NYノマド 第26回 国民的一大イベント スーパーボウルにみる広告トレンド Part2

21.03.08 07:59 PM By s.budo

巨額のマネーがつぎ込まれるスーパーボウルサンデーの広告 
2021年のスーパーボウル広告のお値段は?

スーパーボウルを視聴することは、NFLファンにとってだけでなく、家族や友人で集まって視聴して楽しむ、クリスマスやサンクスギビングと同様のファミリーイベントという積極的な視聴の機会です。同時に、みんなが注目するビッグイベントですから、その話題に乗り遅れないように、置いてきぼりにされないために観る消極的な視聴機会も生み出しているといえそうです。


かくいう我が家も、ゲーム自体よりも、とりあえずハーフタイム・ショーを観ておこうかという程度のミーハー視聴者で、時事ネタとして抑えておこうという消極派です。
第54回スーパーボウル・ペプシ・ハーフタイムショー 画像:https://nfljapan.com/streaming/61810より


スーパーボウルサンデー翌日のテレビやネットのニュースでは、ハーフタイム・ショーやCM広告の話題でもちきりとなります。ゲームそのものだけでなく、コマーシャルやハーフタイム・ショーにも大きな期待が寄せられる、一大エンターテインメントショーでもあるのです。
イベントでの消費に積極的なアメリカ人の消費を獲得するとともに、全米の注目を集める絶好の機会に、コマーシャルを流すために企業は一体いくら支払ったのでしょうか。


今年はCBSが放映権を獲得、およそ9,160万人がCBSのテレビ放送でゲームを視聴したとされていますが、この視聴者数は2006年以降のデータでは最も少ない数字です。


直接比較することはもちろん難しいのですが、日本の視聴率の数字でいうと、全局高世帯視聴率番組50に掲載されている視聴率歴代第2位の「東京オリンピック大会(女子バレー・日本×ソ連 ほか) 1964年10月23日(金) NHK総合 66.8%」があげられるでしょう(ちなみに、第1位は、「第14回NHK紅白歌合戦 1963年12月31日(火) 21:05 160 NHK総合 81.4%」です)。


今年はパンデミックの影響を受けた経済不況もあり、CM広告枠は今年1月後半にようやく売り切れとなったと報じられています。
スーパーボウルサンデーへの広告出稿を直前まで悩んでいた企業が多かったのでしょう。

今年のCBSのCM広告枠は一体いくらだったのでしょうか。
"30秒で560万ドル(日本円で約6億円)"です。


アメリカのナショナルキー局の30秒のテレビ広告枠の平均額は115,000ドル(日本円で約1,220万円)と比較しても、その桁違いの金額に驚きます。


スーパーボウルサンデーの広告枠の平均金額はこの20年間、右肩上がりとなっており、今年の金額も昨年2020年の560万ドルを維持している状況です。経済不況下ではあるものの、コロナウィルスによるパンデミックでレストランやバーの営業が制限されていたり、ステイホームをする人が大半を占める状況下において、テレビ広告への投資は逆に効果的であるという声も聞こえてきます。
Super Bowl average costs of a 30-second TV advertisement from 2002 to 2021(in million U.S. dollars) グラフ:https://www.statista.com/statistics/217134/total-advertisement-revenue-of-super-bowls/より引用

これだけの巨額の投資を行って、どのような企業が、どのような広告を展開したのでしょうか。

そして視聴者たちはどのように受け止めたのでしょうか。

3つのソーシャルメディアの反応から考察したスーパーボウルサンデーの広告

つづいて、視聴者の関心を喚起したり、支持されたスーパーボウルサンデーの広告を3つのソーシャルメディアの反応から見てみたいと思います。

最もGoogle検索されたスーパーボウルサンデー広告は?

