラムでお会いしましょう。
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Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。

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