新たなブランドの役割
ノンバイナリー、インクルーシブなコミュニティ構築ムーブメントの加速
そしてもう一つの新ブランドは、パキスタン出身で大人気のネットフリックスシリーズ、「クイア・アイ」でゲイの5人のホスト、ファブ・ファイブの一員でもあり、ファッションデザイナーのタン・フランス氏が立ち上げたファッション・ブランド"ワズ・ヒム(WAS HIM)"です。
プリージング
あなたの心を喜ばせる、エイジ&ジェンダーフリーなコスメ・ブランド
WAS HIM
自身のいじめ経験から生まれたジェンダーレスのアウターウェアブランド
ノンバイナリー
インクルーシブなブランドの姿とブランドの役割の変化
前回のコラムで紹介したカナダのスキンケアメーカーのDECIEMですが、こちらも同社の公式インスタグラムアカウントでは、スローベンバーイベントの告知を従業員と推察されるアジア人の男性が説明した動画を掲載しています。
プリージングやワズ・ヒムとも同様、化粧品のメイン顧客は女性、といったステレオタイプや特定のブランドや商品を、特定の顧客だけという前提を置かず、新たなインクルーシブネスをブランドとコミュニティを通じて体現しようとしている姿勢が伝わってきます。
ブランド戦略論を発展させたカリフォルニア大学名誉教授のデービッド・アーカー氏のブランドの定義によれば、
ブランドは「ブランドの名前やシンボルに関わる資産(もしくは負債)の集合であり、製品やサービスにより価値を付加する(もしくは減ずる)もの」と定義されています。
ブランドは従来、消費者にシンボリックなイメージや価値を提供し、消費を促すような機能を担ってきましたが、これらの新たなブランドたちが体現する"ブランド"には従来のブランドの定義では語れない、新たなあり姿が現れているように感じます。
それは、その価値を付加したり減ずるものではなく、その価値を体現するものであり、名前やシンボルに関わる資産に留まらず、ブランドが体現する世界観や価値を顧客やステークホルダーと共に創るための主体であるということです。
従来のブランドは消費者にとって、自分の社会的ステータスを誇示するものであったり、なりたい自分像を重ね合わせるためのものでした。
しかしながら、これからのブランドは消費者という定義を超えて、そのコミュニティの一員としてともに目指す世界観をインタラクティブに創造し続ける場になっていくことを感じます。