NYノマド 第31回 米リテイル業界をドライブする体験型キュレーション店舗ビジネスとRaaS Part4

21.08.30 03:43 PM By s.budo

新興RaaS企業からのメッセージ 
RaaSと物理的店舗の意義

D2Cブランドが抱える課題を、物理的店舗をベースにしたRaaSサービス提供で解決しようとするネイキッドとショーフィールズ。
両者を実際に訪問し、経験してみると、似たようなソリューションを提供していますが、コンセプトや提供価値や機能にいくつか違いがあります。
写真:ネイキッド展示1例、筆者撮影
写真:ショーフィールズ展示1例、筆者撮影
例えば、ショーフィールズはショーフィールズのウェブサイト内で商品の購入が可能ですが、ネイキッドはできません。

ネイキッドのアンバサダーとショーフィールズのコネクターも一見同じような役割ですが、機能的な説明が多いネイキッドとストーリーの説明が多いショーフィールズ、結果として、顧客とどのようなな関係性を作るのかが異なるでしょう。

洗練され統一された店舗デザインに共通のキーワードやコンセプトで選ばれたブランドが置かれ、ブランド間のシナジーを重視した展示でブランドの認知度向上を意図するネイキッドと、日本の書店ビレッジヴァンガードのように個性的なブランドがそれぞれの個性を発揮する空間に置かれ、その時の出会いや関心を生むことに重きを置いた店舗や体験デザインのショーフィールド。

※2社の特徴を表にまとめてみました。
  ネイキッドショーフィールズ
購入店内で購入
 ショーフィールズのウェブサイトで購入
説明員 機能的な説明が多い(呼称:アンバサダー)
 ストーリーの説明が多い(呼称:コネクター)
店舗デザイン 洗練され統一された店舗デザイン
共通のキーワードやコンセプトで選択したブランド
ブランド間のシナジーを重視した展示
ブランドブース毎に全く異なる、ブランドと一体となった展示ブース
出会いや関心を生む様な展示や体験デザイン

顧客となるD2Cブランドにそれぞれがどう映っているのか、聴いてみたくなります。


ちなみに、訪問時に両者ともに展示していた共通のブランドは健康食品SAKARAとマッサージ機器のTherabodyの二つでした。

写真:sakaraサイトより画面キャプチャ
写真:therabodyサイトより画面キャプチャ

D2Cブランド向けに不動産探しから店舗デザイン、販売や在庫管理システム、販売員や管理者などのスタッフ、ブランディングやプロモーション、オムニチャネル対応など物理的店舗とオンラインショップにまたがったプラットフォームをRaaSで提供するリープ(Leap)創業者兼CEPのアミッシュ・トリア(Amish Tolia)さんは物理的店舗の意義について、マーケティングの看板、信用の証、注文と返品のロジスティックスハブ機能、そして素晴らしいカスタマーサービスと一生の価値を提供することであると強調しています


同様に、ショーフィールズのタル・ズヴィ・ナサネルさんはRaaS時代における小売業界のキーワード"5C"を説いています

①コンビニエンス:95%の新興ブランドがコストが原因で(物理的)店舗をオープンすることができない。ショーフィールズはスペース、ロケーション、そして新興ブランドが表明するメッセージをより手頃な方法で選択することを可能にします。

②コンテント:企業は彼らの顧客が起業にしてくれることではなく、彼らが顧客にできることを考えるべきです。今日の顧客は真正性を求めているのであり、インスタ映えする瞬間を創造することだけでは不十分。

③コミュニティ:どのようなコミュニティを体現しようとしているのかを理解するとともに、顧客が同じような考えや志向を持った人と接することができる物理的スペースを提供すること。

④キュレーション:全てのブランドの声は今日今まで以上により重要になっています。個々の顧客の経験をスポティファイ(Spotify)やネットフリックス(Netflix)のようにカスタマイズし、エモーショナルなつながりを構築すること。

⑤コネクション:フィジカルとデジタルを繋ぐ場合、顧客はチャネルに関わらず、全てがシームレスで欠陥なく機能することを期待している。
この5Cはポストコロナ時代の小売業界がD2Cブランドを軸に業界を革新していくための要素と言えるかもしれません。

体験型ショールームのRaaSサービスはネイキッドやショーフィールズの他にも、アメリカでニューススタンドと言われる駅の売店をモダンにし、キュレーションした商品を置いたお店で東京にも店舗を持つ、ニュースタンド(New Stand )や、テキサス発、デパートの新たなコンセプトと文化構築を目指すネイバーフッド・グッズ(Neighborhood Goods)などがあります。

今後もこれらの企業が小売業界に存在感を高めていくことは間違いないでしょう。

コロナウィルスによるパンデミックで休業を余儀なくされた小売業界の物理的な店舗は死んだともまで言われる状況に追い込まれました。
しかしながら、コロナウィルスによるパンデミックでガラガラに空いたテナントや貸店舗が、RaaSを導入した新興D2Cブランドで埋まっていく未来がほどなくやってくることを予感せずにはいられません。

それではみなさんまた次回のコラムでお会いしましょう。
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Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。

s.budo