NYノマド第7回:アメリカで興隆するオンラインフードデリバリーサービス(前編)

19.06.27 02:11 PM By s.budo

ニューヨークは夏が始まりました!

みなさん、こんにちは。6月に入り、学校は修了式や卒園式が行われ、軒並み夏休みに入ります。こちらの夏入りは本当に早いです。娘のプリスクールもすでに夏休みとなり、9月から始まる新学期までの約2か月半をどう過ごすか、親たちはいつも悩ましく、またその計画と準備に労力をかけなければなりません。多くはサマースクールやサマーキャンプと呼ばれる、夏季プログラムに週単位で参加させます。通常のプリスクールやプライベートの学校が提供するサマーキャンプの他に、地域のレクリエーションセンターやスポーツセンター、YMCAなどが提供するサマーキャンププログラム、ダンスクラスやアートクラス、クッキングクラスが提供するプログラム特化型のサマーキャンプ、学習塾が提供するSTEM教育に特化したサマーキャンプ、農場が提供するファームキャンプなど、本当に多様な内容で、年齢や金額に応じて様々な経験を、サマーキャンプを通して獲得することができます。


お金がものを言うアメリカですから、もちろん、よいプログラムにはそれなりのお金がかかり、安くて週200ドル前後、平均で週400ドル前後、お高いものは週1000ドルかかるものもざらにあります。約10週間ある夏休みにどれくらいサマーキャンプに参加させるか、お金と、子どもの教育機会や夏の楽しい経験の価値を天秤にかけながら、冬2月、3月くらいから親たちは情報収集を始め、4月、5月の申し込み開始に向けて準備をするのです。


日本ですと、両親が共働きであれば、学童保育にお世話になるという手段があったり、私の子供の頃を思い起こすと、朝はラジオ体操に始まり、学校のプールに午前中に行き、午後はお昼を食べて友達と遊んですごすという、子どもが1人で好きなように外に友達と遊びに行くことが当たり前だったように思います。しかしながら、ここはアメリカ。子どもを好き勝手に遊びに行かせるのは、親が子供の面倒を看ておらず虐待している状況とみなされ、犯罪になることもしばしばです。普段の学校の送迎も小学校までは親もしくは保護者が必ずしなければなりません。


そのため、共働き両親は、通常15時前後に終わる学校やプリスクール(日本の幼稚園に該当)、デイケア(日本の保育園に該当)のお迎えや習い事などへの送迎にナニーやベビーシッターをなんとかやりくりして毎日を乗り越えている現状があります。親が帰宅するまでの間、子どもは学校から帰ってきてから、ナニーと一緒に勉強したり、遊んだり、中には平日ナニーが夕食を作り、お風呂に入れさせて、寝かしつけまですることもあるようです。日本ではどちらのサービスもあまり一般的ではなく、高額なイメージがありますが、アメリカではこのような子どもをケアする需要とともにマーケットを生み出していることをこちらに来てから納得しました。


アメリカでは治安の悪さと共に、子どもに対する考え方、価値観の違いが横たわり、子どもを取り巻く親のケアや関連サービス業の展開があるのだなあとつくづく実感します。

季節とイベント楽しみ上手なアメリカ人

また夏入りに伴って、ニューヨークやニュージャージーのビーチやプールも、続々とオープンしています。


こちらは梅雨がない分、海開きが早いのでしょうか。肌寒い日もありますが、短い夏の太陽を大いに楽しむためか、みんな気にせずに大人も子どもも冷たい水や夏のバーベキューを満喫しているようです。季節やイベントを存分に楽しむのはこちら、アメリカ人たちは本当に上手だなあと実感します。先日はアメリカ人の友人に誘われて、マンハッタンのセントラルパークでお誕生日ピクニックパーティに行ってきました。友人の旦那さんとお友達が誕生日ということで、緩くその友達同士が集まり、子どもも大人も混じって、太陽と木々の緑を楽しみながら、カップケーキでお誕生日をお祝いするというとてもカジュアルなものでした。主催をしてくれた友人がテーブルを公園に持ち込み、そこにクラッカーとチーズ、フルーツなどを近隣のTrader Joe’s(オーガニック系スーパー、比較的価格が安く、商品回転サイクルが早く、旬やトレンド感、ツボを押さえた商品ラインナップとオリジナル商品で、こちらでは人気のあるスーパーの一つです)で調達、準備してくれ、参加者にはみんなと一緒に食べたり、飲んだりしたいスナックやドリンクを持ってきてねという、ポットラック形式のもの。お誕生日のお祝いには、カップケーキにキャンドルを灯してハッピーバースデーを皆で歌い、カジュアルにお祝いをしました!


