みなさん、こんにちは。
日差しは強いものの、涼しい風が秋の到来を感じさせる晩夏のニューヨークです。
コロナウィルスはデルタ種などの影響でこちらでも下火にならず、新規感染者数は8月31日で3894件と増加の傾向をたどっています。
そして9月13日からは違反者には1000ドル以上の罰金が科される予定となっています。
9月からの新学期開始で、この状況がさらに悪化することが予想されてはいるものの、レストランやお店などはオープンしており、マンハッタンも一定程度の人出はある状況です。
コロナ感染の抑制と経済活動のハンドルとブレーキを巧みに使い分ける状況がしばらくは続きそうです。
コロナ禍で多くのアートギャラリーがビジネスの中断を余儀なくされ、苦しい状況に追い込まれていますが、そのような中でも、ニューヨークでは新たなアートビジネスが生まれ、頭角を見せ始めています。
今月のコラムではニューヨークの新たなアートビジネス、スタートアップをご紹介し、そこから見える変化の兆しについて考えてみたいと思います。
- Part1. ストリートアートNo.1の都市、ニューヨーク
- Part2. NFT(非代替性トークン)アートの誕生と歴史、NFTアートとパンデミック
- Part3. プレイフルで前衛的なNFTアートたちが飾られたイマーシブなギャラリー空間、アーティストを支援するプラットフォームとしてのNFTアート
- Part4. 誰がNFTアートを買っているのか?、NFTアートはどこへゆくのか ―NFTアートの可能性と未来への示唆
ストリートアートNo.1の都市、ニューヨーク

5.5メートルあるこの作品、KAWSがよくモチーフにしている アイコニックなキャラクター、“コンパニオン(COMPANION)”と “ビー・エフ・エフ(BFF, Best Friends Forever)”から構成されています。
以前のように観光客であふれるニューヨークに戻るにはまだまだ時間がかかりそうですが、このような状況でも商業施設やニューヨーク市という街からアートを介してメッセージを発信するとともに、アートが組み込まれた生き生きとした公共空間を生み出そうとしている姿勢にニューヨークらしさを感じます。
ニューヨークはメトロポリタン美術館やニューヨーク現代美術館などの著名な美術館だけでなく、パブリックアートが地下鉄の駅や公園、商業ビルや日常の公共空間に埋め込まれているとともに、道を歩くたびにカラフルでポップなグラフィティや力強いメッセージを感じるミューラルなどのストリートアートを目にすることができます。

マンハッタンのアッパーウェストの建物の壁に書かれたバンクシーの"ハンマーボーイ"の写真を目にしたことがある皆さんも多いかと思います。
ゲリラ的に表れるパブリックアートやグラフィティを、街を歩きながら楽しむことができるのもこちらニューヨークの醍醐味です。

記憶にある初めて見た著名なアート作品は美術の授業の教科書の中という私にとっては、こちらに来てから何気なく歩いていると目の前に現れるグラフィティやウィットに富んだニューヨークの地下鉄駅構内のパブリックアートに、アートとの物理的、心理的距離が縮まったように感じます。
昨年の年末、旅行なども行けずにコロナ禍で自宅で過ごす毎日に、たまには非日常的な時間を過ごしたいと、ストリートアートのメッカ、ニューヨークのブルックリンでグラフィティアートのワークショップに家族で参加をしました。
テキスタイルのキャンバスにスプレー缶でグラフィティを描く体験をするものです。
ワークショップやグラフィティツアーのホストを務めているGabe Schoenbergさんに手取り足取り教えてもらいながらの時間の中で、
- 人目に触れぬように深夜や人がいない場所で描かれるグラフィティグラフィティがコロナ禍で人通りが少なくなったニューヨークでかなり増えていること、
- 観光客メインだったグラフィティツアーやワークショップの客足が落ち込んでいるものの、地元ニューヨーカーたちの参加が増えていることなど、
ストリートアートシーンとビジネスの狭間で起きている変化をぽつぽつと語ってくれたことが印象的でした。

ストリートアートはニューヨークの街になくてはならない存在です。
それを示すように、最近、オンラインでアートギャラリービジネスを展開するフランス企業のシンギュラート(Singulart)がソーシャルメディア内に投稿されたストリートアートに関連したハッシュタグデータを分析したLinkfluenceデータをもとに、アメリカのストリートアートの首都(ホットスポット)を決める試みをした記事を公開していました。
結果は圧倒的な大差でニューヨークが第1位でした(307,000エンゲージメント、第2位シカゴ 76,300エンゲージメント、第3位ポートランド 57,200エンゲージメント)。
ストリートアートやパブリックアートなしにはニューヨークを語れない、そんな存在になっていることが分かります。