NYノマド 第22回 トレンドとしてのサスティナビリティから生活に埋め込まれたサスティナビリティへ Part3

20.11.24 12:09 PM By s.budo

Part3.若手女性起業家が挑戦する100パーセントゴミなしのショッピング体験
The Wally Shop

画像:https://thewallyshop.co/よりスクリーンショット画像を引用
The Wally Shopは、ニューヨーク発のサスティナブルなショッピングサービス、ゴミゼロ(Zero Waste)の食料品および日用品デリバリーのスタートアップです。


オンラインで食料品や日用品を注文すると、同店専用の瓶や再生プラスチックの容器に注文した商品を詰め、自宅まで配送して届けてくれるサービスです。
創業当初はニューヨーク市内をバイク便で配達していたようですが、現在はアメリカ全土でこのサービスを利用することができます。

使い終わった容器は指定された配送業者に引き渡すだけ。同社が容器を洗浄し、再利用されます。
画像:https://thewallyshop.co/より引用

創業者のTamara Limさんは20代、前職でアマゾンに勤務し、パッケージングや配送業務に従事していた経験がこのゼロウェイストの食料・日用デリバリーサービスを生み出したと言います。


アマゾンが提供する利便性は消費者にとって大きな価値を提供しているものの、1回だけ利用され、毎回捨てられるパッケージや梱包材はサスティナビリティにネガティブな影響を与えています。

その在りかたを変え、サスティナブルなショッピングの選択肢を提供し、共にみんなで世界を変えていきたいと始めたビジネスがThe Wally Shopです。


全てが再利用可能なパッケージで、100パーセントゴミなしのショッピング体験を提供するこのサービスで、世界のゴミを減らし、きれいにすることが同社のミッションです。

画像:https://thewallyshop.co/main/386452よりスクリーンショット画像を引用

取扱商品は主に

生鮮食品ではない長期保存可能な食品と、

・洗剤などの日用品、
・シャンプーといったパーソナルケア製品

が中心です。


商品は農場やローカルストアから仕入れたものや業務用(バルク)商品を小口売りしています。

そして、顧客から取扱商品のリクエストも受付け、顧客が好きなブランドや商品の品揃えを増やしていくそうです。

Tamara Limさんはあるインタビュー

"Generally, consumers today, especially millennials, really care about our environment and sustainability. Although the really gung-ho who live zero-waste lives are indeed a small percentage, we believe that the majority of people really do care about sustainability, especially if it’s convenient for them.”


「一般的に、今日の消費者、特にミレニアル世代は、私たちの環境とサスティナビリティを非常に気にかけています。ゼロウェイスト(ゴミを出さない)生活を献身的にしている人はもちろん少数ですが、多くの人はサスティナビリティを大いに気にかけていると思います。特にそれが便利であればなおさらです。」

と語っています。

サスティナビリティと利便性の価値を同時に両立させるサービスを、これがThe Wally Shopの顧客提供価値の根底といえるでしょう。

若者世代に埋め込まれた、サスティナビリティ意識と行動

サスティナビリティを生活に、もっと身近に、もっと毎日行動するにはどうしたらよいのか。

今回ご紹介した3社はこうした問いに答えるサービス、商品を展開し、私たちに新しいサスティナブルな消費の選択肢を与えてくれているとともに、私たちの消費行動の現状に問いを投げかけてくれているように思います。


Lauren SingerさんTamara Limさんに代表されるミレニアル世代は、気候変動や環境保護に対する関心が他の世代と比較して高く、コロナウィルスによるパンデミックが起きた後も、環境保護への関心の高さは公衆衛生や健康というトピックより高いという調査結果があります


同調査では、ミレニアル世代の約半数が徒歩や自転車で移動し、二酸化炭素排出を減らしたり、ファストファッションの購買をやめたりしており、さらに3分の2の回答者が使い捨てプラスチックの利用を減らす手段を取っていると回答しています。
このような調査結果や、すでにアクションをしているLauren SingerさんTamara Limさんの行動を知り、学ぶほど、サスティナビリティは単なるトレンドやバズワードではなく、すでに前提として埋め込まれた価値観、ライフスタイルになりつつあることを感じます。

そしてミレニアル世代が展開しているサスティナブルなビジネスや前述の調査結果からみえてくるのは、”まず動くこと、できることから始めよ”、すなわち、価値観やマインドセットを変えてから行動するではなく、行動から始めているという点です。


Lauren SingerさんのThe Simply Co.のウェブサイトにはこう書いてあります。

 "Why is The Simply Co. different from any other company? Because we question everything. We are not just going to make a “less bad” product with fewer toxic chemicals or kind of sustainable packaging, we are going to make products that are truly good."

「なぜThe Simply Co.は他の企業とは異なるのでしょうか。なぜなら、私たちは全てについて問いかけているからです。私たちは単に"少し悪い"商品を、有害な化学物質が少なく、サスティナブルなパッケージで、提供するのではなく、真によいものを作ろうとしているのです。」

このサービスや商品は、

出来る限り安価なコストで作り、たくさん売れれば、それでいいのか。

消費者に使い捨てのパッケージや商品を購買させ続けることは、私たちを取り巻く様々なステークホルダーの現状や未来にとって、どんな影響をもたらすのか。

私たちは本当にこの商品を、サービスを心からよいものだと思っているのだろうか。

常に、問い続けること。


今回ご紹介した企業は恐らく、このようなサスティナビリティの視座を持ち、問いに一つ一つ、丁寧に向き合い続けることで、消費者だけでなく、ステークホルダーにとって、自社にとって、地球にとって、自分自身にとって、よいものを提供しようと努力していると思うのです。

これからの若い世代の生活者や起業家たちは、サスティナビリティのレンズ(眼鏡)をデフォルトで持っています。


今こそ、そのレンズを私たちも掛け直すときです。


サスティナビリティの視座とサスティナビリティが包含する様々なトレードオフや困難を解決する価値を提供し、未来にわたって選ばれ続ける関係性を育みたいですね。

そして今こそ、ミレニアル世代に見習って、”行動から始める”ときではないでしょうか。


それではみなさん、また次回のコラムでお会いしましょう。

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Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。

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