第3回 Amazon Is Too Great For Small Dreams-アマゾンの存在感_Part2 

19.03.15 11:17 AM By s.budo

Amazonの米国全土展開ー大規模スケールでの虎視眈々戦略

Amazonの存在感を感じるのは前編でお伝えした移転計画ばかりではありません。2019年1月には、マンハッタンのクライスラービル内にレジなしの販売店舗、Amazon Goを開店する見通しであることが報じられ、NYCでもその期待が高まっています。また、アメリカでオーガニック食品を中心に提供するスーパー、ホールフーズを2017年に 137億ドル(約1兆5000億円)で買収し、生鮮食品などの販売網構築にも力を入れ始めました。

現在はアメリカ国内の複数の都市でプライム会員向けサービスとして、Amazonのウェブサイトからホールフーズの食品や生活用品が購入でき、2時間単位のスロットでデリバリーをしてもらうことができます。35ドル以上の購入であればデリバリー料金は無料、30分以内の配送オプションは4.99ドルです。私も一度“物は試し”、と依頼してみましたが、アメリカでの買い物は一つの商品の分量が大きいので、とても重たくなるため、玄関まで届けてくれるこのデリバリーは雨や雪の日などには重宝しそうです。しかしながら、実際はデリバリーの人に15%程度のチップを渡す必要があるので、その分を鑑みると日本ではあまり安く感じないかもしれません。。。が、どのスーパーやレストランもデリバリーに人にはチップを支払う文化のあるアメリカではあまりネガティブなインパクトにはならないようです。実店舗でもプライム会員は、会員のバーコードを見せることで、期間や品物によりますが、10%から15%オフで購入することができます。先のサンクスギビングのホリデーシーズンには、ギフト類はAmazonが圧倒的なセールスを売り上げ、サンクスギビングに欠かせないターキーの売り上げもホールフーズとのタッグでかなりのセールスがあったという 記事もありました。Amazonの音声AIアシスタントAlexaに「ホールフーズで何がお買い得?」と英語でたずねると、プライム会員にはその日のお買い得品の情報を答えてくれたりもするようです。Amazonはホールフーズのプライム会員サービス供給をさらに強化する方針で、ホールフーズは小売業の実店舗が閉鎖に追い込まれ、年々縮小しているアメリカではめずらしく、実店舗を増やすため、閉鎖に追い込まれたスーパーの跡地などを積極的に買収しているようです。

他にも、2018年6月にはオンライン薬局を展開しているPillPackを買収しており、Amazonで買えないものはないという圧倒的な商品サービス展開と販売網、そしてブランドを構築し、その結果に甘んじることなく、顧客へのさらなるサービス体験を革新し続けています。例えば、NYのマンハッタンにもあるamazon books は書店ではありますが、書籍や雑誌以外にも家電、ガジェット、調理機器、おもちゃなどでカスタマー評価の高い商品やAmazon自社製品を展示販売しており、店内はAmazon売れ筋商品のショールーム兼店舗といった様相です。単に商品を陳列してあるだけでなく、今、どのような商品がAmazonで売れているのか、トレンドなのかという情報を、店内をぐるりと歩くだけで体感することができます。店内の入り口付近には、amazon booksでの滞在経験の評価を促す端末も置かれています。ホールフーズのみならず、Amazonがオンラインからオフラインの物理的な商業空間をも射程に入れ、革新的な顧客のショッピング体験をデザインし、提供し続けていることにAmazonの強さと、世界に冠たるアメリカを体現する、桁外れのスケールの大きさであることを感じてなりません。

セントラルパークの西南にあるタイムワーナーセンター内にあるamazon books

(筆者撮影)

店内には家電などの商品でカスタマー評価の高いものが陳列されています

(筆者撮影)

店舗入り口付近に置かれた、顧客の滞在経験のレビューを求めるオリジナル端末

(筆者撮影)