パーティに集まった友人も様々。友人同士の繋がりから緩く集まっているので、家族もいれば、女子友もいれば、という様相で、総勢20人強が集まりました。その中で私の知り合いは約半数、芋づる方式に知り合いが増やせるこうしたカジュアルな集まりは新参者にとっては嬉しい限り。子どもは持ってきた外遊び用のおもちゃで遊んだり、公園を散策したり、大人はおつまみやお酒を片手に談笑したり、くつろいだり。大人も子どもも思い思いの過ごし方を自由にできるオープンネスと温かい公共や人々の目もこちらのよいところです。そして、この季節とイベントをみんなでワイワイ楽しめるこうした気軽な集まりをするのがアメリカ人は本当に得意です。


因みに、パーティ好きのアメリカ人は、週末にホームパーティもよく行います。食事は全て手作りのものから、参加者に一品持ってきてもらうポットラック形式、そしてピザなどレストランやファストフード店のデリバリー、スーパーやデリ店、ケータリング専門店でケータリングをするケースなど様々なスタイルがあります。カジュアルなホームパーティの場合は、スーパーのお惣菜やおつまみを購入してたり、ファストフード店でテイクアウトしてというのも多いようです。スーパーによっては、日本のデパ地下のように、様々なお惣菜が充実し、ケースで量り売りされているところもあります。私の自宅の近隣にも、ステーキやチキンフライ、ケパブ、サンドイッチ、様々なサラダ、パスタ、生ハムやチーズ、オリーブの大皿、フルーツ盛り、ケーキなど様々なケータリング料理を販売、配達もしてくれるスーパーがあります。


写真(筆者撮影)

社会的孤立とフードデリバリーサービスの関係?

こうした社会的な繋がりを楽しむ文化がある一方で、最近別のアメリカ人友人と話をしていて気になったのが、アメリカでの“引きこもり”(Hikikomori)です。

彼曰く、アメリカ人はどんどん周りの人との関係性を持たない傾向にあると言うのです。


話題の発端はアメリカのフードデリバリーサービスについてでした。


reference from http://nymag.com/intelligencer/2019/02/the-world-of-american-hikikomori.html

こちらのレストランでは相当な高級レストランでない限り、テイクアウトとデリバリーサービスを必ず提供しています。レストランに食べに行くと、頻繁にデリバリーを行う配達員が行き交い、テイクアウトをしに訪れるお客さんをたくさん見かけます。日本でも展開しているUber Eatsのようなデリバリー専門のオンラインサービスも充実しているので、こちらに来てから何回かデリバリーを利用しています。日本でも出前文化は昔からありますが、マンハッタンで道を歩いていると、しょっちゅうデリバリーの自転車やレストランから出てくる配達員を見かけます。もともと、ピザ文化のアメリカではピザのデリバリーは王道なのでしょうが、なぜこんなにもフードデリバリーサービスがアメリカで利用されているのでしょうか。


そこで今回はフードデリバリーサービス、とくにオンラインのフードデリバリーサービスを取り上げ、前半ではフードデリバリーサービス市場を支える顧客価値について友人とのディスカッションやオンラインデリバリー市場のデータなどをもとに検討してみたいと思います。後半ではどのようにその顧客価値をサービスデザインやUXなどで具現化し、提供しているのかを、実際に私が利用した3つのオンラインフードデリバリーサービスを取り上げ検討してみたいと思います。

日本の10倍?!巨大なアメリカのフードデリバリー市場

日本でも出前は昔からあるフードデリバリーサービスですが、アメリカではどのようなフードデリバリーサービスがあり、そのマーケットの現状はどうなっているかを簡単に概観しておきたいと思います。


下記にアメリカおよび日本のオンラインフードデリバリーサービス市場規模についてグラフにまとめました。日本と比較しても明らかにアメリカのオンラインフードデリバリー市場規模は巨大で、2019年に194,72 億ドル(およそ2兆1000億円)、年率5.9%の成長率で2023年までに244,61億ドル(およそ2兆6300億円)の規模に達する見込みです。日本は2019年で約2200億円弱の規模ですから、10倍の規模とは驚きです。
図1. オンラインフードデリバリー市場規模 日米比較

※Platform-to-Consumer Delivery(以下PTCD):レストランやカフェなどを取りまとめたプラットフォームから顧客が自由に選び、プラットフォーム上からオーダーができるデリバリーサービス

※Restaurant-to-Consumer Delivery(RTCD):レストランやカフェなどが個別にウェブなどでデリバリーサービス情報を掲示し、電話やオンラインなどでオーダーするデリバリーサービス
ユーザー普及率をみてみると、アメリカではプラットフォームから顧客へのフードデリバリーが2019年で15.0%、日本の3.7%と比較して12ポイント弱上回っています。


レストランからの顧客へのデリバリーは2019年でアメリカ22.2%、日本13.0%と約2倍近い差があります。ユーザー一人当たりのレストランの平均収入もアメリカがいずれも大幅に日本を上回っています。両国の人口数を鑑みても、それほどオンラインフードデリバリーサービスはアメリカで浸透していると言えるでしょう。


表1.  オンラインフードデリバリー市場のユーザー普及率および平均単価 日米比較
グラフおよび表:筆者作成
その中でも注目に値するのが、市場規模が拡大しつつあるオンラインプラットフォームによるフードデリバリーサービスです。
日本でもUberEatsが進出し、出前館楽天デリバリーなどのプラットフォームから顧客へのフードデリバリー市場が少しずつ形成されてきていますが、まだまだ市場のプレイヤーも少なく、マーケットもアクティブではありません。日本の状況と比較してアメリカでは、複数のプレイヤーが存在し、そのマーケットシェア獲得に凌ぎを削っています。
オンラインプラットフォーム型のフードデリバリーサービスは複数ありますが、Edison Trendsによれば、マーケットシェアの上位3社は以下のようになっています。





