NFTアートの誕生と歴史
さてこちらの画像、皆さん目にしたことがおありでしょうか。

続いて、こちらのGIFアニメはいかがでしょうか。
少し前のものですが、目にしたことがある方も多いかもしれません。
この2つのデジタルアート、
NFT(Non Fungible Token、非代替性トークン)アート
もしくは
クリプトアート
と呼ばれるもので、
前者は2021年3月に758万ドル(日本円でおよそ8億3400万円)で売られたLarva Labsによるデジタルアートクリプトパンクス(CryptoPunks)の"CryptoPunk #3100"、
後者は2011年4月にアップロードされ、瞬く間にネット上話題となったGIFアニメ"ニャンキャット(Nyan Ca, )"で、2021年2月におよそ60万ドル(日本円でおよそ6100万円)で売買されました。
https://www.businessinsider.com/ethereum-nft-meme-art-nyan-cat-sells-for-300-eth-2021-2
https://opensea.io/assets/0x3b3ee1931dc30c1957379fac9aba94d1c48a5405/219
いずれも近年注目を集めるNFT(Non Fungible Token)アートです。
クリプトパンクスは24×24、8ビットのピクセルアートで、パンクをテーマにした100000種類のキャラクターがあるコレクション作品です。
このLarva Labsはニューヨーク市ブルックリン区に拠点を置いています。
ニャンキャットは米テキサス州ダラスのChris Torres氏が制作したGIFアニメに初音ミクによるボーカロイド曲がつけられています。
ちなみに最も高額で取引されたNFTアート作品はBeepleとして活動するアーティストMike Winkelmannの"Everydays—The First 5000 Days"で、なんと6900万ドル(取引当時日本円でおよそ75億円)!
2021年3月にクリスティーズのオークションで取引されましたが、前年、2020年に取引された物理的な絵画でこの金額を超えた作品は2つしか存在しないそうです。

NFTアートは仮想通貨に用いられているブロックチェーンの暗号化技術を活用し、容易にコピーが可能なデジタルデータで構成されているデジタル資産に対して、著作権とは別に、オリジナル版であることの証明や売買取引、所有権履歴などの記録が付与され、識別することができるようになっています。
複製技術によりオリジナル性や希少性という価値が担保されづらかったデジタル作品にこれらの価値を付与することができるとともに、物理的な絵画作品と同様に、元値より高額で転売された場合、その利益をデジタルアート作品を制作したアーティストが得られるなど、デジタル作品を創作するクリエイターにとっても大きなメリットがあります。
NFTアートの誕生について書かれたニューヨークタイムズなどのウェブ上のいくつかの記事を参照すると、
2009年頃にビットコインが登場したのち、ニューヨークを拠点にアーティスト活動やニューヨーク大学で教鞭を執るKevin McCoy氏がクリエイターがiTunesなどのプラットフォームを介さずに、直接ファンや顧客にダイレクトに作品を売ることができるブロックチェーン技術のクリプトトークン(暗号トークン)のアイディアを考案、2014年に起業家Anil Dash氏とともに、自身のアート作品でクリプトトークン”Monegraph"を実験的に試作しました。
これが最初のNFTアートと言われています。
そして翌年に"Monegraph"を起業、2017年にNFTアートを売買するプラットフォームの展開を始めています。
https://ostachowski.com/about/what-is-crypto-art-or-nft-art/history-of-crypto-art/
現在のNFTアートは仮想通貨のイーサリウムのブロックチェーン技術が使われていますが、このイーサリウムベースの最初のNFTアートは先にご紹介したMatt Hall氏とJohn Watkinson氏によるLarva Labsのクリプトパンクスであると言われています。
彼らは他のブロックチェーン技術と比較してシンプルなプログラミング言語で構成されているイーサリウムのブロックチェーン技術を使い、一つ一つのクリプトパンクのキャラクターにNFTを発行し、イーサリウムで売買取引ができる金融商品を作り出しました。
10000体のデジタルデータのクリプトパンクスたちをコレクター商品のように購入し、集め、取引することが可能となり、唯一無二のデジタルデータを資産として購入、入手、保管、取引するNFTアート取引が本格的にはじまります。
つい最近では8月23日に大手カード会社のVISAがクリプトパンク" CyptoPunk #7610"を15万ドルで購入したことを明らかにしています。
https://www.cnbc.com/2021/08/23/visa-buys-cryptopunk-nft-for-150000.html
https://news.yahoo.co.jp/articles/77e3ebe57e2afb678332cb05c4ad260a6f8c172a

