NYノマド 第28回 テクノロジーが変える出会いとデート アメリカの新たな出会い系アプリ・サービス  プロローグ

21.05.10 04:33 PM By s.budo

今月のコラムでは、新たに登場している出会い系マッチングアプリ・サイトが提供しているサービスをご紹介しつつ、人々の出会いかたや関係性構築への価値観、行動の変化について考えてみたいと思います。


初回のプロローグ編では、ワクチン接種の米国最新事情もご報告させていただきます。

  • プロローグ 全米で18歳以上のCOVID-19ワクチン接種が可能に。アメリカの出会い系オンラインサービス事情
  • Part1. 待つだけの出会いに終止符を、女性主導の出会いを提供―Bumble
  • Part2. 私(コーヒー)にぴったりの相手(ベーグル)を探す、女性ユーザーが支持する出会い系アプリ ーCoffee Meets Bagel

全米で18歳以上のCOVID-19ワクチン接種が可能に

皆さん、こんにちは。


初夏の陽気に心も明るくなる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。


まだまだコロナウィルスによる感染は続いているアメリカですが、ワクチン接種が完了した人が31%、少なくとも1回目のワクチン接種を完了した人が44%(4月30日時点)となり、粛々とワクチン接種が進んでいます。4月19日から16歳以上の全てのアメリカ国内の住人がコロナウィルスのワクチン接種を受けることが可能となりました。
それまではワクチン接種が可能な要件や接種対象者が州ごとに異なり、全て州政府によってそれぞれの地域で異なるワクチン接種政策、方法、手続きなどが展開されていました。例えば、私が住むニュージャージー州は他州と比較してワクチン接種の進度が遅く、4月19日にようやく16歳以上の全ての住人もしくは州内で働く人へのワクチン接種が可能になりました。
しかしながら、お隣のニューヨーク州ではすでに4月6日から16歳以上の全ての住人もしくは州内で働く人へのワクチン接種が可能となっていて、ニューヨーク州はワクチン在庫も豊富なのか、ワクチン政策の展開がスムーズなのか、と、ニュージャージー州が遅れている理由を妄想しながら4月19日までの期間を過ごしていました。


ニュージャージー州ではワクチン接種は事前予約が必須ですが、ニューヨーク州では4月23日から60歳以上の全ての人は事前の予約不要で、ウォークイン(ワクチンサイトを訪れてそのまま空いていれば接種が可能)でのワクチン接種が可能になっています。

日本では試験的な取り組みなどを除き、公共サービスは全国一斉に施行、提供されるイメージがあるのですが、アメリカでは州ごとにワクチン接種の進捗はかなり異なり、どこに住んでいるか、働いているかで、ワクチン接種の資格に大きく影響されます。

このようにアメリカでは、公共サービスの提供のされ方、展開がかなりの程度、州に依存するという政策デザインになっています。
画像:https://vaccinefinder.org/よりスクリーンショット画像を引用

先月、私も第1回目のコロナウィルスワクチン注射の接種を行いました。


ワクチン接種が可能なサイトが複数あり、州や郡の自治体が運営するワクチンサイト、病院、CVS Pharmacy、Walgreens、Acme Pharmacyといった処方箋薬局を持つドラッグストアチェーン、全米で小売店を展開するWalmart等の選択肢があります。


ワクチン接種がスタートしてから、ワクチンファインダーという、マップ形式で自分が住む近隣でワクチン接種が可能なサイトを検索できるウェブサイトや、Solvという病院情報のプラットフォームを提供する会社が提供するワクチン接種予約を探すことができるアプリなどが次々と誕生しています。

これらのサイトやアプリでは、郵便番号を入力すると自動的にワクチンサイト、接種可能なワクチンの種類、ワクチン在庫の有無、予約可能かどうかを調べることができ、予約可能な場合は予約手続きができるウェブサイトに移動することができます。


リアルタイムにワクチンの在庫情報や予約可否を把握することができますので、私もこれらの情報源を利用して事前に自宅の比較的近隣でワクチン接種が可能なサイトを把握し、予約可能になったら即座に予約できるように準備を整えることができました。


具体的には、ドラッグストアやサイトによって接種可能なワクチン種が異なるので、当時接種可能だったモデルナ社とファイザー社の2種類のワクチンのうち、2回目の接種期間が短いファイザーを受けることを決め、ワクチンファインダーで検索すると私の近隣ではファイザー社のワクチンの接種が可能なサイトがWalgreensのみであることを確認、予約がオープンになった日にWalgreensのワクチン予約サイトですぐに予約を行うという手順でした。


Walgreensのウェブサイトでは、ワクチン接種資格や疾患に関する情報などを入力すると、マップ形式で予約可能な店舗の位置情報と予約可能時間が表示され、第1回目、第2回目の両方の接種予約を一度にすることができました。

画像:https://vaccinefinder.org/results/?zipcode=10005&medications=779bfe52-0dd8-4023-a183-457eb100fccc,a84fb9ed-deb4-461c-b785-e17c782ef88b,784db609-dc1f-45a5-bad6-8db02e79d44f&radius=25よりスクリーンショット画像を引用

このワクチンファインダーやSolv社が提供するワクチン探しのためのウェブサイトでは一目でマップ上に自分がワクチン予約の意思決定に必要な情報がシンプルにまとめられている点が秀逸です。


