公正で透明性のあるコミュニケーションと待遇が持続的な成長の源泉
全ての社員の最低給与を7万ドルに引き上げ、売上3倍になった企業
最後にご紹介するのは、CEO自らが自分の給与を大幅に削り、社員の待遇の大幅改善にコミットしてコロナ禍の経営難を乗り越え、成長を続けている企業からの変化の兆しです。
ダン・プライス氏(Dan Price)率いるシアトルのグラビティ・ペイメンツ社(Gravity Payments)は2004年創業のクレジットカードの決済システムやオンラインペイメント関連のサービスを提供するスタートアップです。
6年前の2015年にダン・プライス氏は自身の110万ドル(日本円でおよそ1億2千400万円)の報酬をカットし、その代わりに130人全ての社員の給与を7万ドル(およそ790万円)以上に引き上げました。
彼の報酬も同じく7万ドルです。
ワシントン州シアトル平均給与額はおよそ6万8800ドルですので、この平均給与額以上に最低給与額を引き上げていることが分かります。
彼の社員給与引き上げはニュースにも取り上げられましたが、保守系メディアのフォックス・ニュースでは彼を社会主義者だと言い、批判されたとツイッターで述べています。
さて、この彼の意思決定はどのようなストーリーを生んだのでしょうか。

What helped inspire our $70k min wage?
— Dan Price (@DanPriceSeattle) April 13, 2021
An employee was secretly working a 2nd job at McDonald's. It was clear I was an awful CEO who was failing his employees. I gave her a raise to quit that job. No one should have to work two jobs to make ends meet.https://t.co/hrgDYUDXYB
"An employee was secretly working a 2nd job at McDonald's. It was clear I was an awful CEO who was failing his employees. I gave her a raise to quit that job. No one should have to work two jobs to make ends meet.
(一人の社員がこっそりマクドナルドで副業をしていました。それは私が従業員に対して失敗している、ひどいCEOだったということが明確でした。私は彼女にその仕事を辞めるために給与を上げました。誰一人として、生計を立てるためだけに二つの仕事で働くべきではないのです。)"
- 会社の頂点に存在するCEOが自分の意思決定や給与をブラックボックス化し、社員の給与を含めた様々なコストカットを通じて得られたプロフィットは、社会にとって、働く人にとって、そして私たちにとって、どんな意味をもたらすものでしょうか?
- 誰かの労働力を不当に搾取して得られた利益から作られた製品やサービスを使うことに対して、私たちはどのような態度を取るのでしょうか?
結びに
アメリカ生活を振り返ると、決してポジティブなことばかりではありませんでした。
アジア人というマイノリティであるからでしょうか。差別的と感じる態度や扱いを受けたこともあります。
日本の素晴らしい宅配サービスに慣れきっていた私にとって、注文した小包が無残な姿で届けられ、クレームしても見事に却下されるという心の折 れる経験は日常茶飯事です。