NFTアートとパンデミック
アメリカでワクチン接種が始まりつつあった2021年春頃、私もこのNFTアートが高額で取引されたと報じるTVのニュースで何度か目にし、コロナ禍で成長するデジタル資産のトレーディングブームに不可逆な変化を感じていました。
例えばNBAのスター選手の動画やデジタルトレーディングカードです。
NBAはNBAのスター選手たちの試合のハイライト動画やデジタルカードのNFT取引ができるマーケットプレイス、トップショットを2019年7月に立ち上げました。
レブロン・ジェームズ(LeBron James)選手がダンクシュートを決めたハイライト動画は38万7600ドル(およそ日本円で4256万円)で取引されるなど、新たな収益源と強力なファンコミュニティのプラットフォームになりつつあります。

こうしたNFT取引の興隆の背景には、コロナウィルスによるパンデミックの影響が指摘されています。
コロナ禍ステイホームの生活が続いた2020年は、街や外に出て、お金や時間を消費することができませんでした。
2020年9月から今年3月にかけて仮想通貨ビットコインは大幅な値上がりを見せたように、実体経済へのアクセスが制限されたトレーダーやコレクターたちがデジタル経済にシフト、大量のお金がつぎ込まれました。
同様の期間、仮想通貨への関心や投資の増加とともに、NFTアートも高額の取引が複数なされ、ソーシャルメディアのポストやメディアを介して多くの人の目に触れることになりました。
コロナ禍に時間やお金の消費先を探していた仮想通貨ユーザーやトレーダーたちがNFTアート取引に着目、多くのNFTアートトレーダーが生まれ、NFTアートの取引とそのコミュニティでのコミュニケーションを楽しむ一大NFTアート文化が形成されつつあります。
パンデミックがNFTアート市場や顧客、ファンを育てる機会を与えたと言っても良いかもしれません。
世界初の物理的NFTアートギャラリー in New York
コロナ禍で突如立ち現れたNFTアートのトレーディングブームの時期と重なるように、2021年3月25日ニューヨークのマンハッタン、ユニオンスクエア駅にほど近い場所に世界初のNFTアート専門のギャラリー、Superchief Gallery NFTが誕生しました。
Superchiefはニューヨークとロスアンゼルスで現代アートを中心としたアートギャラリーを展開、2016年にはニューヨークのソーホー地区でデジタルアートギャラリーをオープンしています。
ギャラリーでの展示、ギャラリーのウェブサイトに加え、OpenSea内にNFTアート作品の販売ページを設置しており、そこから作品を購入することができます。
NFTアート作品がどのように物理的空間に展示されているのでしょうか。
そしてNFTアートを物理的なギャラリーで展示するのはなぜなのでしょうか。
いつか実際にギャラリーを訪れて、NFTアートを体験してみたいと思っていましたが、ようやく今月、足を運ぶことができました。
実際にSuperchief Gallery NFTを訪れた様子をご紹介したいと思います。


ギャラリーはファーマーズマーケットで有名なユニオンスクエアから徒歩数分に位置する場所にあります。
周辺には1927年創業で、センスの良いオリジナルグッズや物理的店舗ならではの楽しさを提供するニューヨークに根差したブックストア、ストランドブックスやこぎれいなオープンカフェ、レストラン、家具やアンティークショップ、アパレルショップなどがあり、Superchief Gallery NFTの隣もギャラリーが軒を連ねるおしゃれなエリアです。
ギャラリーの目の前に到着すると、骸骨をモチーフにしたストリートアートの水色の看板とガラスに貼られたポップなアートが目に入ります。
よくよく見てみると、入り口のアートの一つは日本の警視庁のマスコットキャラクター、ピーポくんをモチーフにしたもので、ニューヨークのど真ん中でピーポくんに出会うとはどっきりしました。