特にSolv社のサイトでは、接種可能なワクチン種の情報まで表示されます。


アメリカでは国策としても、できる限り早く、多くのアメリカ国民、国内居住者がワクチン接種を完了し、集団免疫を獲得することでパンデミックの終息と通常の社会、経済活動の再開を図っていますので、こうしたワクチン接種に必要な手続きや情報提供の整備などはかなり精力的に官民で取り組んでいる印象を持ちます。

さらに、多様な民族、人種の人々が暮らしていますので、ウェブやスマートフォンのアプリ、テキストメッセージ、電話など様々な方法での情報提供とともに、ウェブやアプリではマップなどを用いたビジュアルでの情報提供などUIデザイン面でも、誰もが直感的に即座に使えるようなデザインが意識されているようすが伺えます。


日本でもこれから本格的にワクチン接種が展開されると思いますが、どのような手続きで、どのように情報が提供され、どのように具体的な予約手続きができるのか、を観察すると、これらの背景にある日本の公共サービスに対する概念や思想などが浮き上がってきそうです。

画像:Solv社のサイトより画像を引用

ドラッグストアWalgreensでのワクチン接種

画像:ワクチン接種を行ったWalgreens、筆者撮影
WalgreensでのCOVID-19ワクチン接種の1回目は至ってスムーズでした。

午後一の13:05という時間に予約をしましたが、同じ時間帯に5-6人の予約者がいました。
予約者の名前を伝え、身分証明書と保険証を手渡し、ワクチン接種の同意書兼問診票を記入し、ワクチン接種を行うという手順です。

ワクチンは健康保険でカバーされますので、無料です。


ちなみに、今まではコロナウィルス関連での治療や入院費用をカバーしていた保険会社が、最近、コロナウィルス治療の医療費用の保険適用対象を制限したり、外したりする動きもみられています。

高額の医療費の負担軽減はもちろんのこと、カバー対象を制限することで市民にワクチン接種を促すことも目的の一つのようです。


店内の処方箋薬局部門にテーブルと椅子が置かれ、そこでワクチン接種を受けます。接種後は店内に置かれた椅子で15分ほど様子を見て、問題なければすぐに帰宅できます。
手続きから15分間の経過観察を終えるまで、トータルでおよそ35分の所要時間でした。


摂取後から接種した付近の痛みと翌日まで倦怠感がありましたが、それ以外は特に問題なく1回目を終えることができました。



画像:ワクチン接種カードとWalgreensの領収証、筆者撮影

接種を終えると、CDCのワクチン接種カードに第1回目の接種が記録され、2回目もこの接種カードを持参し、記入してもらい、完了するとワクチン接種完了の証明書代わりになります。


ワクチン接種はアメリカでは昨年12月14日からスタートしていますので、4か月半ほどの期間で官民が運営するワクチンサイトでワクチン接種の手続きがすでに確立され、スムーズに運用されている点には驚きます。


多様なユーザーや課題、ニーズに対応するためには、出してみて、スタートしてみて改善するというアプローチが必然的に求められるのかもしれません。

アメリカの出会い系オンラインサービス事情 

画像:https://amazondating.co/よりスクリーンショット画像を引用

日本では4月から新年度が始まり、新たな出会いが増える季節ですね。

コロナ禍で新たな物理的な出会いの機会を作りづらい環境下で、アメリカでもオンラインツールを活用した出会いやコミュニケーションへの需要が増えているといいます。


アメリカで出会い系のマッチングアプリ、サイトといえば、その人を気に入ったら右にスワイプするUIがヒットしたティンダーです。

日本でも一定のユーザーを獲得していますね。


しかしながら、ここ数年、アメリカのダイバーシティを反映した様々なマッチングアプリやサイトが登場しています。

ソーシャルメディアのFacebookはマーク・ザッカーバーグ氏が大学在籍中にマッチングを目的にスタートしていることは旧知のことですが、同じくソーシャルメディアのYouTubeも、もともとは動画を使った出会い系アプリとしてスタートしていたことをご存知でしょうか。

独身の人が自分の自己紹介動画をアップロードし、出会う場を提供しようと始めたYouTubeですが、ユーザーが次々と自己紹介以外の様々な動画をアップし、共有、視聴するプラットフォームが自然と出来上がってしまったといいます


こうしたエピソードを鑑みると、"新たな出会いを作る"場や機会には、新たな価値が生まれる素地を内包していると考えることができるかもしれません。


アマゾンは自社のパロディサイトで、出会いを販売するAmazon Datingという架空のサイトを作り、アマゾンがゆくゆくは人との出会いもマーケットプレイスで販売する可能性を面白おかしく示唆しています


普段なかなか出会い系アプリやサイトを知る機会がなかったのですが、とあるクリエイティブ系のイベントでLGBTQ+向けの出会いアプリやサイトの話題を耳にする機会があり、アメリカの出会い系アプリやサービスの多様さ、ユニークさに関心を持ちました。

そしてアメリカの出会い系アプリについて調べてみると、こんなにも...!と想像以上にたくさんの多様なサービスが展開され、そこには出会いを求める人々や出会いを規定する社会通念などに対する鋭い洞察が存在していました。


そこで、今月のコラムでは、新たに登場しているマッチングアプリ・サイトで、新たな出会い方や出会いの場を提供しているサービスを中心にご紹介し、人々の出会いかたや関係性構築への価値観、行動の変化について考えてみたいと思います。

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Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。

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