NYノマド 第33回 高速スケール&ピボット(拡大&転換)し続けるアメリカのスタートアップ プロローグ&Part1

21.10.06 04:15 PM By s.budo

プロローグ
コロナウィルスワクチンのブースターショットが解禁、
華やかなブロードウェイとメットガラの再開

皆さん、こんにちは。


9月に入り、アメリカでは新学期が始まり、秋風が爽やかな季節となりました。短い秋を楽しもうと、公園で遊んだり、ジョギングやスポーツサイクルを楽しんだりする人で賑わっています。

924日からは、ファイザー/BioNtech社のコロナウィルスワクチンブースターショットが解禁となり、ニューヨーク州では65歳以上の人、もしくは介護、医療などの長期ケア施設入所者などの人がブースターショットを受けることができます。


冬のインフルエンザの季節の到来に向けて、処方箋薬局などでは9月からインフルエンザの予防接種サービスが始まっており、医療保険に入っていれば無料で受けることができます。

私も9月半ば、早々にインフルエンザの予防接種をCVSファーマシーのウェブサイトで予約し、最寄りの店舗で接種しました。冬に向けた準備が進みつつあります。


9月14日にニューヨークのブロードウェイミュージカル、「ハミルトン」、「ライオンキング」、「ウィキッド」、「シカゴ」の公演が再開の日を迎え、18か月という長い閉鎖期間をようやく終えることとなりました。

昨年2020年はコロナ禍で中止となったメトロポリタン美術館で開催されるファッションのチャリティイベント、メットガラがその前日9月13日に2年3か月ぶりに開催され、セレブリティたちが華やかなファッションスタイルを披露したようすがテレビなどのメディアを賑わせていました。

今回共同ホストを務めた日本人プロテニスプレイヤー大坂なおみさんは両親の出身国、ハイチと日本の文化を取り入れたルイ・ヴィトンのドレスを身に纏い、歌舞伎のようなヘアメイクで自らの出身ルーツやアイデンティティを表現していました。そして、今年のメットガラではセレブリティたちファッションだけでなく、ファッションにメッセージ性を込めた衣装で登場したセレブリティたちが話題を呼んでいました。

https://www.instagram.com/p/CTx5tUhLu-5/より引用

例えば、地元ニューヨーク州選出で民主党若手議員の顔となっているアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員は、ニューヨーク拠点で伝統的なアフリカの手工芸文化にインスピレーションを得た靴やバッグを展開するブラザー・べリーズ(Brother Vellies) が手掛けた真っ白なドレスで登場、ドレスのバックスタイルには"TAX THE RICH(金持ちに課税しろ)."という赤い大きな文字がペイントされていました。

彼女が発信したこの政治的メッセージは彼女の政策に叶ったものではありますが、メットガラのパーティは一つのテーブルあたり参加におよそ300,000ドル(日本円でおよそ3,322万円)かかります。この高額な参加費用を支払って同イベントに参加し、この内容のメッセージを発信することに対しては批判も多かったようです。


https://www.instagram.com/p/CTyhD5VsN8i/より引用
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_613fee33e4b090b79e87d30e より

また、同ニューヨーク州選出の民主党議員、キャロライン・マロニー下院議員も"Equal Rights for Women(女性にも平等の権利を)."と書かれた複数の肩章をたなびかせたドレスを着用し、男女平等憲法修正案を引用したメッセージを発信していました。

https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_613fee33e4b090b79e87d30e より

レズビアンであることを公表しているアメリカプロサッカー選手のミーガン・ラピノー選手はアメリカの国旗をモチーフにした赤いジャケットとブルー地にシルバーの星があしらわれたシャツに、"IN GAY WE TRUST(私たちはゲイを信じる)."と書かれたブルーのクラッチを脇に抱えてレッドカーペットに登場しました。

https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_613fee33e4b090b79e87d30e より

