NYノマド 第27回 女性の心身の健康を取り巻くタブーやネガティブなステレオタイプを刷新するフェムテック Part3

21.04.27 10:20 AM By s.budo

続々と生まれる女性専門テレメディスン・ワンストップ医療サービス

他にも女性の心身の健康をワンストップでサポートする女性専用医療サービスが近年複数ニューヨークで生まれています。

2016年創業で会員制のクリニックを物理的およびオンラインで展開するティア(Tia )


や、2014年創業、女性の妊活・妊娠出産から職場復帰までをワンストップで提供する企業向け福利厚生サービスのメイベン(Maven)などがあり、それぞれすでに3,280万ドル(約36.2億)8,510万ドル(約93億円)のファンドを獲得しています。

いずれも、女性を中心に据え、カインドボディと同じく、女性の医療サービスへのアクセスの敷居を下げ、より安価に、気軽に医療サービスを利用できる環境や女性が不安なく、自分で自らの健康やライフステージをコントロールできるようなサポートを提供しています。
画像:https://www.asktia.com/locations/flatiron-nycよりスクリーンショット画像を引用
画像:https://www.mavenclinic.com/よりスクリーンショット画像を引用
例えばメイベンが提供するテレメディスンでは、医師や看護師だけでなく、出産後に直面する産後鬱や育児などの課題にも対応できるよう、なんと34種類もの専門家を配置しています。

家族計画では
養子コーチ(Adoption coach)、卵子提供コンサルタント(Egg donor consultant)、遺伝子カウンセラー(Genetic counselor)、セックスコーチ(Sex coach)

育児では
授乳コンサルテーションを提供してくれるラクテーションコンサルタントの(Lactation consultant)、子どものねんねトレーニングをアドバイスする睡眠コーチ(Sleep coach)、子どもの行動分析をする行動アナリスト(Behavior analyst)、

ライフスタイルやライフステージ全般では
キャリアコーチ(Career coach)、糖尿病コーチ(Diabetes coach)

など、 多種多様な専門家に24時間体制で同社のテレメディスンアプリを利用して相談することが可能です。


この専門家リストをみると、女性が直面する健康やライフステージ、ライフスタイルに関連した問題や悩みがいかに幅広いかを改めて認識します。
私自身、アメリカ生活を始めて最も苦労したのが病院、医者探しです。
細分化された専門家を見つけ、予約を取り、相談することの大変さから、しばしば相談したり、病院に行くことや定期検診を受けることもやめてしまったり、ためらってしまうことが多くなりました。

問題を抱えるごとに、これらの専門家を探し、相談し、治療を依頼する専門家を選び、予約を取り、相談するという一連のプロセスにどれくらいの労力や時間、お金がかかるかを想像すると気が遠くなります。
それをメイベンはワンストップで、かつ企業の福利厚生として提供してくれるというベネフィットは非常に魅力的です。

こうした包括的な専門家サービスは確実に女性の不安や受診へのためらいを軽減するとともに、企業の福利厚生として提供されることでより気軽に利用することができます。
メイベンに100億円近い資金が注入されていることもうなずけます。
画像:https://www.mavenclinic.com/practitionersよりスクリーンショット画像を引用

多彩なプレイヤーが続々と生まれるアメリカのフェムテック業界からみえるトレンド

アメリカのフェムテックプレイヤーや利用可能な製品・サービスを概観すると、改めてそのサービスの多様さに驚きます。

画像:https://thepillclub.com/よりスクリーンショット画像を引用

低用量ピルを安価に購入、生理用品のサンプルやお菓子、おしゃれなステッカーと一緒に配達してくれるピルのサブスクリプションサービス、ピルクラブ(PiLL CLUB)や女性向け尿漏れ・失禁用のパッドやアンダーウェアのサブスクリプション販売を行うリリーバード(Lily Bird)、トイレに流せる妊娠検査薬を展開するリア(Lia)、高額の不妊治療向けの治療をローンとセットで提供するフューチャーファミリー(futurefamily)、さらには先にご紹介したカインドボディ出身者が2019年にニューヨークにオープンした新たにモダンで包括的なケアを提供する産院、オウラ(Oula)など、この5年間でも継続してフェムテックが生まれ、今までの同種の製品やサービスを刷新する価値を提供し始めています。


こうしたトレンドからどんなヒントや可能性が見えてくるのでしょうか。

包括的かつ透明性のあるサービス提供で女性の不安やネガティブなイメージを払拭

フェムテック領域において、新たなビジネスやサービスが提供する価値やユーザーを俯瞰すると、それらが生まれている背景、解決しようとしている課題、そしてそこに横たわる構造的な問題や私たちが無意識に抱え込んでいるバイアスが浮かび上がってきます。

フェムテックが取り組んでいるビジネス、製品サービスに共通するのは、今まで必要最低限の機能や価値に閉じ込められていた限定的な女性が抱える心身やライフステージ領域の支援の現状です。
生理や更年期など、女性の誰もが必ず通過するライフステージはオープンに語ったり、相談するというより、むしろ語ることが恥ずかしかったり、タブーでネガティブなことでした。こうしたステレオタイプを個々人が無意識に持った結果、個人で抱え込み、お金をかけて解決するものではないのでなんとかやりすごす、もしくはあきらめるという対象になり続けていました。
あわせて特に医療やテクノロジーの領域は数学や科学などのSTEMとよばれる分野が男性主導でデザインされ、構築されてきた歴史があります。これらの結果、これらの課題を支援したり、解決したりするビジネスや製品サービスが増えず、当事者である女性の視点がおざなりにされてきてしまったのでしょう。

今回ご紹介したフェムテック企業の活動からは、ネガティブな女性特有のライフステージをよりポジティブに捉え、向き合えるオープンな社会にしていくこと、女性が自分自身の心身とよりよく向き合え、必要な選択肢を持ち、選択し、行動できることを目指しているようすが伺え、励まされます。

カインドボディやメイベンのように、特定の女性の疾患を解決するだけでなく、ライフステージの変化に伴う心身や生活の基盤づくりをサポートするサービスや様々な専門家に支援を仰げる複数のオプションがあることで、何かあっても誰かに頼って乗り越えることができるという心理的なセーフティーネットとなり、それが女性自身の自立した行動を後押ししてくれることでしょう。
しかしながら、フィンテック(金融×テクノロジー)やエドテック(教育×テクノロジー)と比較して資金調達が困難であったり、受益者である女性自体がフェムテック関連の製品やサービスへの認知度が低いことや、複雑かつ高度な医療システムを理解するハードルが高く、向き合うことから遠のいてしまったりなど、乗り越えるべき課題も多く存在します。
同時にこの構造的な課題には、イノベーションや新たな価値提供の宝庫であるともいえます。

日本でもこれからフェムテック市場が成長していく機運の一つとなりそうです。

地球のおよそ半分の人口の女性をポジティブに、ハッピーにするフェムテック企業の誕生や動向にこれからも目が離せません。

それではみなさん、また次回のコラムでお会いしましょう!
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Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。