NYノマド 第33回 高速スケール&ピボット(拡大&転換)し続けるアメリカのスタートアップ Part2

21.10.11 06:23 PM By s.budo

ダーティサービスをスピード改善 
進化し続けるグローセリーデリバリーサービスAVO

コロナ禍から利用を始め、現在でも利用を続けている食料品や日用品の即日配達サービスの一つがアボ(Avoです。

画像:https://www.avonow.com/よりスクリーンショット画像を引用

2017年にニューヨークで創業したこちらの会社、現在はニューヨークおよびその近郊、イスラエルでビジネスを展開しています。

こちらのデリバリーサービスは、アマゾンが展開する生鮮食品デリバリーサービスのアマゾンフレッシュ、インスタカートなどとは異なるビジネスモデル、サービス展開を図っています。

それは企業、オフィスビルやテナントビル、マンション・アパートなどの集合住宅の管理会社やマネジメントとアボとが契約し、福利厚生やアメニティサービスとして、グローセリーサービスを提供している点です。


「B(アボ) to B(企業、テナント、集合住宅管理会社) to C(テナント)」というビジネスモデルですね。


日本の生協が、集合住宅だけでなく、オフィスやテナントビルでも利用できるというイメージが一番近いかもしれません。

2020年12月に、突如、私が住んでいるアパートの管理部門から、このアボのサービスを導入したのでアカウントを作ってぜひ利用してくださいと連絡がやってきました。

サブスクリプションにかかる費用や配達費は一切不要、朝11時までにオンラインでオーダーをすれば、夜7時までにマンションのロビーまで届けてくれます。


アマゾンフレッシュは有料のAmazonのプライム会員になる必要がありますし、インスタカートでは店舗ごとに異なる配達料を支払う必要があり、複数のお店をまたがった注文はできません。

これらの不便さを一切取り除いたサービスがアボです。


アマゾンフレッシュでは、近隣のホールフーズに置いていないものは買うことができません。

例えば、アルコールや医薬品は個々の店舗に行って購入しなければなりませんが、アボでは複数のスーパーや店舗が加入しており、食料品だけでなく、アルコール、医薬品、家電、生花などの商品を一つのプラットフォームで購入することができます。

オンラインショッピングでの無料配達は通常、配達無料になるまでの金額制限などがありますが、このような制限や配達料は一切かかりませんので、リンゴ一個から気軽に購入することができます。

 

C(テナント)にとってのメリットが多くあり、B(企業、テナント、集合住宅管理会社)にとっては、追加費用をかけることなく、テナントや社員が利便性の高いショッピングサービスを利用することできます。

そしてアボのビジネスにとっては、オフィスやテナントビル、集合住宅に一括で契約してもらうことで、個人に対して広告を打ち、会員登録をしてもらうという、宣伝、会員登録・契約にかかるコストを減らすことができます。

配送に関しても、個人宅に個別に配送するより、一括でオフィスビルや集合住宅に配送することができ、ある程度まとまったボリュームかつ同じ配達先の配達需要を効率的に捌くことができます。


こうしたビジネスモデルで、フェイスブック、アップル、マイクロソフト、ドロップボックスといった企業やニューヨークのオフィスビル、アパートメントなど、すでに1000か所以上の拠点に採用されているようです。

 

サービスのコンセプトや提供価値は三方よし、ですが、私が2020年12月に利用を始めた当初は、現在提供されているサービスの品質(現在もまだ発展途上の面はありますが…)からは想像もつかない、"ダーティプロトタイプ"とも言えそうな最低限のサービス提供内容から始まっていました。

しかしながら、1年も経たない間に高速にサービスを改善し、品ぞろえを拡充し続け、そしてこれでもかというインセンティブ策と会員の購買履歴やデータに基づいてパーソナライゼーションされたテキストメッセージや電子メールで、事業成長を続けています。

例えば、サービス利用開始当初はデリバリースタッフもまだ慣れていないせいか、必ずと言ってよいほど、注文した商品が注文通りに届かず、欠品があったり、傷んだ食材が届いたりすることが多くありました。日本の素晴らしい配送クオリティを経験している私にとって、このデリバリー品質はかなりのフラストレーションでした。

この配送レベルでデリバリーを行うのかと疑問を持つことが何度もあり、今でも稀にあります。


しかしながらメールですぐにアボにクレームを入れると、1時間立たないうちに即座に返信があり、お詫びや返金、もしくは再手配と共に、損害に応じた金券クレジットや、ディスカウントコードが送られてきます。