バイデン大統領の大統領就任式典で詩を披露した詩人、アマンダ・ゴーマン氏は自由の女神をコンセプトにした青いドレスで登場、自由の女神の台座に刻まれている詩人エマ・ラザラス (Emma Lazarus) の誌「新しい巨像 (The New Colossus)」にちなんだ一説、"GIVE US YOUR TIRED.(疲れ果てた群衆を私たちに送り給え)"と書かれた本型のクラッチを持って登場、自由と移民の国であるアメリカの歴史と現代のアメリカが抱える問題に光を当てるメッセージを発していました。

https://www.vogue.co.jp/change/article/them-elliot-page-met-gala-look より

他にも、トランスジェンダーであることを告白した俳優、エリオット・ペイジはバレンシアガのシックなスーツに身を包み、胸のポケットに性的マイノリティ、クイアのシンボルとなっているグリーンのカーネーションの花を挿して登場しました。

メットガラという人々の注目を集める華やかなファッションの祭典・チャリティの機会を活用し、自らの主張をファッションに託し、しなやかなに政治的・社会的メッセージを発信しているセレブリティたちの姿はとても印象的です。


ちょうど9月4日に、前回の民主党大統領候補に立候補し、現バイデン政権で運輸長官を務めるピート・ブティジェッジ氏が同性パートナーとともに女の子と男のことの双子の養子を迎えたことを自身のツイッターで写真と共に報告していましたが、こうした前向きで勇気ある発信をし続けることで、社会や人々が持つネガティブなバイアスが徐々にポジティブなものに変化していくことを後押ししていくのでしょう。

https://twitter.com/PeteButtigieg/status/1434167993769111552?s=20よりスクリーンショット画像を引用

社会への影響力、そして自らの役割とポジショニングを自覚し、それらを社会においていかんなく活用・発揮するということがセレブリティの存在意義の一つであることを実感します。これだけたくさんのリーダーやセレブリティたちが日常で社会にメッセージを発していると、私たち一人ひとりも声を上げやすい環境になりますね。セレブリティだけでなく、声を上げ続ける人々の存在こそが、このアメリカをポジティブな未来の変化を前に推し進める原動力であることはアメリカに住むことで最も力強く感じることの一つです。

パンデミック下でも成長と変化を続けるアメリカ企業たち

8月にアマゾンがアメリカ国内に衣料品を中心に販売する、およそ2800平米のデパートメントストアをオハイオ州とカリフォルニア州でオープンすることがウォールストリートジャーナルで報じられました

 

これに関する最近のウォールストリートジャーナル記事では、ロボット、QRコード、未来的な試着室など新たなテクノロジーを活用したこのアマゾンデパートで、アマゾンブランドのTシャツやジーンズ、そして他のブランド衣料品を販売する計画が報道されています


昨夏、久々にインテリアや家具用品を展開するイケアでオンラインショッピングをしたのですが、注文した商品の在庫切れや配送などの複数のトラブルで返金手続きを請求する際、お店で直接交渉しなければいけなかったり、合わせて電話やオンラインチャットで不毛なやり取りをしたりする経験をし、アメリカでのオンラインショッピングやサービスクオリティに辟易する経験をしました。

日本の高品質な配送クオリティやサービスではあり得ないような低品質のサービスがこちらでは当たり前のなか、アマゾンは返品、返金手続きがシンプルにオンラインででき、かつ複数の問題があった場合にも手軽にチャットを通じてカスタマーサービスとコミュニケーションすることができ、何か問題があった時の保険として、アマゾンのプラットフォームからショッピングをするという人も少なくありません。

このような高品質のサービスを提供し続けるとともに、パンデミックで220パーセント増という大幅に売り上げを伸ばしている同社が、これにも甘んじることなく、次の一手を講じ、実行の歩みを止めないことに驚きます。

 

アマゾンだけではありません。日常で利用しているサービスを、とある日に利用しようとアプリやウェブサイトを開いてみると、新たなサービスが追加されていたり、大幅に提供内容やウェブサイト、アプリが変わっていることにしばしば出くわします。

 

そこで今月のコラムでは、以前のコラムでご紹介した様々なアメリカのサービスを取り上げ、この数年の期間でどのような進化、変化を遂げているか、についてご紹介したいと思います。

