NYノマド 第34回 様々なアメリカの商品サービスに見る、"効率"の哲学とデザイン発想 Part1

21.11.08 04:37 PM By s.budo

切れないなら、カッターで切ってしまおう 
―  Reynoldsのラップ​  ―

今回のキャンプのエピソードを反芻するなかで、日ごろ何気なく使っているキッチン用品や食品、サービスで"アメリカ的な効率性"を感じるものが頭の中にいくつか浮かんできました。

渡米してからこちらで日本人のママ友や友人と話すと、日本の配達サービスとパッケージデザインのクオリティの高さが抜きんでていることをアメリカで痛感すると話す人が少なくありません。

前月のコラムでもご紹介しましたが、野菜のデリバリーサブスクリプションサービスの配達でスイカが見事に割れて届けられたことから始まり、段ボールのパッケージがボコボコになっていたり、破けていて商品がそこから落ちたようで、中身がなくなったりしているなんてこともありました。
パッケージのデザインでは、毎日利用するものほど、その利便性の受益性が高く、逆に開けづらかったり、使いづらかったりすると、その不便さのストレスは大きくなります。

こちらに来た当初、ストレスが大きく感じる一番の日用品の一つが、食品を包むラップでした。

日本のサランラップ、クレラップは"パリッ"という音と共に切れ味よく、切れ、包むのも非常にスムーズです。しかしながらアメリカのラップはカッターの刃の品質もさほど良くないとともに、ラップ自体の品質も悪く、ぴたっと包むことが出来なかったり、ラップが途中で破れて使い物にならなくなったりすることもしばしばありました。
日本に一時帰国した際に、サランラップを大量に購入して帰ってくる友人がいるほどです。アメリカに売られているラップもいくつかの主要なブランドや、リテイル独自のブランドのものなど、複数ありますが、いくつか使ってみる中で、許容範囲と感じるものに出会いました。

写真:自宅で使用しているレイノルズのスライダー式カッターのラップのパッケージ、筆者撮影
写真:レイノルズラップのカッター部分、筆者撮影
ご覧のように、スライド式のカッターがついており、このカッターでジップロックバッグのスライダーで袋を占めるように、スライダーでバシッとラップを切るデザインになっています。
他の類似商品と比較し、ダントツにカッターの切れ味自体はよいのですが、時々、カッターの刃とパッケージの隙間に薄いラップフィルムが挟まってぐちゃぐちゃになり、カットがスムーズにできないこともしばしばあります。
よくよくデザインを見てみると中央に小さな粘着面があり、そこのラップフィルムを止めておくためのものと考えられますが、スライド式カッターの高さ分で、その粘着部分にラップがピタッと貼られることはほとんどありません。

ラップフィルムの品質も日本の類似製品と比較すると密封しづらさは残っていますし、使い終わってからパッケージを捨てる際、スライド式カッター部分はパッケージ箱部分から取り外せないデザインになっているため、リサイクルがしづらく、カッターをつけたまま捨てなければならない罪悪感がいつも残ります。

カットする、という点においては機能しているこのソリューションも、ラップを利用し、捨てるまでの全体の利用プロセスの視点から観ると、全く最適化されていません。

それと比較して、日本のサランラップ、クレラップは、歯の部分も簡単に手で取り外せるようになっていますし、製品によっては歯自体が紙製になっているものもあり、簡単に分別して捨てることが簡単にできます。

ラップフィルムとカッターの刃の両方の品質を向上させ、切れ味の良いラップ製品を生み出している日本に対し、このアメリカのレイノルズは、スライド式カッターを採用するというソリューションのみを採用していることから、"ラップフィルムをカットする機能"のみ、局所的にフォーカスし製品を改善するというデザイン思想が垣間見えます。

恐らく、ユーザーの最も大きなペインポイントが、ラップフィルムを切ることだったため、このソリューションを採用したと考えられ、全体的な最適化より、局所的なペインポイントの改善に目が行く点に、アメリカの課題解決におけるデザインと効率性思想を感じます。

