NYノマド:第3回 Amazon Is Too Great For Small Dreams -アマゾンの存在感_Part1

19.03.07 11:09 AM By s.budo

バレンタインの賑わい、本社移転計画の顛末 ノマドマーケター at NY

皆さん、こんにちは。

今回は、Amazonがもたらすインパクトの一端をNYの生活、そして社会経済を通じてご紹介させて頂きます。

Amazonの広範な影響力に圧倒されて筆がとまらず、2部構成でお届けします。

極寒の2月もホットなアメリカ


2月のアメリカは、オスカー(アカデミー賞)やグラミー賞の発表や一大消費のイベントであるバレンタインデー、そして、ブラックヒストリーマンス(黒人歴史月間)という黒人(アフリカ系アメリカ人)の歴史を回想し、学ぶという年間行事があり、極寒の季節ではありますが、気持ちはとてもホットで賑やかです。なかでも、どの人もお祝いするのが、やはりバレンタインデー!アメリカのバレンタインデーは皆さんご存知のように日本と異なり、女性から男性にチョコレートをプレゼントするのではなく、恋人や家族、友人、知人、職場の人など、日ごろから愛している人、お世話になっている人に感謝の気持ちや愛情をプレゼントやカードを渡して双方向に伝え合う日です。

アメリカでも日本と同様、いやそれ以上にバレンタインデーは一大消費イベントの一つで、バレンタインデーのカードやプレゼントの準備期間はデパート、スーパーなどの小売店はもちろん、特にドラッグストア(ニューヨークで代表的なのはDuane ReadeやCVS Pharmacy)では常にカードコーナーがあるのですが、バレンタイン期間はたくさんのカードに加え、チョコレートやキャンディーなどのスウィーツや、生花の花束などが並びます。男性は女性に花束とカードを送る人が多いようで、私のアパートのエレベータでもバレンタインデー当日は帰宅時に花束を抱えた複数の男性と乗り合わせました。たくさんの男性が花束を抱えてなんだかそわそわしている様子はとてもキュートでした!

私といえば、プライベートでは娘がクッキーを作りたいというので、ごく簡単なココアクッキーを一緒に作り、娘にバレンタインカードに絵をかかせて夫に渡したくらいなのですが、娘のプリスクールのバレンタインデーがこれまた準備がものすごく面倒だったのです。。。バレンタインデーの1週間ほど前に、娘のクラスからのお知らせの紙が入っており、次の3つのことを準備してほしいとの先生からの連絡がありました。まず一つ目はバレンタインのバッグづくり。紙バッグもしくは靴箱を子どもと一緒にバレンタインのデコレーションをして来週までに持ってくること。二つ目は義務ではないのですが、クラスの子どもたちに小さなプレゼントをしたい人は、各自準備してパーティまでに持ってきてください。クラスには女の子が11人、男の子が6人いますとの添え書きが。そして三つ目はバレンタイン当日に子どもに何か赤をテーマにした服を着せること。そして極めつけはこの3つのミッション以外に追加のミッションがメールで先生から、バレンタイン当日、クラスで行うバレンタインパーティの準備ボランティア要請がありました。メールに書かれたリンクをクリックすると、パーティの準備品であるバナナやイチゴ(洗って子どもが食べれる大きさにカットしてきてくださいとの注意書き付)、ペットボトルの水、紙皿、紙フォーク、ペーパーナプキン、テーブルクロス、、、、などなど、それぞれの準備物の内容と数がリストアップされ、それぞれ自分が担当するものを任意にサインアップするようになっていました。

踊るバレンタインデー大作戦!


 一つ目、三つ目、そして追加のミッションは早々にこなし、さて、問題は二つ目のミッションである、子どもたちのへの任意のバレンタインミニギフトをどうするか。まだ3歳の子供たち。お菓子をあげるのもどうか、何を渡したらよいのやら全く分からず、頭を悩ませました。周りの日本人のママたちや直接先生に尋ねてみると、大抵はバレンタインカードを渡し、他にもターゲットなどのスーパーマッケートやダラーショップ(日本の100円ショップに相当するお店)にバレンタイン用に12個入り、20個入りなどで子ども向けギフトセットが売っているので、それをクラスの子どもに渡したりもするとのことでした。


