NYノマド 第26回 国民的一大イベント スーパーボウルにみる広告トレンド Part4

21.03.22 05:19 PM By s.budo

Part4. 最もSNSのフォロワーを増やしたブランドは?

画像:https://adage.com/article/special-report-super-bowl/super-bowl-2021-advertisers-have-added-most-social-followers-so-far/2314116より引用

最後にご紹介するのは、ListenFirst社が分析した、5つのソーシャルメディア、Facebook、Twitter、Instagram、YouTube、そしてTikTokでフォロワー数を増やしたブランドです。


このスーパーボウルが放映された時間に最も多くのフォロワーを獲得した栄えある2大ブランドは、Google検索結果第4位でもあったティーモバイル(50,834アカウント)とペプシコーラ傘下のマウンテンデュー(49,048アカウント)でした。


https://adage.com/article/special-report-super-bowl/super-bowl-2021-advertisers-have-added-most-social-followers-so-far/2314116


ティーモバイルはNFLスーパースターのトム・ブレイディさんの起用と、NFLからオンエア禁止になった曰くつきのCMとなったことが貢献し、第1位のフォロワー数獲得。

ティーモバイルがオンエア禁止されたことを公表したツイートにはなんと462,635件のコメントがついたといいます。


これは禁止されることを予測し、話題にされることを意図した"敢えて"企画制作されたコマーシャルだったのか否かはティーモバイルのみぞ知る、ですね。

マウンテンデューは何本? 数当てコンテスト企画

クイズの回答をTwitterアカウントから投稿してもらうことで、エンゲージメントを獲得するという作戦です。

そこまで目新しいような企画ではありませんが、一気に多くのフォロワーを獲得するということにおいては結果にコミットできた企画となりました。

2021年のスーパーボウルCMから見えてくること

30秒の枠が推定6億円、今年は65のコマーシャルがオンエアされたスーパーボウルサンデーですが、その新旧様々な顔ぶれを眺めるだけでも、今勢いのあるブランドや企業、そして広告のトレンドを垣間見ることができます。

今年初めて広告を出した"新参者"の企業やブランドは、レストランデリバリーのオンラインプラットフォームDoorDashUber Eats、 フリーランスサービスのオンラインマーケットプレイスFiverr, 求人情報検索エンジンサービスを展開するIndeed, オンライン後払い決済サービスのKlarna、比較的新しい中古車をオンラインで販売するVroom、前述のRedditRobinhood、そして日系企業のメルカリでした。

やはりテック系企業が多い印象ですね。


イーロン・マスク氏が創設したスペースXも、民間人向けの宇宙飛行を宣伝するコマーシャルを放映していました。

他に日系企業ではトヨタが自社の車ではなく、幼少期に両脚を失い、アメリカ人家庭に養子として引き取られて育ち、現在はパラリンピック水泳選手として輝かしい功績を残しているアスリートのジェシカ・ロングさんをイメージ広告に起用。


彼女のストーリーに焦点をあて、彼女の身の回りに起きる様々な困難に立ち向かう勇気を持ち続け、物事を成し遂げるという彼女しなやかな強さを物語る、共感と琴線に触れるコマーシャルを放映しました。

最後に今回ご紹介したコマーシャルを中心に、かなり粗い印象論になりますが、いくつか共通のトレンド、傾向を総括してみたいと思います。

1.ライトなジョーク、笑えるストーリー

今回ご紹介したティーモバイル、チートス、アマゾンのアレクサ、ウーバーイーツ、パラマウント・プラスなど、自社の商品やサービスを絡めたちょっと笑えるジョーク的なストーリーやテイストのコマーシャルが多く登場しました。

まだまだパンデミック等で様々な国家的難局に直面しているアメリカ、大多数の人にとって分かりやすく当たり障りのない笑いに着地しておくことで、ネガティブなコメントや論争を巻き起こさないものにする、もしくは、スーパーボウルというポジティブに熱狂する、楽しむイベント機会を一緒に盛り上げるようなショー的なコマーシャルにしようという意図があるように感じます。

2."United" Americaへのメッセージとインクルーシブな貢献

ジープやトヨタのメッセージ広告、バドワイザーの敢えてスーパーボウル広告を出さずにCOVID-19ワクチン啓蒙広告に寄付をする、など、パンデミック下のアメリカを取り巻く困難に"United"な、一致団結し、立ち向かっていくアメリカを語り掛け、呼び掛けるメッセージ広告が少なからずありました。

また、キャストにおいても、ダイバーシティやソーシャルインクルージョンが意識された有色人種のキャスティングが目立ちました。


今のアメリカの世相や心の機微に寄り添う、真正面から切り込む、もしくは配慮するといった様々な塩梅でCMコンテンツの中で表現されていました。

3.リメイクネタとミーム拡散

そして最後はなんといっても、「話題にされる、SNSに拡散されるネタ」を盛り込むという点です。


一昔前の映画やテレビ、スーパーボウル関連ののネタをアレンジ、リメイクし、娯楽的に消費できるコンテンツにするとともに、ついツイートしたくなる、会話のネタにしたくなるようなしかけが盛り込まれていました。
レディットの5秒広告やマウンテンデューなどもソーシャルメディアで観てもらう前提で作られていますね。そしてそれらのコンテンツが結果的にソーシャルメディア上で拡散され、さらに露出していくというネタのミームとなってさらに波及していきます。

ソーシャルメディアでどうバズってもらえるか、をあらかじめ意図し、デザインするということがコマーシャルづくりのお作法になりつつある様子がうかがえます。
巨大な投資を伴うスーパーボウル広告。
一見、破格のコマーシャルですが、スーパーボウルサンデー当日のおよそ1億人の視聴者にリーチできるだけでなく、ソーシャルメディアのプラットフォームで拡散され、様々な露出や波及効果を生みます。
作品によっては、スーパーボウル後も長らく再生され続け、話題にされ続け、語り継がれるコンテンツに変容していくのです。
それはテレビコマーシャルを受動的に視聴するだけの視聴者を、ソーシャルメディアプラットフォームを介して能動的にエンゲージさせ、共に情報を拡散する共創もしくは共犯関係アクターの存在に変えていくことにも繋がっています。

それらを考慮すると、この30秒6億円のお値段はコスパが良いとも考えられますね。


今回のコラムでご紹介したスーパーボウル広告に萌芽しているトレンドやエッセンスは、今後のコマーシャルや広告をどのように形作っていくのでしょうか。
皆様のヒントになれば幸いです。

それでは、また次回のコラムでお会いしましょう。
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Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。

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