NYノマド 第21回 Staycation(ステイケイション)が示唆する顧客提供価値

20.10.07 01:44 PM By s.budo

あらゆる広告戦略を駆使する大統領選

皆さん、こんにちは。


こちらニューヨークでは先月より短い秋の季節を迎えています。朝は気温が約10度前後になる日も増え、木々の木の葉も黄色や赤に色づき始め、冬の気配を感じる日も多くなりました。

ここのところ、西海岸カリフォルニア州の山火事が続き、真反対に位置する東海岸でも、山火事の影響により灰などでの空気汚染が起きており、天気予報で注意報が発せられたりしています。

それに加え、いよいよ11月に大統領選挙を控え、やや落ち着かない日々を過ごしています。

写真:筆者撮影
写真:大統領選挙のバナーが掲げられた家、筆者撮影

8月後半から9月前半に週末を利用して近隣に旅行に行ったのですが、ドライブする先々で、自宅の庭に支持する大統領のバナーやポスターを飾る家を目にしました(↑写真)。

画像:Uberから筆者宛に送付されたVoter Registrationを促すメール
画像:Facebookの広告のスクリーンショット

9月の第4火曜日は毎年、"National Voter Registration Day"でした。

選挙への投票資格を有するアメリカ市民は、選挙人登録をして選挙権を取得します。


今年は大統領選挙を迎えることもあり、選挙人登録を促す広告が、Facebook、Twitter、Instagramなどの主要ソーシャルメディアはもちろんのこと、若年層の利用者が多いSnap chatやシェアライドのUber、そしてFeeding Americaといった主要なNPO団体などが、選挙人登録を行う広告に協力していました。


有権者が日頃アクセスするメディアや団体、企業、サービスなどに協力を仰ぎ、有権者登録を促す広告を打つというのは、生活者の動線の中にタッチポイントをこれでもかと埋め込んでいく作戦で、なかなか興味深く観察していました。


もちろん、アメリカ連邦政府という大きな組織だからこそ、なせる広告戦略ですね。

画像:https://barbie.mattel.com/shop/en-us/ba/CampaignTeam?icid=all_header_top-nav_about-campaignteam_p2より引用

そして、なんと、あのバービー人形からは、大統領選挙シリーズが発売となり、選挙キャンペーンチーム4人のバービーが話題となりました。

大統領候補者には黒人女性、キャンペーンマネージャーは眼鏡をかけた黒髪の女性でアジア系を想起させるバービーを起用していますね。

このような表象からも、大統領選挙、女性やマイノリティの人権問題などに対するバービーの姿勢が垣間見れ、単なる玩具という存在だけではない、アイコン的な存在感を示していることに驚きます。

そして何より、子どもの時から大統領という職業や選挙というイベントや政治の存在、そして人種や女性の職業について、子どもが知り、関心を持つ機会をバービーが提供してくれています。

バービーは子どもの遊びの機会や時間だけでなく、遊びを通した社会や政治についての学びや親子間のコミュニケーションを生み出すことにも繋がるといえるでしょう。


このような商品企画を玩具会社がさらりとやってのけることに驚くばかりです。


女性といえば、9月はやはり、RGBこと、ルース・ベイダー・ギンズバーグ判事の死(享年87歳)を悲しみ、悼む声がアメリカ中を包んでいました。


ギンズバーグ判事はアメリカ史上2人目の女性最高裁判事で、自身で法曹界での女性の活躍の機会や役割を切り開き、リベラル派として1993年の最高裁判事就任から女性や性的マイノリティの権利など、社会的に立場の弱い人々の権利のために戦いました。
画像:https://adage.com/creativity/work/fearless-girl-dons-lace-collar-tribute-ruth-bader-ginsburg/2281746?utm_medium=social&utm_source=twitter&utm_term=adage&utm_content=6a0e7963-c67b-48c1-ad3b-0999bc71ace2より引用

彼女はニューヨーク市のブルックリン区出身です。

彼女の功績を称え、そしてその死を追悼するため、全米各地で様々な追悼セレモニーが開催されましたが、ブルックリン区にある彼女の母校にも献花やメッセージが寄せられ、マンハッタンのウォールストリートにある、「The Fearless Girl statue(恐れを知らない少女像)」にはギンズバーグ判事のトレードマークであったレースの襟が飾られました。


この「The Fearless Girl statue(恐れを知らない少女像)」は、ウォールストリート街でも観光名所になっており、もともとは彼女の像の目の前にある「The Charging Bull statue(突進する雄牛像)」がニューヨーク証券取引所の前に1989年に設置され、2ブロック先の現場所に移設されたものでした。その後、2017年3月8日に国際女性デーを祝い、Kristen Visbal氏によって制作されたものです


ギンズバーグ判事の逝去により、全9名の最高裁の判事のうち、中間派1名、保守派4名、リベラル3名という構成となりました。現トランプ大統領は、大統領選の前に保守派判事を送り込もうと後継の指名を急ぐとアナウンス、大統領選挙に加え、空席となった1名の最高裁判事の行方に揺らいでいます。(その後、ご存じの通り保守派のバレット氏を指名しました。)

第21回NYノマドでは、「Staycation(ステイケイション)が示唆する顧客提供価値」をテーマに、リゾート地で長いバカンスを過ごすというバケイションスタイルに代わる、自宅から自家用車で足を運べる近隣の別荘地や保養地などで過ごすステイケイションをご紹介させて頂きます。

Social Distancingが保たれる範囲で、非日常の時空間や経験をもたらしてくれることからバケイションレンタルサービスやステイケイション需要が高まる中、実際の滞在体験を通じて、その提供価値について検討してみたいと思います。

