NYノマド第6回:新民泊サービス、ライドシェアサービス事情にみるシェアリングエコノミー成功要因(前編)

19.05.28 09:44 PM By s.budo

夏休みのシーズン間近のニューヨーク

皆さんこんにちは。5月に入り、外に出ていても気持ちの良い季節になりました。アメリカでは、子どもたちの学校が6月半ばから後半より夏休みに入ります。9月までの長い夏休みです。こちらでは6月後半から7月、8月前半くらいまでがサマーホリデーのピーク。家族、職場、そして友人間の話の話題にも、「サマーバケーションはどうするの?どこ行く?」といった会話が増えます。この時期は航空券や宿泊などの料金もピークを迎え、リゾート地のホテルや宿泊施設では最低でも2-3泊以上すること等といったサマーシーズンのピーク特有の予約条件が追加される時期でもあります(宿泊施設により条件は相違)。例えば、今月5月27日はアメリカの国民の休日であるメモリアルデー(戦没将兵追悼記念日)があります。ちょうど月曜日にあたり、土日と合わせて3連休になるので、私たち家族も近隣にでも1泊しようかと、山や海にある宿泊施設を探してみましたが、子ども連れにも向いているようなホテルは、予約条件に最低2泊3日の条件があり、断念しました。日本と比較して、長期で夏休みや休暇を取る文化のある欧米ならではの条件かもしれません。

超ラグジュアリーな宿泊体験を打ち出すマリオット・インターナショナルの新民泊サービス

そんな矢先、ホテルチェーン世界最大手のマリオット・インターナショナルが5月より旅行者向けに住宅を貸し出すホームシェアリングサービスを始めると発表しました。アメリカ、ヨーロッパ、中南米などの100を超える年に2000件以上の住宅を用意し、Airbnbに対抗するとのこと(NEW YORK Biz! Saturday, May 11, 2019、およびhttps://www.nytimes.com/2019/04/29/travel/marriott-airbnb-homeshare-luxury.html)。

そのサービスはなかなか興味深く、この新しいマリオットの民泊サービスは"The new Homes & Villas by Marriott International"というもので、写真のようなゴージャスなお城や豪邸といった宿泊施設に特化したラインナップを取り揃えたものです。


お値段は1泊200ドルからで、最も宿泊費が高いものはアイルランドのお城で、なんと1泊10000ドル(およそ110万円)!こちらのお城はベッドルームが15部屋、30人が宿泊でき、75人が収容できるバンケットルーム付き。さすが、マリオット。単なる民泊ではなく、マリオット会員を主要顧客とした新しいシェアリングビジネスを展開しています。

ニューヨークで定番のシェアリング系サービス、ライドライド解体!

さて、ニューヨークでシェアリングサービスと言えば、日本でもすでに展開されているUber、そしてLyft、比較的安価な相乗りサービスを提供するViaなど、すでにニューヨーカーの生活インフラの一部になっている"シェアライド"が一番に挙げられるでしょう。日本で展開されているUberは、すでに2~3年前からUberがなぜ日本で普及しないのかという記事が複数出ており(例えば、https://toyokeizai.net/articles/-/200252https://fstandard.co.jp/column_detail/403、など)、タクシー業界の反発が主たる普及の阻害要因としてあげられていますが、こちらアメリカでUberやLyftをユーザーとして何度も利用していると、その阻害の要因を明確に感じるようになりました。ご存知の方も多いかと思いますが、まずは簡単にニューヨークシティの交通事情とUber、Lyft、Viaをご紹介したいと思います。

ニューヨークシティやその周辺では主に、メトロやバスといった公共交通サービスをMTA(メトロポリタン・トランスポーテーション・オーソリティー:アメリカ合衆国ニューヨーク州の独立公益会社。ニューヨーク市を中心にニューヨーク都市圏のニューヨーク州側における鉄道やバスなどの公共輸送を運営している)が提供しており、ニューヨーカーの日々の足として利用されています(https://ja.wikipedia.org/wiki/メトロポリタン・トランスポーテーション・オーソリティ)。日本の首都圏や都市部と比較して、公共交通サービス網のカバーする範囲が狭く、郊外に住む多くの人々は自家用車で通勤、通学しています。そのせいで慢性的な渋滞が発生し、前回ブログでもご紹介したような"混雑時の渋滞税"といった制度が導入されているという実情があります。その他、タクシーや、自転車で通勤する人もいますが、極寒かつ降雪のある冬のマンハッタンは自転車を運転するのはかなり厳しい環境になります。春から秋にかけては自転車に乗る人も増えるようですが、どちらかといえば、ランニングをしながら通勤するといったように、スポーツがてらスポーツタイプの自転車に乗る姿が多くみられ、日本のようなママチャリは皆無、電動自転車はちらほら見かける程度ですが、レストランのデリバリーサービスの宅配で利用されているという印象があります(写真①)。自転車は乗り物というより、スポーツ、というのがこちらの認識であり、文化なのかもしれません。マンハッタンやマンハッタン近隣の都市部では、自転車のシェアバイクの設置もされており、観光客や住民がスポットで利用しているようですが(写真②)、こちらも電動自転車ではありません。

