子どもも真剣に投票?悲喜こもごもの大統領選挙

アメリカに来て、現地で初めて大統領選を目の当たりにした私は、この4年に一度の選挙の様子が、同じく4年に一度開催されるスポーツの祭典、オリンピックにも似たような祭事性とともに、自分たちの国のリーダーは自分たちで選ぶという国民の強い関心とオーナーシップを実感しました。

さて、トランプ政権による不正選挙提訴問題が続き、トランプ氏の支持者とバイデン氏の支持者間で選挙や投票カウントに対する評価がかなり割れているものの、来年1月の政権交代に向けての準備が始まっています。
コロナウィルスの第二波が猛威をふるうアメリカ国内の雲行きはなかなか晴れません。
ニューヨーク市では、陽性率が増加の一途をたどっていることと11月26日のサンクスギビングのホリデーシーズンを迎えることを考慮し、11月19日から一時的に市内の全ての公立学校の対面授業が閉鎖となりました。アメリカ人が最も大切にするホリデーイベントの一つであるサンクスギビング(感謝祭)は、日本のお盆やお正月のように、家族や親せきで集う大切な機会です。
しかしながら、アメリカ疾病予防管理センター (CDC)からは複数の世帯で集うことや旅行(飛行機だけでなく、自動車などの移動も含む)を避けるように勧告が出ています。
ニューヨークでも二度目のロックダウンも時間の問題ともささやかれ、落ち着かない日々が続いています。
第23回NYノマドでは、「ニューヨーク州のピンク税廃止にみる"ソーシャルインクルージョン"のトレンドと企業の実践」をテーマに、社会動向、差別に対する問題提起、様々な企業活動をご紹介させて頂きます。そして、人種や民族構成、文化、経済、社会状況を超えた本来的な価値観を考察してみたいと思います。
- Part1. 女性が払わされているエクストラコストを是正せよ -ニューヨーク州で"Pink Tax(ピンク税)"を禁じる法律が施行
- Part2. AIなどのテクノロジーが助長するジェンダー差別、マイノリティへの偏見
- Part3. 製品広告にみる企業のダイバーシティ、ソーシャルインクルージョンのメッセージ
- Part4. 一人ひとりに、コミュニティに共鳴する企業価値を訴求
Part1.女性が払わされているエクストラコストを是正せよ
ニューヨーク州で"Pink Tax(ピンク税)"を禁じる法律が施行

ピンク税とは「女性向けの製品サービスで、男性の同様の製品サービスと比較して価格が高く販売されていること」を指します。
例えば、シャンプーやカミソリ、理美容院、ドライクリーニング、洋服などのアパレルといった製品サービスでは、女性向けと男性向けのものを比較すると、女性向けの製品サービスが往々にして高い価格で販売されていることが多いのではないでしょうか。
アメリカでは女性のサニタリー製品に対して、消費税を課すことを免除する、もしくは税金を廃止する法律がミネソタ州、イリノイ州、フロリダ州、メリーランド州、ニュージャージー州、ペンシルベニア州、ニューヨーク州、コネチカット州、マサチューセッツ州、ネバダ州の10州で施行されていますが、これもピンク税の一つとして考えられています。
今回の法律では、ニューヨーク州でコンシューマー向け製品サービスの販売提供を行う場合、ジェンダー間で価格差を設定することが禁止されることとなりました。州のピンク税廃止に関する情報を掲載したウェブサイトには具体的に、この法律に違反する例が挙げられています。
例1)子ども向けのスイミングプールで同じブランド、同じサイズで提供されている製品で、ピンクが89.99ドルで、ブルーが69.99ドルで提供されていた場合
例2)ドライクリーニングで女性用スーツジャケットが12ドル、男性用スーツジャケットが8ドルの場合
- 製品製造やサービス提供にかかった時間
- 製品製造やサービス提供における労力(困難さ)
- 製品製造やサービス提供において発生した費用
- 製品製造やサービス提供に供された労働力
- 製品製造やサービス提供に使われた素材
- ジェンダーニュートラル(ジェンダーに中立)な理由での製品やサービスのコスト増加
"ニューヨークは女性の権利を前進させることにおいて、この国を牽引している。そしてこれは(この法案は)障壁を打ち破り、女性の公平な活躍の場を推進するニューヨークのジャーニーにおいて、画期的なマイルストーンとなる最新の一歩となるだろう。ピンク税を廃止することで、女性や女の子が有害で不公平な価格差別を被ることがなくなり、また、このような卑劣な慣習に終止符を打つことができなかった全てのビジネスに対して責任を課すこととなる"
この言葉から、ここまでしなければ、ピンク税がもたらしていた女性に対する社会的、経済的損失を容認しつつけることになるというかなり力強い意志を感じます。