NYノマド 第24回 2021年の明るい未来を牽引する30歳未満の若者たち Part4

21.01.25 05:32 PM By s.budo

"アンダーウェア=セクシー"の呪縛から女性を解き放て

画像:https://www.forbes.com/profile/parade/?list=30under30-retail-ecommerce&sh=3d083112618eよりスクリーンショット画像を引用

Jack DeFuriaさん(23歳)
​Cami Téllezさん(23歳)

最後にご紹介するのは、ニューヨーク市ブルックリンに拠点を構えるアンダーウェアブランド"Parade"を率いる若き2人のファウンダー、Jack DeFuriaさんとCami Téllezさんです。


Téllezさんはコロンビアからの移民の娘として生まれました。10代のときに、米ランジェリーブランド大手のビクトリアズ・シークレットの露出の多い下着とありえないほど身体の細いモデルたちにゲンナリした気持ちを持ったことを忘れられず、楽しく、カラフルでサイズが豊富なセックスアピールではない下着の新たなオプションを提供するため、2018年にこのアンダーウェアブランドParadeを共同創業しました。
画像:https://yourparade.com/よりスクリーンショット画像を引用
このブランド立ち上げを思いついたのは彼女が米コロンビア大学で学ぶ学生だった若干17歳の時。
ブランドの投資元を必死に探しながらの学生生活を送り、Z世代向けの健康的で様々なセクシーの定義を楽しめるようなブランド立ち上げの準備を行っていたといいます。


現在までに同社は65万着の下着を販売し、2020年には1000万ドル(日本円でおよそ10.3億円)の売上に到達する予定、800万ドル(日本円でおよそ8.24億円)の投資をベンチャーキャピタルから獲得しています。

同社のウェブサイトには、Téllezさんの言葉で、同社のマニフェストのメッセージが綴られています。
私はショッピングモールに行って育ちました。そこでスーパーモデルたちが店舗の前で大々的に宣伝するのを横目にみて、これがセクシーであることなんだと考えながら。


長い間、アンダーウェアは私たちにピンク色の薄っぺらい外見を制限するだけのものでしたが、すでにこれは自己表現という海の一つの光でしかないことを私たちは知っています。


セクシーさは1次元ではなく、声であり、気持ちであり、誰もが持っているセクシーさを反映する鮮やかな鏡なのです。

あなたと一緒に、私たちはアメリカのアンダーウェアストーリーをフルスペクトラムの色に書き換えていくのです。


あなたがパレードを感じるとき、柔らかく、息がしやすく感じ、それはあなたの身体や環境にとってよいリサイクル素材です。


あなたが私たちに耳を傾けるとき、あなたが重要だと思うことをサポートするために私たちのプラットフォームやリソースを使い、私たちの利益の1%をPlanned Parenthood(アメリカの性的健康の問題や課題に取り組む非営利法人)に寄付します。


あなたが私たち(の商品)を目にする時、XSから3XLのサイズの人々を目にします。なぜなら私たちは、Paradeは私たちのコミュニティと同様に、ダイナミックで、自由に回転し、表現的だからです。



彼女が10代の時に直面した、押し付けられたセクシー観への息苦しさや偏見から女性を解放し、一人ひとりが心地よく、その人が持つセクシーさを発揮し、楽しめるようなアンダーウェアを届けたいという想いが詰まったメッセージですね。


マニフェストにもあるように、同社はアンダーウェア業界が無視してきたサステナビリティもブランドの中心に据え、とても柔らかく、85%以上がリサイクルされたプラスチックで同社の製品を製造し、有害な化学物質や皮膚や水などを汚染する素材は一切使っていません。さらに、100%コーンスターチからできた土にかえることのできるコンポスト可能なパッケージを採用しています。


性的な教育の啓蒙や普及にも力を入れ、マニフェストにあるPlanned Parenthoodsや、中絶など、一人ひとりの自律的な生殖の意思決定を尊重する活動を展開するYellowhammer Fundに寄付を行っています
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の記事を元に翻訳

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Z世代自身がZ世代のために立ち上げたこのブランド。女性や女性用の下着に押し付けられた既成概念や性的イメージをポジティブなものに書き換え、革新しようとする力強いメッセージは、多くのZ世代、女性やコミュニティを勇気づけ、支持を得ているようすが伺えます。

業界や既存の既成概念を軽やかにぶち壊せ!

