NYノマド 第22回 トレンドとしてのサスティナビリティから生活に埋め込まれたサスティナビリティへ  Part1

20.11.09 02:56 PM By s.budo

Part1. まったなしの"サスティナビリティ"、行動する市民、個人によるエンパワーメント 

​NYプラスチック製レジ袋の使用禁止の開始と、NJ紙袋の買い物袋の利用禁止法案が可決

画像:https://www.nytimes.com/より引用

2019年4月に成立し、今年3月から施行される予定でしたが、プラスチック製レジ袋の製造業者が訴訟を起こしていたことや、コロナ禍でエコバッグの利用が衛生面から懸念されていたことなどを受け、施行が延期されていたという経緯がありました。しかしながら、10月からの施行を受け、州内のスーパーなどの店舗では使い捨てプラスチック製レジ袋が使用禁止(処方薬を入れる袋や生鮮食品用の袋などは除外)となり、紙袋のレジ袋は1枚につき、市や群などの地方自治体が5セントを徴収することができるようになります。

徴収したお金は地方自治体および州の環境保護基金に充当されます。


同様に、私が住む、ニューヨークのお隣、ニュージャージー州では使い捨ての紙袋の使用をスーパーやレストランで禁止する法案が9月に可決されました。

これは使い捨てのプラスチックおよび紙袋だけでなく、レストランからのデリバリーに使用されていた容器などが対象となっており、アメリカの中でも最も厳格な法案だといいます。

この法律は18か月後に施行される予定で、施行後はリサイクルされた再生可能素材などで作られたバッグなどの利用が求められます。


プラスチック製の袋や容器だけでなく、紙袋も対象になることは、流通小売りやレストラン業界のエコシステムは大きな変革を求められます。そしてそれは業界の地殻変動とともに、新たなイノベーションが生まれ、サスティナビリティの在り方に一石を投じるものになるのではないでしょうか。


アメリカではこのように、法律主導で新たな変化が起きる、起こすことが日本と比較して多いように感じます。そして、"Sustainability"というキーワードは、ビジネスはもちろんのこと、日常生活や生活者の意識にも欠かせない要素になってきているように思います。


そこで、今回のコラムでは、ニューヨークを中心に、主に"Sustainability"というキーワードでどのようなビジネスやサービス、プロダクトが展開されているのかをご紹介したいと思います。

行動する市民、個人によるエンパワーメント -元ニューヨーク大学学生のごみゼロ生活チャレンジ

そんな中、たまたま、英語学習のために入っているコミュニティで、イランに住む大学生とオンラインで会話をする機会がありました。

彼はぜひこの動画をテーマにディスカッションをしたいとメッセージをくれたのです。

画像:https://www.youtube.com/watch?v=pF72px2R3Hg&feature=youtu.beよりスクリーンショット画像を引用 NYU学生のTED Talk


その動画は、当時ニューヨーク大学での学生だったLauren Singerさんによる"Why I live a zero waste life(私がゴミゼロ生活をしている理由)"というタイトルのTEDトーク(TEDxTeen)でした。


お時間と興味がある方はぜひ動画を直接ご覧いただきたいと思いますが、動画自体に日本語翻訳などがないため、参考までにウェブ検索で見つけた個人の方の和訳された内容を紹介するウェブページのリンクをご案内させていただきます。

さて、クイズです。彼女が手にしている瓶の中には何が入っていると思いますか?

ヒントは動画の英語字幕にあります。


そして、正解は、、、

ー 過去3年間に彼女が出した全てのゴミ(TEDトーク時)

です。

この瓶のサイズは16 oz、約470ミリリットルの容量です。
3年間で彼女が出したごみはたったこれだけ。

彼女がこのゴミゼロ生活をするに至ったきっかけは、ニューヨーク大学で環境保護について学んでいたクラスで、いつも昼食にプラスチック製のフォークを使ってはゴミ箱に捨てるクラスメートに腹を立てる日々を続けていたある日のこと。自宅の冷蔵庫を何気なく開けたとき、冷蔵庫の中に並べられたプラスチック製容器に入った食品の数々を見て、衝撃を受けました。
自分自身も腹を立てていた友人と同じだと気づいたからです。
そして、自分のライフスタイルを根本的に見直すことを決心したそうです。
そしてそれから彼女は自分が日々使用しているあらゆるものを見直し、買い物はもちろんマイバッグで、なるべくファーマーズマーケットなどで購入し、プラスチック容器に入れられた日用品を使わないため、歯磨き粉からデオドラントまで自作するようになったといいます。そしてその結果、3年間で16 ozのほぼ、ゴミゼロ生活を達成し、その後、自身の経験や考えを綴ったブログを展開、そこで彼女が自作している日用品や化粧品を買いたいという問い合わせが多くあったため、The Simply Co.というスタートアップを立ち上げ、パッケージフリー(包装なし)の商品など、ゴミゼロをコンセプトにした様々な商品の販売を展開しています。

さて、話を元に戻しますと、イラク人の学生との会話で彼は、「ゴミゼロ生活なんて無理だよ」ではなく、本気で環境保護のためにほぼゴミゼロ生活ができることを実際に行動して証明して見せたLauren Singerさんがとてもカッコいいといいます。

彼がこの動画を選んでくれたという背景には、彼自身の個人的な価値観・嗜好として、具体的に地に足の着いたサスティナブルな生活を送るというライフスタイルや価値観への関心が高いという点があるとは思います。しかしながら、私は彼との会話の時間に、若者世代のサスティナビリティの捉え方、サスティナブルなライフスタイルへの考え方の一端を垣間見た気がしました。


サスティナビリティについては、総論は大方の人が賛成だと思います。

でも、実際に自分が何かサスティナブルな行動を具体的にしてみようとなると、なぜか足が止まってしまう、アクションがなかなかできないという現状もあるのではないでしょうか?


次回はご紹介するサスティナビリティに関連したビジネスやサービスから、環境行動やサスティナブルな行動につながるアクションを生み出すヒントや、若い世代のサスティナビリティに対する意識や行動を探ってみたいと思います。

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Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。

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