(写真①、②:筆者撮影)

マンハッタンの駐車場事情も厳しく、平日の昼間は、ストリートパーキングのスポットを見つけるのは至難の業。もし朝10時から夕方17時くらいまでミッドタウン周辺に停めようとすると、ガレージパーキングを利用することとなり、30ドルから60ドルはかかります。また、限られたパーキングのため、確保するのがとても大変です。そんな中、小回りの利くライドシェアサービスはニューヨーカーたちのタクシーに匹敵する気軽な交通手段として市民権を得ており、ニューヨークシティにおいて、現在Uberはタクシーを凌ぐ車数となっているようです( http://www.businessofapps.com/data/uber-statistics/)。私もマンハッタンに子連れで行くときには、子どもが疲れてぐずりだした際や、夜遅めの時間に帰宅するための比較的安全な交通手段としてよく利用しています。

主なニューヨークのライドシェアサービス:Uber、Lyft、そしてVia

こちらニューヨークではライドシェアはメジャーかつ欠かせない交通手段の一つとなっていますが、こちらでのライドシェアサービスがなぜこのように拡大しているのか、逆に日本ではなぜマーケットがなかなか発展しないのかについて検討してみたいと思います。始めに、ニューヨークでメジャーなUber、Lyft、そして最近地下鉄などに広告を積極的に出しているViaについて、簡単にサービス概要やその違いをまとめ、その上で、私や友人の利用経験も交えて紐解いてみたいと思います。



私自身もこちらに来てからUberとLyftは両方のアプリをスマートフォンに落とし、かれこれ30回~40回は利用していますが、周りの日本人の友人、知人、特に車を運転しないママ達には日ごろの足として重要な存在となっているようです。利用した経験も踏まえてライドシェアのユーザーのメリットや価値をあげるとすると、

1

タクシーをつかまえたり、電話をかけて呼んだりする必要がなく、アプリで比較的待ち時間少なく確実に配車可能(NYCでは稼働車数が多いため、日本のタクシー配車アプリのように、"周囲に配車可能なタクシーがありません"といったがっかり体験をすることは今まで一度もありません)。

 2

事前に料金と想定乗車時間、到着時間、そしてドライバーが誰なのか、どの程度の評価のドライバーなのか(ドライバーは5点満点でユーザーから評価され公開されます、Uberの場合はユーザーも5点満点で評価されます)を把握することができるため、不安感や不信感が軽減される。

 3

乗車料金とチップの支払いは登録したクレジットカードから自動引き落としとなるため、キャッシュレスで乗車可能、メーターがあがってお金が足りない!と焦る必要がない。

 4

乗降地をマップ上で指定できる(Viaはバンの最終目的地までのルート内での乗降地指定となる)ため、ドライバーに行先を伝える必要がない、地理に詳しくなくても、英語が堪能でなくとも、地図上でオーダーすればOKという手軽さ、気軽さ、心理的負担の少なさ。

 5

ドライバーは自分が所有する車でライドシェアサービスを提供するので、比較的車がきれいでメンテナンスもされている。タクシーの商用車よりも身近でリラックス感がある。

といった点があります。乗車料金はその時々で変動するため、一概にライドシェアが最も安い!とは言えず、価格競争力はそこまで感じませんが、ユーザーのサービス利用動線やプロセスにおいて、サービス利用の検討、情報収集、利用の意思決定、サービス利用の圧倒的な物理的、心理的、快適性が存在すると言えそうです。イエローキャブの稼働台数がUberを下回ったのもうなづけます。逆に、ライドシェアサービスを提供する各社のサービス内容に大きな違いがないため、サービスや提供価値の差別化にはまだまだ余地があると言えそうです。

後編では、各社の概要や特徴、マーケットシェアなども比較検証しつつ、車内での忘れ物事件におけるカスタマーサービス品質も一例にシェアリングビジネスにおけるキモについて考察を深めます。

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ビジネス、公的な活動問わず、アメリカのこれらの事例から何かのヒントがお届けできれば幸いです。みなさんからのコラムに関するご質問や、こんなことを聞いてみたい、知りたい!というリクエスト、叱咤激励などなど、24時間365日お待ちしております。ではまた次回コラムでお会いしましょう。

Columnist

Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。

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