娘の寝かしつけを終えると、夜な夜なスマートフォンでAmazon.comを検索し、プリスクールの子ども向けバレンタインギフトとカードを検索しました。定番のチョコレート、キャンディーから、シールや小さなキーホルダー、おもちゃなどなど、バラエティに富んだ品揃え。結局、男の子用、女の子用、それぞれ無難なミニカードに鉛筆を貼り付けて渡すことにしました。さて、バレンタイン当日、任意でのプレゼントというものの、ほとんどの家庭が用意していたようで、学校に迎えに行くと、自宅でデコレーションした紙バックはミニギフトで一杯(写真)。なんと、クラスの先生2名からのギフトも入っていました。先生からのギフトはお菓子。ハートのかわいいクレヨン(これはお菓子ではないので食べられません、というメッセージ付)や、どこかのペストリーショップに頼んだのか、ハート形にテントウ虫のアイシングをあしらったクッキーなど、趣向を凝らしたものもたくさん。クラスのアメリカ人家庭に存分に感化され(娘のクラスには日本人の子どもは残念ながら一人もいません)、来年からはもっと気合を入れて準備をしなければと反省しつつ、アメリカという国はイベントを皆で楽しみ尽くす国民性で、こういったポジティブなイベントを皆で楽しむことで、連帯感や繋がりを生み出し、それらがこの国のポジティブな原動力の一つになっているのかもしれないと思う今日この頃です。

Amazonに踊らされたNYC

さて、Amazonといえば、日本同様、アメリカのライフラインとしてもはや欠かせない存在となっていますが、2月のニューヨークを賑わせたのは、Amazonのニューヨーク第2本社計画からの撤退というニュースです。Amazonは昨年11月に第二本社の一部をニューヨーク市に建設すると発表。マンハッタンをイースト川の対岸に臨むニューヨーク市のクイーンズ区ロングアイランドシティ地区です。この地区をどこかに例えると、私の主観ですが、東京都の豊洲と神奈川県横浜市の赤レンガ街地区をミックスしたような場所でしょうか。以前は暗い倉庫街でしたが、近年再開発が進み、たくさんの高層マンションが建設されるとともに、この地区はアートに力を入れており、ペプシコーラのネオンサインやユニークなデザインの図書館などが存在します。イサム・ノグチのミュージアムもこの地区にあります。
reference from https://www.nytimes.com/2016/04/13/nyregion/pepsi-cola-sign-in-queens-gains-landmark-status.html

莫大なAmazon効果と反対の声

このAmazonの移転の効果として、Amazonは2万5000人の新規雇用、地元住民に対する就職支援と投資を発表し、向こう25年間に270億ドル(約2兆9300億円)の新規税収をもたらすことが予測され、アンドリュー・クオモ知事とビル・デブラシオNY市長が中心となり、この移転誘致を熱心に進めていました。しかしながら、既に裕福な企業に税金を使って優遇することに対して地元の民主党議員や住民から強い反発が出ており、SNSなどを中心に反対運動が過熱。AmazonのロゴをあしらったAmazon反対ロゴを携えた抗議デモなどが展開されていました(写真)。Amazon側もクイーンズ地区の住人宛にAmazonから年賀状が届き、新年の挨拶として移転のメリットを強調するメッセージが届けるなどしたものの、それも反発を買うだけに終わり、ニューヨーク州と市による28億ドル(約3093億円)にも及ぶAmazonへの優遇助成金に対する強い反発は覆すことができませんでした(DAILY SUN NEW YORK, January 11, 2019, No. 3371記事より)。
reference from https://newsbeezer.com/amazon-to-see-new-york-protest-cyber-%E2%80%8B%E2%80%8Bmonday-boycott-by-unhappy-residents/

その結果、2月14日(バレンタインデー!)にAmazonはこの第2本社移転計画からの撤退を公式に発表。地元住民の強い反発に配慮した意思決定がされたようです。クオモ知事やデブラシオ市長は面目潰れ、反対運動を推進した民主党左派議員らに厳しく抗議。反対運動に大きな影響をもたらしたとされるオカシオ=コルテス議員に対し、マンハッタンのタイムズスクエアのビルボードにはこんな痛烈な抗議広告が掲示されました。"Thanks for Nothing, AOC!"AOCとは、アレキサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員(民主)のこと。自由企業体制の保護を目指すテキサス州の無党派団体Job Creators NetworkがAmazonの移転計画からの撤退に対し、皮肉を込めて広告掲載したもの。タイムズスクエアにこんなバカでかい広告を出して非難するとは、いやはや、表現の自由さ、その規模とお金の掛け方はアメリカらしさを感じざるを得ません。そして、Amazonのアメリカ経済への影響の大きさをしみじみ感じるのでした。
reference from https://www.cnsnews.com/blog/craig-bannister/times-square-billboard-amazon-pullout-thanks-nothing-aoc 

後編では、買収したホールフーズスーパーマーケットにおける展開やアマゾンの配送サービスの日米比較など、アメリカを体現するAmazonの今をお届けします。

Columnist

Aya Kubosumi ノマドマーケター


コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。 

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