スーパーボウルサンデーの試合終了後、インターネットでは瞬く間に、広告への反応やまとめサイトなどがアップされます。スーパーボウル中に放映されたTVコマーシャルの全てのラインナップは主要メディアなどでも取りまとめられ、一覧することができますので(例えば、CNBCのウェブサイトでCM動画へのリンクと共に紹介されています, https://www.cnbc.com/2021/02/07/super-bowl-2021-commercials-live-coverage.html)、見逃してしまった人も、広告だけチェックすることができます。

では最初に、Google TrendsのTwitterで紹介されていた、ハッシュタグ "#superboulads"で、Google検索されたスーパーボウルサンデーの企業広告ナンバー5を見てみたいと思います。

画像:https://twitter.com/GoogleTrends/status/1358615369485742082よりスクリーンショット画像を引用

第5位:バドワイザー(Budweiser, https://www.budweiser.com/

画像:https://twitter.com/budweiserusa/status/1354493580816109570よりスクリーンショット画像を引用

第5位はビールなどの飲料を展開するバドワイザーです。


バドワイザーはスーパーボウル広告に連続37年も出稿し続けてきた常連企業なのですが、今年は広告を取りやめたのです。

それにもかかわらず、多くの人がバドワイザーのスーパーボウル広告をGoogle検索したという事実には驚かされます。


なぜ今年バドワイザーは広告を取りやめたのでしょうか。

米バドワイザーはTwitterでその理由について語っています。

今年はこのビッグゲームへの広告をやめ、その広告費用を、米広告評議会とCOVID Collaborative(2020年5月に設立された、コロナウィルス対策に関する取り組みや情報発信を行う専門家、企業、大学などが協業する公的プラットフォーム)が展開するCOVID-19ワクチンを啓蒙する広告に全額寄付しますという内容です。

他にも、コカ・コーラ、ペプシ、自動車のアウディなど常連企業が売り上げの落ち込み等を理由に今年はスーパーボウルへの広告を中止しました。

Bud Light sheltzer(バドライト・セルツァー、バドワイザーブランドのサワーのようなアルコール入り炭酸飲料)はスーパーボウル広告を出していましたので、この広告を出さずにコロナウィルスと戦うための啓蒙広告に寄付するという意思決定はなかなか戦略的なものであると感じずにはいられません。

恐らく、飲酒離れ、特にビールの飲酒離れが進むミレニアル世代以降の若年層をターゲットに、バドライト・セルツァーの広告を打ち、バドワイザーのビールについては、社会的課題への取組に敏感な若年層に対しては、ビールの広告よりもコロナウィルスへの取組への熱心さを打ち出し、ブランドイメージの向上を図る方が得策と判断したのではないかと推測します。

第4位:T-Mobile(ティーモバイル, https://www.t-mobile.com/

画像: https://twitter.com/TMobile/status/1357680630616576003?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1357680630616576003%7Ctwgr%5E%7Ctwcon%5Es1_c10&ref_url=https%3A%2F%2Fwww.adweek.com%2Fbrand-marketing%2Ft-mobile-tom-brady-ad-banned-super-bowl%2Fより引用

第4位はティーモバイル社が今年のスーパーボウルで優勝したタンパベイ・バッカニアーズのトム・ブレイディさんとロブ・グロンコウスキーさんを起用した広告です。


Tom Brady氏はクオーターバックを務め、NFLの現役レジェンドでもある超スーパースター、そしてRob Gronkowski氏は2018年に現役を引退したものの、2020年にシーズンに復帰したタイトエンドのポジションの選手です。

このCMはロブ・グロンコウスキーさんが現役復帰したエピソードをもとに、コメディ化されて作られたもの。

場面は1年前、引退したロブ・グロンコウスキーさん氏がフロリダでゴルフを楽しみながらTom Brady氏に電話し、引退生活の良さを得意気に話し、同じように引退するように誘います。しかしながら、スマートフォンの通信回線不良の影響でTom Brady氏が聞き取れず、間違って、「ロブ・グロンコウスキーさんが引退から引退したいと思っている」と解釈し、記者会見で発表してしまうというもの。

T-Mobileの通信回線の信頼性をアピールする内容になっているのですが、実はこのCMはNFLから当日のオンエアを禁止されたものなのです。

NFLのオフィシャルスポンサーである競合Verizon社の圧力があったとか、なかったとか、様々言われていますが、オンエアされないことをティーモバイルがTwitterでツイート、それが瞬く間に拡散されたのです。

オンエアされなくなった幻のスーパーボウル広告であるという事実と、ビッグゲームの主人公を登場させたタイムリーな話題性と、「あれ、見た?」とつい友達にテキスト会話したくなってしまうコミカルなストーリーが第4位を獲得しました。

さて、第3位以降は?


次回のPart3でお届けします!
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Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。

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