NYノマド 第23回 ニューヨーク州のピンク税廃止にみる"ソーシャルインクルージョン"のトレンドと企業の実践 Part.3

20.12.14 01:38 PM By s.budo

Part3.製品広告にみる企業のダイバーシティ、ソーシャルインクルージョンのメッセージ

11月第4木曜日のサンクスギビングデー(感謝祭)の前後から、アメリカではブラックフライデーやサイバーマンデーといった一年で最もショッピングのセールが行われるシーズンに突入します。ホリデーシーズンのショッピング需要の掘り起こしにテレビやソーシャルメディア、ダイレクトメールなどの広告が一気に投入されます。


セール情報がメインになることが多い広告コンテンツですが、ここ最近、以前に増して企業が提供する価値とダイバーシティやソーシャルインクルージョンのメッセージを重ねた広告を目にすることが増えたように感じます。
https://mondelez.promo.eprize.com/oreopride/よりスクリーンショット画像を引用

例えばこちら、日本でも販売されているナビスコが製造する定番のオレオクッキーがハッシュタグ"#OREO Proud Parent"で展開しているLGBTQコミュニティを支援するキャンペーン広告と商品です。

こちらはホリデー向けの広告ではなく、アメリカで最初に設立された最も大きなLGBTQの人やその両親、家族を支援する団体であるPFLAGとコラボレーションしたもので、10月11日のカミングアウトデーにリリースされました。

レインボーカラーのクリームに彩られたオレオクッキーとレズビアンのカップルの帰省をテーマにしたショートストーリー型の動画広告です。


レインボーオレオと動画がこちらです。

レズビアンの娘が初めてパートナーを連れて実家を訪れる場面を描いたもので、LGBTQの人々が直面する、家族からの受容というチャレンジと、家族からの愛をテーマにしたショートストーリーです。


"A loving world, starts with a loving home(愛あふれる世界は、愛溢れる家からはじまる)."


というメッセージとともに、オレオが100年以上、家族を一つにするしてきたこと、そしてこれからも両親、家族、そして仲間たちが声を上げ、公的な支援に向けてエンパワーしていくと宣言しています。

他にもナビスコはRITZ(リッツ)のクラッカーのホリデーシーズンのキャンペーン広告として、

"a taste of welcome(歓迎の味)"

というタイトルの広告キャンペーンを展開しています。

黒人のゲイとパートナー、施設に暮らす女の子、そしてコロナ禍で家族の直接の面会が出来ない状況の老人ホームで過ごす年老いた母親の3人の主人公が過ごすホリデーシーズンとそのコミュニティや家族とのつながり、愛を描き、"Where There’s Love, There’s Family(愛があるところに、家族がいる)"というメッセージで結んでいます。
ホリデーシーズンは家族や友人、コミュニティで集まり、過ごし、愛や絆を確認したり、育む時間です。この団らんの時間や家族間の愛を橋渡しする存在としてのリッツクラッカーとその価値を表現した広告になっています。

次にご紹介するのは日本でもビジネスを展開し、DIYマーケットプレイスを展開するEtsyです。

Etsyは2005年創業、ニューヨーク市ブルックリン区をベースにする企業で、コロナ禍のオンラインショッピング需要の増加の追い風を受ける企業の一つです。

画像:shorturl.at/ozAOQよりスクリーンショット画像を引用

今回Etsyは、一人ひとりの個性とカスタムメイドの価値を重ね合わせたホリデー広告キャンペーン、"Gift Like You Mean It(心からの贈り物)"の動画シリーズを展開しています。

YouTubeで展開されているこちらの動画広告は、ハッシュタグ#giftlikeyoumeanitで、3人の主人公の3種類の贈り物のストーリーと、贈り物の"モノ"を紹介した4種類の動画が公開されています(https://www.youtube.com/playlist?list=PLwu9gSmfQdCJ7U9b93uf_hkQ4xjMxXWIU)。


例えば、"New Guy"というタイトルの動画では、ゲイの黒人男性が初めてパートナーの自宅を訪れ、パートナーの家族と会う場面が描かれ、こちらもオレオクッキーと同様、LGBTQの人々が他者から受容されることに関わる葛藤や喜びが表現されています。

そしてもう一つ紹介したいのがアメリカで生活する日本人の"Shiori(しおりちゃん)"が主人公のバージョンです。

日本語の名前は英語で発音することが難しいものが多くあり、なかなか覚えてもらいにくかったり、アメリカ人が綴りをかけなかったりします。このような場面に私もたびたび直面します。

このストーリーでは、ティーンのしおりちゃんが、アメリカのコミュニティの中で、自分の名前が見つからない、間違って書かれる、覚えてもらえないという出来事にあい、自分のアイデンティティと葛藤する様子とともに、パーソナライズされた母親からのクリスマスプレゼントがアイデンティティのよりよい受容の機会をもたらしている場面を描いています。

いずれも、パーソナライズされた手作りのギフトが、一人ひとりの個性に寄り添い、鼓舞し、エンパワーする価値を持っていることをアピールしています。


ちなみに、知り合いの黒人男性に、New Guyバージョンの動画を観てもらい、感想を聞いてみたのですが、ソーシャルインクルージョンのメッセージへのポジティブな評価をするとともに、サービスや企業名を知ってもらうための広告としては弱いかもしれないという辛口な批評ももらいました。


Etsyでは、こうした動画以外にも、"Gifts from Black-owned shops(黒人オーナーのショップからの贈り物)"と名付けた特集ページを展開し、黒人の人々やコミュニティを支援する機会を提供しています。


Etsyウェブサイトの企業紹介ページでは、「より人間的なビジネスのあり方を」と大きく書かれ、ここにしかないハンドメイドの作品やビンテージの掘り出し物など、個性が光る特別な商品であふれる空間を提供し、機械化が進む世の中でも、人間の温かみや想像力を受け渡し、人とのつながりをビジネスの核心に残すことがEtsyの使命であると宣言しています

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Aya Kubosumi ノマドマーケター


コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。r. your website by double clicking on a text box on your website. Alternatively, when you select a text box.

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