Forbesによる"30 UNDER 30"の2021年にノミネートされた総勢600人の若者たちの中から、今回は起業家を中心に5人を取り上げてご紹介させていただきました。

5人というごく少ない人数ではありますが、この5人の活動や事業から垣間見える共通点について考えて、未来と今とを繋ぐヒントを探してみたいと思います。

初めにこの5人の事業や活動に共通しているのは、「既存業界や既成概念が抱える矛盾や課題に疑問を投げかけ、事業や活動を通じて刷新する」という点です。

Alex Le Rouxさん

ICON社のRouxさんは、3Dプリンターという技術に対して、そして建設業界が抱えるコストや工期の問題に疑問を投げかけ、生まれたのが3Dプリンターで安価な家を24時間で供給するという事業を興しました。

Jack DeFuriaさん(23歳) ​Cami Téllezさん(23歳)

アンダーウェアブランドPradeも、下着や女性に押し付けられた固定化したセクシーさに革命を起こそうと立ち上げられました。

所与の前提やリソース、業界の当たり前に対しての感度は、年齢を重ねるほど薄れてしまうように感じます。それに対し、フレッシュかつ感度高く対峙し、素直にそれらに問いかける姿勢を持つことは、未来のイノベーションを生み出す起点になっているのでしょう。

次にこの"当たり前への問いかけ"を重ね、「必要なリソースを使いこなし、同時に複数の課題を解決するソリューションを見出している」という点です。

Nabeel Alamgirさん

LunchboxのAlamgirさんは、ローカルで小規模の飲食店オーナーが、大手飲食店チェーンとの競争やパンデミックという過酷なビジネス環境の中でも、限定されたお金や時間、人のリソースで、効果的に顧客と継続した注文を獲得するための複数のデジタルソリューションをワンストップで提供しています。

Clementine Jacobyさん

RecidivizのJacobyさんも、同様に、州の刑務所や拘置所が抱える課題を顧客目線で捉え、テクノロジーに振り回されることなく、分析ツールやインフォグラフィックス、シミュレーションなどの様々なテクノロジーを組み合わせ、軽やかに解決するソリューションを提供しています。

プロフィットという営利目的に振り回されることなく、課題解決のためにむしろ、技術やお金も手名付けて使いこなしている印象を持ちます。そして、特定の顧客だけでなく、業界やステークホルダーが抱えるジレンマや複数の課題にも取り組んでいます。


顧客が、自分が良ければいい、ではなく、ポジティブかつ調和された、"三方よし"の世界を目指している点も非常に印象的です。

そして最後は、「リアルな原体験」です。

Nabeel Alamgirさん

LunchboxのAlamgirさんは自身が飲食店でのアルバイトや勤務経験でフロントからマーケティングまで様々な業務に従事し、飲食業界の中にどっぷりつかっていました。その時に観察し、感じた様々な違和感をもとに、飲食店オーナーを取り巻く環境や抱える課題を特定していったのではないかと推察します。

Jack DeFuriaさん(23歳) ​Cami Téllezさん(23歳)

ParadeのTéllezさんも、ティーンの時のショッピングモールに大々的に飾られたスーパーモデルの広告を見て感じた違和感が原体験となり、一つのセクシーさの定義ではなく、一人ひとりが持つセクシーさを表現できるようなアンダーウェアの存在を追求する結果、ブランドを立ち上げることとなりました。

既成概念や既存業界が抱えるジレンマをひらりと軽やかに乗り越えているように見えますが、その背景や根底には、自身の体験から感じたことや違和感と、愚直に、実直に向き合い続けているからこそ、課題解決を蝕んでいる固定概念を刷新し、新たなイノベーションや価値提供を目指した活動が可能になっていることを感じます。


感性や感度の高いアンテナ、テクノロジーなど、若者だからこその要素ももちろんありますが、リアルな原体験や違和感を軽視したり、放置したりすることなく、向き合い続けた結果、世界を変える存在になっていったのでしょう。


まあいいかと呑み込んだり、仕方ないからとあきらめてしまっていること、私にもたくさんあり、ドキッとします。


2021年、まだまだ物理的に自由に行動したり、コミュニケーションすることは難しいかもしれませんが、少しでもできる体験や経験から、自分の違和感を掘り起こし、何か一つでも向き合っていけることを見つけることから始めたいと思います。
若者たちからもらった刺激や学びを、しまい込むことなく、頭の片隅に置きながら。

それではみなさん、また次回のコラムでお会いしましょう!
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Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。

s.budo