「10ドルのクレジットをもらったから、またこのクレジット分で何か購入しようかな」、と思わせ、つい、また利用してしまうのです。このカスタマーサービス対応は他の類似サービスと比較してもレベルが高いと感じます。

こうして低い配送クオリティを、高いクオリティの顧客対応でしのぎつつ、この間にデリバリースタッフをトレーニングしていったのでしょうか

少しずつ配送クオリティが上がってきており、配送ミスやダメージも依然と比較して少なくなってきていると感じます。

画像:アボが取り扱っているBuy Localに加入している店舗、https://www.avonow.com/product-category?firstCategoryId=656よりスクリーンショット画像を引用

取り扱い店舗や商品のラインナップも然りです。


私が加入した当初取り扱われていた商品は、食料品(乳製品、野菜・果物、食肉、冷凍食品、加工食品、飲料)、アルコール飲料、トイレットペーパーや洗剤などの日用品、家電、ペット用品、生花で、お世辞にも品揃えも多くありませんでした。

全米で小売店を展開するターゲットに行けば、同様の商品は全て手に入るレベルでしたので、買い物に行かなくてよい、運ばなくてよい、という点しかメリットはありませんでした。

しかしながら、月に数回ほど、水や牛乳など重いものを頼むために利用していたのですが、その度に商品カテゴリが増え、提携する店舗が増え、気づくと、ニューヨーク近隣のローカルな肉屋やパン屋、コーヒー店、おしゃれなクッキーショップ、フラワーショップなどから買うことができる"Buy Local"、近郊の農場や牧場の商品を取り扱う"Farmers Market"、サンドイッチやピザなどの総菜を購入できる"Prepared Meal"コーナーが続々と新設されていき、今でも店舗や品揃えが拡大し続けています。


家にいながら、ファームの季節の食材や、ニューヨークで人気のあるチョコレートやクッキー、コーヒー店などの商品を購入することができ、買い忘れたものを購入するだけでなく、ちょっとした手土産を買うのにも重宝しています。

1年経たない間にこれだけのラインナップ拡充がされていることに驚きますが、今の状況に甘んじることなく、今後さらにドライクリーニングやドッグウォークサービス、建物の清掃などのサービス拡充を計画しているといいます

このコラムを執筆中にも、スマートフォンに「リクエストが多い食料品とパーソナルケアアイテムはこちら!新しいSpecialtyのカテゴリを探索してみてください。」というテキストメッセージが届き、顧客からのリクエストが多い商品を取りそろえたコーナーが新設されたことを知らせてきました。


初回利用時は必ず10ドル分のクレジットがもらえ、10ドル分を購入金額に充てることができたり、顧客の購買履歴に基づいて、しばらく購買がない顧客には全商品20%オフとなるクーポンを送ってきたり、「〇月×日までに購入すれば、5ドルのクレジットをプレゼントします。」といったテキストメッセージを送るなど、ターゲティングされたインセンティブ策を積極的に実行しています。


こうしたカテゴリや商品の拡充、個々の顧客にカスタマイズしたインセンティブ策といった地道な努力が、配送クオリティの低さというペインポイントをカバーしているのでしょう。

画像:顧客ごとにカスタマイズされ送られてくるスマートフォンへのテキストメッセージ、筆者スマートフォン画面スクリーンショット画像を引用
画像:アボが取り扱っているショッピングカテゴリ、https://www.avonow.com/よりスクリーンショット画像を引用

日本で新規事業やサービス創出のお手伝いをしていた経験を振り返ると、日本の場合、サービスオペレーションや提供価値のあらゆる側面である一定程度のクオリティを担保できないとサービスをローンチしないという、言ってみればバイアスのようなものがあるように感じます。ある程度完璧でないと、サービスや事業をリリースしないというスタンスです。

しかしながら特にアメリカのスタートアップでは、未完全OK、とにかくある程度形になったら外に出す。そして、外に出してから、ネガティブなものも含めて、顧客の反応や評価を見ながら高速で改善していく、という姿勢です。


一見、失敗するリスクが強いように見えますが、現在存在しないサービスは出してみないとその価値が分かりませんし、守りに入ることなく、顧客が必要とする価値を創出し、提供し続けるという顧客と共に事業やサービスを育てていくという考え方に重きが置かれているのかもしれません。

顧客も、自分たちも、そして環境も変化していく中で、一定の前提を置き続けるのは意味がないというメッセージにも取れます。そしてその先にアマゾンのようなプラットフォーム化、ビジネスのスケールの可能性が見えてくるのでしょう。


このようなスタートアップのマインドセットや文化をこのアボを利用するたびに感じずにはいられません。

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Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。