NYノマド 第25回 コロナ禍の追い風を受けるコネクティッド・ホームフィットネス市場 Part1

21.02.09 10:11 AM By s.budo

世界を牽引する北米フィットネス市場

バイデン氏ホワイトハウスへお引越し 
日課のエクササイズマシンが問題に?!

就任式の前日、ニューヨークタイムズ紙に目を通していたところ、こんな記事が目に飛び込んできました。



バイデン氏が、アメリカのエクササイズ機器大手のペロトン社のバイクでエクササイズをしており、それをホワイトハウスへの引っ越しで持ち込むことが、ホワイトハウスでサイバーセキュリティ上の問題になっているというのです。
画像:https://www.onepeloton.com/よりスクリーンショット画像を引用

このペロトン社は2012年に設立され、スポーツジム中心に展開されていたバイクやトレッドミル(ランニングマシーン)でのエクササイズをもっと家庭の身近な存在にするため、家庭用のエクササイズ機器を展開しています。

このマシン、家庭用といえども、およそ2500ドル(日本円で26万円弱)するのですが、ヒュー・ジャックマンやデビッド・ベッカムといったセレブリティたちも利用する人気のエクササイズ機器で、コロナ禍でスポーツジムの営業が制限される中、家庭でのエクササイズ需要が増加、その恩恵を享受している企業の一つです。


同社のエクササイズ機器には付属のタブレットでエクササイズのレッスンを受けることができたり、ユーザー間でコミュニケーションができる機能やコミュニティをオンラインで提供しています。


ユーザーは“leader board name"と呼ばれるユーザー名を設定し、ワークアウトの結果を共有したり、コミュニケーションすることができるのですが、この機能に問題があるというのです。

実際、ヒュー・ジャックマンは自身のSNSでワークアウトの結果の画面をポストしたのですが、そこにこの“leader board name"が映り込んでいたことで、意図せず、彼の“leader board name"をSNSのフォロワーが知ることとなってしまいました。その結果、ペロトンユーザーたちがこぞって彼のアカウントをフォロー、彼は結局ユーザー名を変更したようです


78歳のバイデン氏、このペロトンバイクを使って毎朝エクササイズを日課として行っているようなのですが、このマシンのタブレットにはビルトインカメラとマイク機能があり、ユーザーがこの機能を許可すると、他のペロトンユーザーがエクササイズの様子を見たり、聞いたりすることができてしまいます。

これらの機能が、大統領という国家機密に関わる職務を遂行する上で、大きなリスクになるというのです。

そして、これらの機能を取り除けば、ペトロンバイクをホワイトハウスに持ち込むことは可能かもしれないそうです。


ホワイトハウスに移り、トランプ氏が設置した、ダイエットコークを持ってきてもらうためのボタンを早速撤去したというバイデン氏、自身の高年齢もあり、健康への配慮やエクササイズへの関心はかなり高そうです。

世界を牽引する北米フィットネス市場

個別のホームフィットネス製品・サービスについてご紹介する前に、北米のフィットネス関連市場の状況を簡単に概観しておきたいと思います。

データ:Global Wellness Institute, https://globalwellnessinstitute.org/wp-content/uploads/2019/10/2019-Physical-Activity-Economy-FINAL-NEW-101019.pdfより引用

コロナ前のデータになりますが、2018年の身体的活動への参加や関連製品・サービスの支出の総額は、北米が2827億ドル(日本円でおよそ29兆3,123億円)、参加者一人当たりの支出額は1345ドル(日本円でおよそ139,463円)と全ての地域の中、支出総額、1人当たりの支出額のいずれも最も高くなっています。


中国や日本を含むアジア・パシフィック全体の一人当たりの支出額176ドルと比較すると、北米の一人当たりの支出額は8倍弱、1人当たりの支出額が第2位のヨーロッパの528ドルと比較してもおよそ2.5倍の金額で、身体的活動へのダントツの金銭的なアクティブさを示しています。


このデータからもアメリカは、グローバルなフィットネス市場を牽引する国の一つと言えると思います。



そして、パンデミック前後におけるアメリカの運動器具利用の実態について、アメリカの主要ジムの会員に尋ねた調査結果によれば、コロナウィルスによるパンデミック以降、ストリーミング、ネット接続された機器、無料のアプリ、トレーナー、有料アプリの利用が大幅に増加、53.6%の会員が自分のジムのルーティーンに無料のアプリ、ストリーミング、ネット接続された、もしくはされていないエクササイズ機器、有料のアプリなどを合わせて利用していると回答しています。

データ:https://www.mckinsey.com/~/media/mckinsey/industries/retail/our%20insights/sporting%20goods%202021%20the%20next%20normal%20for%20an%20industry%20in%20flux/sporting-goods-2021-report.pdfより運用
コロナウィルスによるパンデミックでのロックダウン後、アメリカでは主にオンラインのサービスや機器、アプリなどを利用したエクササイズスタイルに変化しつつあります。つまり、フィットネス市場が、外のフィットネスジムやスタジオに行くスタイルから、自宅で様々なオンライン・オフライン製品、サービス、アプリなどを組み合わせてエクササイズをする、ホームフィットネススタイルへとコロナウィルスによるパンデミックで大きくシフトしたといえるでしょう。


住宅事情や環境が日本とアメリカでは大きく異なるため、特にホームフィットネス機器は、限定的な住環境下の日本でなかなか浸透しづらい現状が続いていると思いますが、コロナ禍で健康やエクササイズへの関心が高まる中、現在アメリカでブームになりつつある、コネクティッド・ホームフィットネス機器(インターネットに接続された家庭用フィットネス機器)の製品サービスをご紹介し、アメリカだけでなく、グローバルに、そして日本にも影響がありそうなホームフィットネスのトレンドについて考えてみたいと思います。

伝統的なホームフィットネス機器の変化 
コネクティッド・ホームフィットネス機器への関心の高まり

私たち家族がアメリカで生活することが決まった時、住まいを探すことが最初のタスクでした。


ニューヨーク市とその周辺はアパートメントなどの集合住宅が中心で、私が現在住んでいる郊外地域では一軒家の住宅もあります。
アパートメント物件を内覧したときにアメリカらしさを感じたのは、ある程度築年数が古くないような物件では、アパートの建物内にジムやプールといった運動施設がアメニティとして提供されていることでした。バイクはもちろん、トレッドミル(ランニングマシーン)やウェイトリフティングなど、フィットネスジムのような機材が揃っているところを多く見ました。
そして、一軒家では1階に位置するガレージに、エクササイズマシンを置いて、運動する場所として使っている人も多くいます。


エクササイズや運動の習慣がない人(まさに、私がそうです)にとって、運動を始めること、続けることはダイエットと同様、なかなかハードルが高いものです。しかしながら、アメリカでは日本と比較してフィットネス機能やそれらをサポートする施設が住環境にすでに埋め込まれていたり、運動をサポートする環境へのアクセスが容易ですので、生活の中に取り入れるハードルも低く感じます。


環境やある程度すでにユーザーが存在するアメリカのホームフィットネス市場では、新たな製品サービスがどんどん生まれています。
それらはどのようにして生まれ、受容されていったのでしょうか?

そういった点にも着目しながら、次回はニューヨークベースの2つのコネクティッド・ホームフィットネス機器関連の製品サービスをみてみます。
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Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。