ワンプッシュで、効率的にオイルを塗布 
―  トレーダージョーズのスプレータイプのクッキングオイル   

続いてご紹介したいのは、これもこちらに来てから手放せなくなった、スプレータイプのクッキングオイルです。

写真:トレーダージョーズのキャノーラオイルスプレー(2.49ドル)とアボカドオイルスプレー(3.49ドル)

日々の買い物のルーティンに入っているスーパー、トレーダージョーズ(Trader Joe’s)で2.49ドルという手軽さが魅力の、キャノーラオイルスプレーです。


日本ではスプレータイプのオイルは主流ではないと思いますが、こちらアメリカでは、パム(PAM)というブランドがメジャーで、スーパーやターゲットなどの小売店で簡単に入手できます。

こちらに来て初めてスプレータイプのクッキングオイルを使うようになりましたが、アメリカでは通常の液体タイプとともに、このスプレータイプのオイルが使われているようです。

週末の朝食にソーセージやパンケーキを焼く、夜ご飯に肉を焼く、野菜をオーブン焼きにするという程度で日常で手の込んだ料理はあまりしないアメリカでは、家庭でのオイルの利用量、頻度はそこまで多くないかもしれません。

それと比較して、和食から中華、イタリアンなど、炒め物から揚げ物まで、油の量も様々なレシピを日々献立の中で作る日本、この食文化の違いも大きく反映された結果、日本では液体タイプのオイルがメインであることが考えられます。

ちなみに、アメリカ料理はポテトフライ(フレンチフライ)やハンバーガーなど、油をたくさん使った料理が多いですが、専ら、レストランやデリバリーをして食べます。


スプレータイプは油の量が比較的少なくて済むため、炒め物や焼き物の際にはフライパンにこのスプレーをプシューと一吹きして使うようにしており、ホットプレートなどでホットケーキを焼く際にも重宝しています。

こちらのトレーダージョーズのスプレータイプのオイルは、この1年でパッケージデザインががらりと変わったのですが、この新たなデザインでは、スプレーの一吹きも刷新されました。

写真:トレーダージョーズのスプレーオイルをフライパンに吹いた様子
写真:トレーダージョーズのオイルスプレーの噴射口(右)、市販の日焼け止めスプレー(左)

使い方はごく簡単で、キャップを取り除き、スプレーを一吹きするだけです。

通常スプレーで塗布すると、円を描くようなかたちでスプレーが噴出されると思うのですが、こちらのトレーダージョーズのオイルスプレーを一吹きすると、、、なんと、噴出するオイルが90℃くらいの角度の扇状に噴出されるのです。

この扇状のスプレー噴射により、手を左右に動かすだけで、フライパン面に効率的に油を塗布することができるのです。今までの円面タイプの噴射デザインの場合、フライパンの中心から演習外側に沿ってぐるぐるとスプレーを噴射しますので、噴射時間が5秒前後かかっていたのではないでしょうか。

こちらのタイプになってから、左右に動かすだけになりましたので、およそ2~3秒、約半分の塗布時間で済みます。

油を効率的に塗布する、というスプレータイプのオイルのデザインをさらに進化させたこの噴射部分のデザイン、初めてこの新デザインの製品を使った際に、思わず、「おお~」と言葉が漏れてしまいました。

この噴射口をじっくり見てみると、通常のスプレー缶は、噴出孔部分は丸くデザインされていますが、こちらのオイルスプレーは噴射口が長方形で、噴射面が直線にデザインされています。なかなかユニークなこの噴射のデザイン、効率的にオイルを塗るというニーズの中身を「より少ない量と時間でムラなくフライパンにオイルを塗る」という要件に定義した結果、この噴射口のデザインが採用されたのでしょう。


ここでも、"効率性"を具現化した機能が鮮やかに展開されています。

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Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。