  • Part1. ニューヨークシティを去るニューヨーカーたち -高級別荘地ハンプトンへの移住
  • Part2.様相変わるバケイション&トリップの過ごし方
  • Part3. アメリカで利用できるAirbnbが提供するユニークな宿泊施設&体験
  • Part4. Airbnb体験 in アメリカ③、Airbnbが提供するユニーク宿泊体験の価値

Part1. ニューヨークシティを去るニューヨーカーたち 
-高級別荘地ハンプトンへの移住

ぽつぽつとリモートワークを解除し、一部の社員をオフィスに戻している企業も少しずつ増えてきました。


このところの話題で目にするのは、「ニューヨーカーのマンハッタン離れ」です。

UJP Newsの『NY商業不動産ウォッチング』によれば、

在宅勤務の浸透で多くのオフィスワーカーは通勤便利なアパートに住む必要がなくなり、特に20代後半から30代前半のミレニアル世代は結婚や家族を持つタイミングでマンハッタンより賃料が安く広いスペースが手に入り、なおかつライフスタイルをあまり変える必要のないニューヨーク市郊外へと移っている。

ミレニアム層に限らず市内を離れてロングアイランド、ニューヨーク市の北部に位置し、教育や住環境がよく、子育てに良いと言われる、日本人駐在員も多く居住するウェストチェスター、そして私が居住しているニュージャージー州北部などの郊外に家を購入する動きが大幅に増加しており6月の郊外における住宅販売を活発にした(https://ujpdb.com/archives/19928

図:https://www.manhattan-institute.org/survey-nyc-high-income-earners-future-work-and-quality-life?utm_source=press_release&utm_medium=email#figure4より引用

こちらの調査は、年収およそ$100,000(日本円でおよそ1000万円)以上のニューヨーカー782人に調査を行ったもので、44%の回答者がニューヨーク市を去ることを検討しており、その理由には生活コストの高さ(68%)、犯罪(47%)、そして非都市型ライフスタイルへの希求(46%)が上位に挙げられています。


リモートワークにより、オフィスから人が去り、人や情報が活発に行き交うことでネットワークやイノベーションの密度とともに利便性をもたらしていたニューヨークですが、コロナウィルスによるパンデミックでレストランなどのサービス業へのアクセスが減り、生活の質が下がっていること、そして高まる犯罪率がニューヨーク市の魅力をかなりの程度、低減させていることが伺えます。

 

リモートワークがしばらく継続すると予測される中、都市部のオフィスに通勤するための都市型ライフスタイルの利便性を十分に享受できなくなり、同じ家賃でより広く、自然に囲まれ住環境の良い郊外の一軒家に移住する人が、ミレニアル世代を中心に増えているといえるでしょう。

ちょうど、アメリカでは9月が新年度の開始とあり、このタイミングに合わせ、今年の夏に移住をした人が増えていることが想定されます。実際、娘が通う幼稚園もニュージャージー州にあり、マンハッタン近郊に位置しますが、昨年度まで2クラスのみだったのですが、今年はなんと3クラスに増設され、現在はウェイティング状態になっているようで、移住のトレンドとも関係があるのかもしれません。


ニューヨーカーの移住候補先として人気が高まっているのが、もともとセレブリティや富裕層のニューヨーカーたちの避暑地であり人気の超高級別荘地であるハンプトン(The Hamptons)です。

ハンプトンはニューヨーク市内から車で2時間ほど。マンハッタンから東に位置する島ロングアイランドにあります。

ハンプトンの中でも有名なのはイースト・ハンプトン、サウザンプトン、モントークなどで、これらの地域に別荘を持つことがある種のステイタスといいます。

画像:https://www.netflix.com/title/81108694よりスクリーンショット画像を引用

例えば、イースト・ハンプトンにはポールマッカートニーの別荘があります。

ニューヨークの富裕層やセレブリティたちは夏になるとハンプトンに集い、ビーチやパーティなどを楽しむことが定番で、中には私有の空港を持ち、小型ジェットを飛ばして別荘を訪れたりする人も。

Netflixでもハンプトンの大豪邸や豪華な別荘などの超高級物件を扱う不動産企業とその社員たちの仕事や社交・交友関係、私生活や金銭生活を取り上げたリアリティーショーの"MILLION DOLLAR BEACH HOUSE"が現在公開されています


この番組では実際に取引されている物件が登場しますが、例えば、7000スクエアフィート(およそ650平米)、8部屋ある物件は約700万ドル(日本円でおよそ7億4000万円)といった具合です。

私も一度、冬にモントークを訪れた際に、イースト・ハンプトンに立ち寄りましたが、高級ブティックやセンスの良いショップなどが立ち並んでいるものの、冬は多くの店舗が休業し、ややひっそりとした街の様子に、ここは夏限定の街であることを実感した記憶がありました。


そしてコロナウィルスによるパンデミックは、夏の街、ハンプトンを通年の生活拠点へと変貌させつつあるといいます。


このニューヨーカーがあこがれるこの別荘地にマンハッタンへの通勤がなくなった富裕層の移住が増えており、不動産物件閲覧数が72%増加、高級住宅の不動産価格も、前年同月と比べて8.2%上昇昨年8月と比較して、ハンプトンの戸建て住宅の新規契約数が2倍になった、といったニュースが今夏飛び交っていました。


そしてそれとは逆に、マンハッタンの不動産市場は縮小傾向で、コンドミニアム(日本の分譲マンションに相当)の契約は34%減、戸建て住宅の契約は11%減少、マンハッタンの街はリモートワークに伴い、空になっているオフィスと、ニューヨーク市を脱出したことにより空室となった不動産物件でだいぶ様変わりしているというのは事実のようです。


"通勤時間"がいかにニューヨーカーたちの生活やライフスタイル、そしてニューヨークのエコシステムに大きな影響を及ぼしていたかを実感します。

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Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。