週末移住文化とコロナウィルスによるパンデミックが生んだ3種類の部族
パンデミック以前から、キャッツキルやハドソンバレーといったアップステートはセカンドハウスや別荘を構え、週末や休暇を過ごすバケーションライフを営む場所としてニューヨーカーたちに人気がありました。ニューヨークで同時多発テロ事件が起きた2001年9月11日以降、一時的にニューヨークからアップステートに退避する人が増えたと言いますが、実際にリビングストーンメナーを訪れてみると、今起きているアップステートへの週末移住、定住のトレンドはより大きなうねりを感じます。
そしてその背景には3種類のトライブ(部族)の存在が重なります。
一つ目のトライブ
二つ目のトライブ

同記事内にはシティからアップステートに移住したニューヨーカーたちのインタビューが掲載されています。
アップステートでの新ビジネスはシティで高騰した不動産との価格差だけでなく、都会でのビジネスにはない、ローカルなコミュニティとの連帯感、帰属心をもたらすのでしょう。同様にパンデミック前のウォールストリートジャーナルでは『New York’s second-home buyers head for the Catskills』というタイトルの記事にブルックリンからキャッツキルに移住した男性のインタビューを掲載しています。
すさまじいスピードで情報や人がフローすることでドライブしているシティと、土着感のあるアップステート。
アップステートがもたらしてくれる都会の孤独感、つながりやコミュニティへの所属の希薄さを埋める手触り感のある関係性と、心と身体を満たす生活の時空間がこの第二のトライブのひとたちをアップステートに惹きつけているのでしょう。
この第二のトライブがシティと行き来しながらローカルなストーリーや価値をシティに伝え、そしてまたローカルエリアにコミュニティを通じてビジネスの種をまき、受粉する存在になっています。
三つ目のトライブ
3つ目のトライブは週末移住、バケーション、ワーケーションなどでアップステートを訪れるニューヨーカーたちです。

アップステートのストーリーや体験を消費し、お金を落とす層です。コロナウィルスのパンデミックの到来で、人口密度が高い都市部から人口密度が低く、安全なこれらの地域に疎開する人が急増しました。
その結果、アップステートの地域での短期滞在需要が急増、不動産売買や古い家のリノベーション、短期滞在用物件レンタルを中心としたアップステートのゴールドラッシュを生んだといいます。
パンデミックでの疎開がアップステートにおけるAirbnb物件などの魅力的な短期滞在用物件を供給する機会となり、さらにそれらの物件の供給がこの第3のトライブの人々のバケーションやワーケーション物件レンタルと観光需要を押し上げるシナジーを生んでいます。
さらに言うと、短期滞在用物件がバケーションやワーケーションでの滞在経験を重ねることで、アップステートの魅力や価値を体感させるアップステート生活のショールームとして機能し、さらに定住者を増やすという流れを生んでいることも指摘しておきたいと思います。
3つのトライブが集うオープンな場とコミュニティ
ワイン、ビール、スピリット、サイダー
キングストンには3つのビール醸造所、ワイナリー1件、そしてビール、ワイン、サイダー、コーヒーが楽しめるRough Draft bar & booksという本屋さんが存在していました。








画像:https://www.roughdraftny.com/ より引用
ハドソンにはビール醸造所2件、ワインショップが1件、ワインバーを含めたバーが8件ほどひしめき合っており、それぞれのウェブサイトやグーグルマップにポストされている写真を見ると、なかなかこじゃれて居心地のよさそうなお店ばかりです。
リビングストーンメナーではビール醸造所が2件、バー、そしてUpstream Wine & Spiritsというワインショップが存在し、このワインショップはブルックリンから移住してきたオーナーが毎週土曜日にワインテイスティングイベントを開催しており、ハンモックが置かれた店内でリビングストーンメナーに集う様々な人たちがワインを楽しみながらオープンにつながり、語り合う場が営まれているといいます。
