Part.4 一人ひとりに、コミュニティに共鳴する企業価値を訴求
マイノリティを支援する活動を企業が展開する事例をいくつかご紹介しましたが、私自身が印象的だったのは、企業が製品・サービスを通じて提供している価値と共鳴するかたちでマイノリティ支援のメッセージと活動を展開している点です。
ご紹介した動画広告では、企業が自らの政治的、社会的、経済的、環境的な問題に対する立場を表明したアドボカシーの広告と製品やサービスの広告が一体となっています。
マイノリティ支援がSDGsやCSRとしてのみ行われるのではなく、自社の製品・サービス開発と提供、マーケティング、ブランディング、広告、ビジネス展開などの企業活動内に組み込まれ、展開されています。
そしてそこには、マイノリティの人々を支援の対象や消費者としてのみ据えるのではなく、コミュニティのパートナーとして、敬意と公正さをもった関係性を生み出そうとしている姿勢がみてとれます。

BLM(Black Lives Matter)運動の高まり、反人種差別への声を反映し、昨今、企業がこうした社会的擁護活動やイニシアチブに参画することが増えていますが、企業のアドボカシーコミュニケーションのコンサルティングを提供しているRALLY社のLatia Curry氏はHarverd Business Reviewに掲載した"How Brands Can Follow Through on the Values They’re Selling"という記事で、同社のコンサルティング経験をもとに開発した、企業ブランドのアドボカシー活動の評価マップ("The Brand Advocacy Map")を紹介しています。
ソーシャルインクルージョン、マイノリティ支援は一日にしてならず 一人ひとりの声に耳を傾ける

それは、「一人ひとりの声に耳を傾けることからはじめる」ということです。

Etsyの動画広告のしおりちゃんは日本人です。
日本の販売者はEtsyにとって主要顧客ではないといえるでしょう。それでもこの日本人のしおりちゃんを主人公に据え、彼女の抱える、マイノリティとしてのアイデンティティの葛藤を取り上げることで、彼女の声に耳を傾け、尊重する姿勢と、自社が目指す一人ひとりの人間の個性が輝き、そのぬくもりを受け渡し合える世界の実現に近づくことができると考えたのではないでしょうか。
しおりちゃんの声は一人のマイノリティの声に過ぎず、マジョリティの声ではないという考えはそこにはありません。一人ひとりの声こそがコミュニティを構成しているという考え方です。