手触り感のある心通った時空間を提供する小さなホテル
フォスター・サプライ・ホスピタリティー社
Airbnbのホストが地元で上質な食事の時間を楽しめるのはここと教えてくれたのが、リビングストーンメナーの町から少し離れた場所にあるホテル、デ・ブルース(The De Bruce)です。
こちらのホテル、小規模ながら、シンプルで居心地の良いインテリアに囲まれた館内や客室、キャッツキルのストーリーを堪能できる料理が評判のレストランがあり、週末の宿泊予約はなかなか取れません。
このデ・ブルースを含む7つの小規模ホテルやレストランを古い家や建物をリノベーションしてキャッツキル・マウンテンの田舎に展開するのがフォスター・サプライ・ホスピタリティー社(Foster Supply Hospitality)です。
2014年に同社を創業したのは100年以上この地元キャッツキルに住む家に生まれ育ったシムス・フォスター(Sims Foster)氏と、そのパートナーであり、ニューヨークで金融セクターに従事していたクリステン・フォスター(Kirsten Foster)氏夫婦。
Forbesに掲載されているクリステン・フォスターさんへのインタビュー記事では古いホテルをリノベーションしていく過程について述べられています。
建物と対話から新たなホテルやレストランの場が生まれていたんですね。
ゼロから新たなものを作るのではなく、あるものに大切に寄り添い、活かし続けていくという姿勢がこのホテルやレストランを通じ、リビングストーンメナーのローカルコミュニティを再活性化している姿が目に浮かびます。
リノベーションした不動産販売、週末バケーションに沸くキャッツキル
Barnfox社と提携して宿泊施設を提供している企業には、同様に古い家や建物をリノベーションした不動産販売と、Airbnbのリスティングを通じてリノベーションした建物や家での短期間の宿泊を提供する事業を展開するウェスタン・サリバン・プロパティ社(Western Sullivan Properties)です。
こちらもキャッツキルベース、ウェスタンサリバンカウンティ地域でローカルに不動産事業を展開している企業のようです。
同社のウェブサイトにはそれぞれの家や建物が持つユニークさやキャラクター、場所性をもとにセレクトし、そのエリアのストーリー、歴史との繋がりを維持しながら、現代人の旅行者たちの要求も満たすようリノベーションしていると書かれており、先のフォスター・サプライ・ホスピタリティー社と同じような哲学を感じます。
同様にリノベーション物件の販売や宿泊施設提供を手掛け、キャッツキルで50件以上のバケーションレンタルを展開するレッドコテージインク社、2018年から省エネルギー住宅パッシブハウスをこのエリアで展開する The Catskill Projectなどがあり、2010年代半ばから現在に至るまでの間に、リノベーションを軸にしたキャッツキルエリアの新たな週末移住ツーリズム、および移住者向け住宅販売ビジネスが興隆しているようすが伺えます。
私が宿泊したAirbnbのホストのプロフィール文章には、
"We moved full-time from Clinton Hill, Brooklyn in 2016 and are huge fans of the area. "
(このエリアの大ファンでニューヨークブルックリンから2016年にフルタイム移住しました)
と書かれており、さらにこのエリアで不動産ビジネスを行っていることが付記されていました。
"フルタイム移住"という表現からは、週末移住や休暇中での滞在のような一時的な移住と定住との対比が感じられ、彼女のようにニューヨークブルックリンという都会に住む人々にとって、週末移住というコンセプトが極めて当たり前の概念として捉えられていることを興味深く感じました。
不動産ビジネスを展開していることもプロフィールに付記されており、彼女のこのAirbnb物件も、滞在する人や家族がこの地域に暮らすように過ごすこととその価値を体感させるショールームのような機能を持たせているのかもしれません。
このアップステートで起きている新たなビジネスのエコシステムの背景には何があるのでしょうか?