ネイキッド店内でほぼすべての商品が購入可能
ネイキッドに展示されている商品は電気自動車、Eバイクといったものを除き、在庫があればサンプルをもらえたり、その商品を店内で購入したりすることができます。
私が訪問した際は4ブランドのサンプルをもらいました。
全ての製品には価格表記され、製品名、ブランド名、場所、そして製品キーワードが記載されています。
店内にはアンバサダーと呼ばれる5名の説明員が配置され、フレンドリーに各製品の使い方や詳細な説明をしてくれます。
こちらのネイキッドには2回訪問したのですが、2回目の訪問時もほぼ同じアンバサダーメンバーだったのですが、1人のアンバサダーが「あなたたちこの間来てくれたよね?」と入店するや否や声をかけてくれました。
商品知識も豊富なアンバサダーたち、その理由を聞いてみると、このアンバサダーをする前に一定の期間、展示されているブランドや製品についての知識や使い方などのトレーニングを受けたと話していました。
ブランドや製品の高度なキュレーションと統一された近未来的な展示デザインだけでなく、訪れた顧客との商品との接点づくり、体験を支援するアンバサダーはネイキッドを構成する重要な要素の一つです。


今回、何か一つ購入してみようと思い、OishiiのOmakase Berryにトライしてみようとアンバサダーに苺の味について聞いたところ、
「私ももちろん食べましたが、本当に甘くて感動しました。」
との感想。
ちゃんと製品を試しているようすが伺えます。
ちなみに、アメリカの苺は酸味が強いものが多く、日本で当たり前の甘い苺は本当に少ないのです。
アメリカでは日本のように高級フルーツというカテゴリが成熟しておらず、高級フルーツを販売する専門店はあまりありません。
私も思い切って一粒5ドルの高級苺にトライ、購入はカードです。
室内栽培だからでしょうか、苺の赤味は少し薄いように感じます。
店内でそのまま一口ぱくりと食べると、なるほど、アメリカの苺に食べ慣れてしまっている舌にはとても甘く、ジューシーに感じます。
トーナルのフィットネス機器も物は試しと、アンバサダーにお願いしてこの場でトライアルをさせてもらいました。
いくつか実際に試してみると、車の試乗やデパートの化粧品売り場でのメイクアップトライアルをした後のように、体験を通じてその製品との関係性が生まれるのを感じます。
D2Cブランドが抱える課題を解決せよ
ネイキッドのコンセプトが生まれた背景
ネイキッドの誕生は2人の創業者、ブルース・ギフォード(Bruce Gifford)さんとジャスティン・ケルザー(Justin Kerzner)さんが2017年にそれぞれ自身のアパレルブランドを展開していた際に、ブルース・ギフォードさんが自分のマンハッタンの店舗スペースに当時オンラインのみで展開していたジャスティン・ケルザーさんのD2C(Direct to Consumer:消費者へのオンライン直販)ブランド商品を間貸ししてポップアップ的に商品を置かせてあげたことに遡ります。
ネイキッドのコンセプトが生まれた原体験がここにあるのでしょう。
オンラインでそれなりの顧客を獲得し、さらにそれ以外の新規顧客を獲得し、売り上げを拡大しようとすると、直接的な顧客との接点やブランド体験を提供する物理的店舗が視野に入ります。
しかしながら、ロケーションのよい場所にある高額のテナント料を支払い、店舗スペースやインテリアをデザイン・施工し、POSなどの販売システムを整え、広告宣伝をコンスタントに展開しながら店舗スタッフを雇うなど、オンラインで顧客との直接取引に特化していたD2Cブランドが単体で物理的店舗を運営するには相当の投資が必要となります。
そこでネイキッドでは1か月あたり600ドルから900ドルのテナント賃料と8%から35%の売上収入のみの支払いで、3か月間ネイキッドの店舗に商品やブランドの展示販売、テストマーケティング、広告宣伝サービスをパッケージで提供することで、D2Cブランドなどが物理的店舗を展開することのハードルを下げようとしているのです。
近年、小売業界ではこの店舗運営に必要なテナント不動産、システム、スタッフ、などをパッケージ化して提供するサービスをSaaS(Software as a Service)のビジネスモデルにちなんで、RaaS(Retail as a Service)と呼ばれています。
日本でもビジネスを展開しているShopifyなどがRaaSを提供する企業として挙げられますが、オンライン店舗やPOSや在庫システム管理システムに特化している点で異なります。
展示スペースだけでなく、複数のブランドを一緒に展示することで比較的知られているブランドの知名度を活用した認知度アップが期待できるといいます。
確かに、今回ネイキッドを訪問した際は、ポールスター2とトーナルは通りから覗いて見える、入口から近い場所に展示されていました。
比較的認知度が高く、話題性があるブランドや製品をこのように配置することで、通りがかった人の入店を誘導するとともに、そこからまだ認知度が低いブランドへの関心を喚起するような動線、展示のデザインを試みているのでしょう。

また、製品やブランドの説明を行うアンバサダーを配置するとともに、ネイキッド店内に併設しているVimeoの協力を得たスタジオでソーシャルメディア向けのコンテンツ制作や写真や動画撮影なども可能です。
さらに売り上げや客足のデータ、顧客からのフィードバックも提供可能です。
物理的店舗をいきなり構える前に、テストマーケティングを行うことができ、かつ販売展示スペースの提供に限定することなく、店舗運営や広告宣伝、セールスデータなどをワンストップでサポートしてくれるサービスは成長過程にいるD2Cブランドにとって心強い存在でしょう。