NYノマド 第29回コロナウィルスワクチン接種を促すユニークなインセンティブ策  Part2

21.06.14 05:09 PM By s.budo

ユニークな各州のインセンティブ策

私が居住するニュージャージー州でも複数のワクチン接種のインセンティブ策がフィル・マーフィー知事から発表されました。
画像:https://nj.gov/governor/news/news/562021/approved/20210519a.shtmlより
例えば"アンコルク・ザ・バクチネーション(Uncork the vaccination:ワクチンのコルクを開けよう)"と題して、州内のワイナリーとタイアップし、5月中に1回目の接種を受け、参加店で接種証明書を提示するとワインがグラス1杯無料になるキャンペーン、同様に州内のビール醸造所に行くとワクチン接種証明で無料のビールがもらえる“ショット・アンド・ビール(Shot and a Beer:ワクチン接種でビール)”、7月4日までにワクチンを最低1回接種すると、今年年内の州立公園が入場無料になるシーズンパス50ドルがもらえる "バックス&ビジット(Vaccs & Visit:ワクチンで訪問)"、さらには5月末までのワクチンフル接種で、マーフィー知事夫妻との州知事邸等でのディナーが当たる抽選に応募できる権利などです


ニュージャージー州の観光資源を中心としたインセンティブ策となっていますが、ニューヨーク州やニューヨーク市と比較して、その規模は小さく感じます。知事夫妻との会食権利があたる抽選はなかなかユニークですね。州在住の私にも応募の権利がありましたので、ミーハーな私は思わずエントリーをしてしまいました。もしも当たったらぜひ参加して、皆様にもご報告させていただきたいと思います。


ニューヨーク市やニューヨーク州、ニュージャージー州だけを取り上げても、これだけ様々なワクチン接種のインセンティブ策やキャンペーンが展開されているのかと驚きます。


各州や地域がどんなインセンティブ策を取っているのか気になるところです。
そこでざっと発表されたインセンティブ策を調べてみましたので、まずはインセンティブの種類カテゴリーごとに簡単にご紹介していきたいと思います。

1. 宝くじや懸賞などの金銭系インセンティブ

画像:https://www.governor.ny.gov/news/governor-cuomo-announces-new-vax-scratch-program-providing-lottery-tickets-prizes-5-millionよりスクリーンショット画像を引用


他にもメリーランドロッタリー(メリーランド宝くじ)と提携し、ワクチン接種をしたメリーランド州民に200万ドルの賞金があたる"バックス・トゥー・ウィン(VaxToWin:ワクチン接種で当てよう)"キャンペーンを開始しています。

なかなかお腹がいっぱいになってきますが、まだまだあります。

オハイオ州では“オハイオ・バックス・ア・ミリオン(Ohio Vax-a-Million)”100万ドルの賞金が当たるキャンペーンを行い、5月17日の時点で、30歳から74歳までの人のワクチン接種率が6%上がったことをプレスカンファレンスで発表しています。

ウェストバージニア州では16歳から35歳までの州民で、すでにワクチン接種を受けた人、これから受ける人全員に100ドルのギフトカードか100ドルの貯蓄国際(Savings bonds)をプレゼントすることが発表されています。

デトロイト州ミシガンでは“グッドネイバーズ・ドライビング・デトロイターズ(Good Neighbors driving Detroiters)”と称して、他者をワクチン接種サイトにクルマに乗せて連れて行ったドライバーに50ドルのプリペイドカードを渡すキャンペーンを行っています。こちらは無制限で、クルマで連れていく度に50ドルをもらうことができます。

自動車産業が主要産業の一つであるデトロイト州らしいキャンペーンですね。

これだけたくさんの州が金銭系のインセンティブを採用している実態をみると、やはり人間を動かす最大のインセンティブの一つは金銭的価値であることを実感します。

2. モノ・飲食系インセンティブ

金銭系インセンティブに類似したもので続いてご紹介するのがモノや飲食系のインセンティブです。
画像:https://wearememphis.com/shot-for-shot/より引用
主要産業の一つが自動車産業であるテネシー州、州都メンフィスがあるシェルビー郡では、ワクチン接種を行った18歳以上のシェルビー郡住民にシボレーや日産の自動車があたる"スウィープ・ステイクス(Sweep Stakes)"キャンペーンを行っています。
イリノイ州では遊園地などの娯楽施設を運営するシックス・フラッグス(Six Flags)とタイアップし、ワクチン接種者に5万枚のシックス・フラッグスの無料チケットをプレゼントしています。

飲食系では、コネチカット州が#CTDrinksOnU"と題して、コネチカット州レストラン協会と州知事、州がタイアップし、5月19日より、キャンペーン参加飲食店でワクチン接種者にフリードリンクを提供しています。

すでに今までもドーナツやハンバーガー、ビール、ワインなどをご紹介していますが、同様に企業や地域産業とのタイアップによるワクチン接種インセンティブ策となっています。

3. スカラシップ(学費・奨学金)系インセンティブ

個人的に私が最もアメリカらしいと感じたインセンティブ策は大学の奨学金インセンティブです。

オハイオ州ではオハイオ州立のカレッジや大学の4年間の学費、家賃、本などの教材が全て無料となる奨学金懸賞、

アメリカは大学の学費が高いことで知られています。

公立のカレッジや大学は州民の料金設定があり、その金額は日本の私立大学や国公立大学と比較的同程度の学費となっています。


しかしながら、この金額の負担が大きく、進学をあきらめる家庭も多くありません。

若者がワクチン接種を予約したり、連れていくのは保護者や親がメインです。


ワクチン接種対象者のワクチン接種行動の可否に大きな影響を及ぼすこの保護者や親というステークホルダーにとっても響くインセンティブを設定している点、進学率など教育面へのポジティブな効果波及に繋がる可能性があるインセンティブであるという点は、インセンティブ策のデザインとしても秀逸だと感じます。

4. その他ユニーク系インセンティブ

最後にご紹介するのは、ニュージャージー州のマーフィー知事夫妻との会食のように、上記のカテゴリーに該当しないユニークなインセンティブ策です。

画像:https://www.talladegasuperspeedway.com/news-media/2021/05/11/get-covid-19-tested-or-vaccinated-for-free-at-talladega-superspeedway-this-saturday-and-get-two-laps-around-iconic-track/より引用

アーカンソー州ではワクチン接種を行った州民に、年間の入漁もしくは狩猟免許が当たるインセンティブ策を5月25日から展開しています。

これらのインセンティブ策も各州の文化や観光資源を活用するとともに、州民がワクチンを接種し、家から外に出て、余暇や娯楽を楽しむことを促していますね。

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Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。

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