Part2.サスティナブルなライフスタイルを提案するメディア&ストア
The Simply Co.
The Simply Co.のウェブサイトは主にサスティナブルなライフスタイルを送るためのティップスやアドバイス、彼女自身の考えなどをウェブメディアで発信するとともに、サスティナブルな行動やライフスタイルの実践を後押しする商品を紹介する"PACKAGE FREE"というECサイトの2つで構成されています。

かぼちゃのアップサイクル提案記事には、かぼちゃの皮を使ったパンプキンチップスなどかぼちゃを使ったレシピ、かぼちゃの種周辺の繊維を使って他の野菜の芯や皮と一緒に野菜出汁スープを作る、かぼちゃ料理をドッグフードに活用して栄養価の高い餌を与えること、などが書かれています。
なかなか秀逸なのは、このサスティナブルなライフスタイルのアドバイスが具体的なアクションをすぐに行えるように、アドバイスが具体的になっていることに加え、その行動に関連した同社の商品が紹介されています。

購買させるための動線としてだけでなく、オンラインショッピングも、"トートバッグに入れる"というメタファーを使うことで、マイバッグを持って買い物に行っているかのような気持ちになり、感情的な価値を間接的に醸成する設計になっていますね。
こうしたウェブデザインは、何から始めたら良いか分からない状態であった人も、今旬のイベントや出来事に関連したサスティナブルな行動のしかたを知ることができます。そして行動への関心が湧いたところで、行動を支援する、もしくは行動に必要、かつ、サスティナブルなツールやモノを買うことから、その行動を始めるという動線のデザインになっています。
モノもサスティナブルなアクションのトリガーの一つとして捉えられている点が興味深いですね。
モノを買うこと、イコール、ただの"消費"ではなく、サスティナブルな行動の第一歩と置き換えていると解釈できます。
同社のECサイト、"PACKAGE FREE"では、ゴミゼロ生活、サスティナブルなライフスタイルを送ることを支援する幅広い商品が販売されています。
洗濯用洗剤などの清掃用品、キッチングッズ、シャンプーなどのヘアケア、化粧品、子ども・ベビー用ケア、ペットグッズ、グローサリー(買い物)用品、女性用サニタリー商品の取り扱いまであります。
こうしたラインナップは、自分自身が生活に必要なものをDIYしたLaurenさんならではですね。商品ラインナップだけでなく、個別の商品やその買い方にもサスティナビリティが埋め込まれています。
そして最後にご紹介したいのが、このPACKAGE FREEショップの会員制リワード(ポイント)プログラムです。
17種類ものユニークなポイントをゲットできる方法が設定されており、1000ポイントで10ドルのディスカウントを受け取ることができます。17種類のリワード行動のうち、7つがソーシャルメディアに関するもので、InstagramやFacebookの同社のアカウントをフォローすることなどが含まれています。
日々の生活に欠かせないソーシャルメディアを通じて、顧客との関係性を構築し、タッチポイントを継続する”しかけ”がデザインされていますね。同社のソーシャルメディアをフォローした人には、サスティナビリティに関する同社からの情報が届くことによって、毎日の生活動線内にサスティナビリティへ意識を向ける機会を持つことにもなります。
同社のプロモーションとともに、顧客がダイエットのように毎日継続することがなかなか難しい環境行動、サスティナブルなライフスタイルの習慣を作るための戦略でもあるといえるでしょう。
モーターバイクをよりサスティナブルに生まれ変わらせる
-Tarformのビーガン素材のEバイク
続いてご紹介するのは、NY初のスタートアップであり、電動バイクメーカーのTarformです。

アメリカにおけるバイクで存在感があるのはやはり、ハーレーダビッドソンですが、アメリカのバイク市場では、年々若者のバイク離れが加速しており、ハーレーダビッドソンライダーの平均年齢は50歳、主にベビーブーマー世代や高齢のジェネレーションX世代が中心になっているといいます。
こうした市場環境下で、全く新しい、サスティナブルなモーターサイクル文化を作るためにTarform社は2016年に創業されました。
創業者であり、CEOのTaras Kravtchouk氏は、バイクが有害な素材で作られ、さらにバイク文化が廃れゆくものであると認識されていることに対し、これからのバイクは職人の技や熟練が保存され、永続するものであるべきだという哲学の下、全く新しいコンセプトのサスティナブルなバイクを作りました。
それが、プラスチック素材の代わりに繊維素材を使ったビーガンのEバイク"Luna"です。

例えば、塗装顔料には藻類と鉄成分の素材を、パネルにはアマニ素材を、シートにはパイナップル繊維のレザーを使用しています。
動力源となる電池は技術進化とともにアップグレードできるようにデザインされ、バイクを構成するパーツやモジュールも同様に交換やアップデートが可能といいます。
技術面でも、後部に設置されたカメラでブラインドスポット検知し、バイクのシートを振動させて知らせる機能や、速度表示パネルはBluetooth機能を搭載、バッテリーは家庭用のコンセントを利用しておよそ50分で80%をチャージできるそうです。
Lunaは現在予約受付中で、価格は$24,000(日本円でおよそ250万円)から、2021年から販売予定です。
普通乗用車が買えてしまう価格帯ですが、テクノロジーとエコロジーを両立させてつくられたこのサステナブルなEバイク、捨てたり、廃棄することなく一生乗り続けることができるというサステナブルなコンセプトは環境やサステナビリティに強い関心を持つ若者世代の新たな需要やライフスタイルを生み出すものになるかもしれません。
次回は若手女性起業家が挑戦する100パーセントゴミなしのショッピング体験をご紹介します。