日本に軍配!アマゾンの配送サービス比較

実際に、米国Amazonと日本のAmazonを両方を使ってみた私からすると、そのサービスの質の違いにため息が出るときがありました。私にとっては、Amazonはすぐに届く、何でも買える、というのがサービス購買動機ですが、アメリカのAmazonはプライム会員になっても、注文したその日に届く品物はかなり限りがあります。通常、two day shipping が最も早く、早くとも有料でのGet it by tomorrow で、Get it today はほとんどありません。配送時間帯も選ぶことはできません。日本でもプライム会員だった私は2時間枠単位くらいで配送日と時間帯が指定できる日本のAmazonに慣れすぎていたためか、この粗い配送オプションにはフラストレーションが溜まりました。プライム会員の意味がない!とどうしても思ってしまうのです。送られてくるパッケージも、アメリカの運送会社の手荒い取り扱いでいつもぼろぼろ。中には注文したのにも関わらず、届かなかったものもありました(後日、払い戻しがありましたが)。日本では考えられないほどびっくりの配送サービスクオリティの低さですが、Amazonで注文したある商品をトラックすると、「この商品はイリノイのAmazon倉庫を出発しました」という表示が。この広いアメリカ、全米各地の倉庫から品物が送られてくるのです。飛行機とトラックを組み合わせたかなりの長旅なのです。当然のことながら、アメリカのUSPS(日本でいう日本郵便にあたる組織)や民間の配送会社であるFEDEX、UPSなどは配送の時間帯を日本のようにきめ細かく選べるオプションはありません。こんなに広い国土中から配送される商品を取り扱っているのですから、配達時間帯指定は物理的に難しい結果なのだろうと、ようやく最近理解しつつあります。逆に言えば、これだけの広大な規模の商品販売と配送を取り扱っている経験とデータがあるからこそ、日本のAmazonでは他のオンラインリテールの追随を許さないきめ細かいサービスが提供できているのではないでしょうか。

データという観点からも、米国Amazonで商品を購入すると、各ショップからのお礼やフォローアップのメールの尋常でない多さにびっくりするのですが、必ずと言っていいほど、写真のようなメールが送られてきて、あの手この手のメッセージや、レビュー記入のリワードのクーポンなどを提示され、購入した商品レビューを求められます。見切れないほどの商品の品数とページの中、顧客レビューの星の数が、まず顧客が商品ページを見るか否かの足切りになっているのでしょう。日本ですと、各ショップというよりも、Amazonからのレビュー依頼がメールで送られてくることはありますが、必ずしも毎回ではありません。ショップ側もかなり積極的にAmazonを顧客との重要なタッチポイントとして位置づけ、顧客からのデータやレビューを入手、活用しているようすが伺えます。

Quote by Ronald Reagan: “America is too great for small dreams.”

かつて、ロナルド・レーガン大統領はこんな言葉をアメリカに向けて発しました。

"America is too great for small dreams."直訳すると、「アメリカはちっちゃな夢をみるところではない」、含意としては、「アメリカなんだから、でっかい夢をみようぜ!」という感じでしょうか。この自由な、そして大国であるアメリカで、もっと大きな夢、ヒーローのような夢を抱こう、そしてそれを実現させようと、アメリカ国民を勇気づけたレーガン大統領の就任演説に由来する言葉のようです。この言葉をたまたま、ニュージャージー州にあるニューアーク空港の近隣の大きなビルに掲げられているものを先月に見たので、この言葉を知ったのですが(写真:掲げ方もアメリカらしく、アメリカ国旗と共にビッグにだーんと掲げられています)、米国Amazonを使うたびに、この言葉を思い出すのです。

●Amazon創業期のロゴ

Amazon自体が、オンラインショッピングの熱帯雨林、広大なアマゾン川を中心に展開する熱帯雨林の生態系を日々生成しているのでしょう。これに対抗できるのは、インダス川くらいの規模でしょうか笑。アメリカだからこその、Amazon。単にアメリカを追従したり真似したりするのでは、日本で一時的に成功しても、恐らく、世界で戦ったり、継続的な成功を勝ち得ることは難しいだろうと、アメリカのビジネスを見て感じざるを得ません。日本だからこその価値から生まれ、世界と戦えるサービス、商品、ビジネスがこれからもどんどん出てくることを祈って止みません。

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ビジネス、公的な活動問わず、アメリカのこれらの事例から何かのヒントがお届けできれば幸いです。みなさんからのコラムに関するご質問や、こんなことを聞いてみたい、知りたい!というリクエスト、叱咤激励などなど、24時間365日お待ちしております。ではまた次回コラムでお会いしましょう。

Columnist

Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。

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