  • プロローグ & Part1. 個人ドライバープラットフォームを活用した新サービスを続々と展開し続けるウーバー
  • Part2. ダーティサービスをスピード改善 ―進化し続けるグローセリーデリバリーサービスAVO
  • Part3. 次々にピボットされるサービスデザイン ―格外野菜宅配のサブスクリプションサービス Misfits Market
  • Part4. スタートアップたちの大胆なピボット、高速アジャイル改善から学ぶこと

Part1
個人ドライバープラットフォームを活用した新サービスを続々と展開し続けるウーバー

画像:ウーバーアプリ画面のスクリーンショット画像
画像:ウーバーアプリ内の各サービスのスクリーンショット画像
画像:ウーバーアプリ内の各サービスのスクリーンショット画像
画像:ウーバーアプリ内の各サービスのスクリーンショット画像

シェアライドプラットフォーム最大手のウーバーは、パンデミック最中の2020年4月に"ウーバーコネクト"という、荷物や物品の配送サービスを開始しました。

ウーバーのドライバーが直接引き取り、配送を行ってくれるサービスです。

同様にフードデリバリーサービス"ウーバーイーツ"内に追加されたスーパーやコンビニ、小売店などのショッピング、配送サービスを拡充し、同年7月に"ウーバーグローセリー"としてリリースされました。

 

そしてコロナウィルスワクチンの接種が2021年から開始されると、ワクチン接種会場までの無料送迎サービスを展開しました。

2021年9月末時点で、ウーバーのアプリにアクセスすると、シェアライド、フードデリバリーの主力サービスに加え、ウーバーグローセリー、パッケージ配送サービス、さらにはレンタカー、ワクチン接種会場への送迎とワクチン予約が可能なプラットフォーム、ウーバーワクチンの6つのサービスがラインナップされています。

グローセリーでは食料品だけでなく、近隣のドラッグストアや処方箋薬局、玩具なども購入および配達可能です。

2021年7月には日本の中古品売買プラットフォーム事業をアメリカでも展開するメルカリと提携し、ウーバーが個人間の中古品売買の配送を担うかたちで"Mercari Local(メルカリ・ローカル)"という新サービスの展開を開始しました

 

収益源となる事業ポートフォリオやサービスの拡充だけではありません。

今年に入り、消防や火事、事件や事故などの緊急通報を警察や消防などのファーストレスポンダーへの連絡を911の電話だけでなく、スマートフォンなどの様々なデバイス、ネットワークから直接緊急通報を行うことができるプラットフォームを展開するニューヨークのスタートアップ、ラピッド・エスオーエス(RapidSOSと提携し、ウーバーの車内もしくは乗車に関連して事件や事故が起きたり、ウーバードライバーが危険を感じた際に、ウーバー車内から直接、車の位置情報、車種情報、乗車している人の情報を911に送信できるよう、ドライバーや利用客の安全確保策を講じています


2021年9月にはハリケーンアイダで未曽有の被害を受けたアメリカ東海岸で、ニュージャージー州政府がウーバー、そしてシェアライドサービスを同様に展開するリフトの両社が提携し、ハリケーン被害で所有自動車が利用できない状態の人や企業に対し、無料もしくはディスカウント価格の乗車サービスを提供することをアナウンスしました。


さらに同様に9月には、ドレス・フォー・サクセス(Dress For Successと提携し、女性のウーバードライバーに対し、同社が各ローカルコミュニティで展開するキャリアアップや就業のためのコーチング、ネットワーキング、専門家からのアドバイス提供などへのアクセスを行うと発表しています。


ウーバーのプラットフォームの担い手であるドライバーたちへの低処遇への非難が指摘され続けていますが、コロナウィルスによるパンデミック時の送迎サービスの提供対応と同様に、ドライバーや顧客、コミュニティ対しても継続した貢献や信頼関係の構築に向けて行動しているようすが伺え、事業のみならず、企業としての役割を果たし続けることとはどういう事なのか、について考えさせられます。

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Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。