1位:DoorDash 27.6% 
2位:GrubHub inc. 26.7%
3位:Uber Eats 25.2%

この3社が拮抗しつつ、3社で約8割のマーケットシェアを獲得しています。

引きこもり?家から出たがらないアメリカ人

こうしたオンラインフードデリバリー戦争の過熱も、アメリカ人の旺盛なニーズと需要あってのことです。なぜこんなにもアメリカ人はフードデリバリーにお金をかけるのでしょうか。


このようなプラットフォーム型オンラインフードデリバリーサービスの主要な顧客はミレニアル世代と呼ばれる、2000年代に社会人となった、デジタル世代のアメリカ人たちであるといくつかの記事を読みました。(https://bikky.com/biggest-food-delivery-services/https://www.reuters.com/brandfeatures/venture-capital/article?id=47209など)。自分の生活やコミュニケーションの基盤はデジタルメディアであるこの世代は、こうしたオンラインサービスの利用を好むというのがサービスの需要を支えている一つの要因ではあるでしょう。果たしてそれだけでしょうか。


コンサルティングファームであるマッキンゼーから、オンラインフードデリバリー市場における顧客行動やニーズについて、興味深いレポートが公開されています。
    • プラットフォーム型のオンラインフードデリバリーサービスを利用する顧客のニーズや期待は従来のピザ顧客とは全く異なっている。
    • プラットフォーム型オンラインデリバリーサービスは顧客データをもとに顧客の嗜好に応じて注文経験をパーソナライズ。ひとたび顧客がサービスプラットフォームに登録すると、およそ80%が全く、もしくはほとんど他のプラットフォームに移らないため、顧客を獲得した勝者が独占しやすく、顧客がもっとも短時間にサービス登録できるプレイヤーがその恩恵を受ける。
    • 時間は最も重要。配達の時間が顧客満足度への最も大きな変数であり、60%の顧客は配達時間をキーファクターとして挙げている。望ましい配達の待ち時間は60分以内。
    • 食事は自宅で。ほとんどの注文、すなわち、約82%が自宅からの注文で、職場からの注文は16%。
    • フードデリバリーの注文が急上昇するのは週末、特に金曜日、土曜日、日曜日にされる注文が74%と大きなボリュームを占めている。


ちょうど社会人として仕事をしている彼ら、彼女たちは、平日は忙しくオフィスで働いています。そして、平日に仕事ですり減らし、疲れた自分の休息やリラックスを週末の時間に充てていることが想像できます。独身が多く、料理を一人で作る機会も少ないでしょう。冒頭にご紹介した友人とのディスカッションで、彼はフードデリバリーサービスを利用する顧客のニーズは、以下の2つだと話していました。


    • 効率性とスピード、利便性重視!
    • 自宅ではオフ、家から外にでるのが面倒、人に会うのも面倒


これらを平たく言えば、「めんどくさいこと、煩わしいことや時間がかかることは極力回避!」というニーズですね。友人が強調していたのは、アメリカ人がConvenienceに比重を置きすぎていること、そして、一旦帰宅したり、週末になると、自宅から外に出たり、人に会うことをめんどくさがる傾向が強くなっているという点です。そのため、外に出てスーパーやデリに食べ物を買いに行ったり、レストランに行って食べたり、人と会って一緒に食べたり、自宅に招いたりということをしたがらなくなっており、自宅にいながら注文から受け取りまで簡単に完結し、一人で食べられるこのようなサービスが受けているというのです。ましてや、スーパーで食材を買って、作って食べるというのもほとんどしないようです。


スーパーには日本のようにもちろん冷凍食品も売っていますが、それを買いに行き、レンジにいれるのですら面倒なのかもしれません。スーパーに並ぶ冷凍食品は家族向けが多く、一人分の量でないものが多いというのもありますが、冒頭にご紹介したTrader Joe’sでは冷凍の一人用パスタやフライドライスなどが販売されていたりもします。おひとり様でご飯を食べることをこちらでは”Solo dining”と言いますが、Solo dining向けの冷凍食品などもこれからこちらでも増えていくのかもしれません。日本も引きこもりや孤食が社会的課題として認識されるようになってきましたが、アメリカでも同様に、めんどくさいことや関係性から逃れたいという、利便性重視と引きこもりのニーズがオンラインフードデリバリーサービスを支えているようです。

環境要因の違いも

日本でも、家から出るのがめんどう、ご飯を作るのは面倒というニーズは同様に大きいと思いますが、ではなぜ、アメリカではこのようにオンラインデリバリーサービスが大きな市場となっており、日本ではなっていないのでしょうか。一つは飲食環境の違いです。日本では、自宅の周辺にたくさんのコンビニやスーパー、吉野家やマクドナルドなどのファストフード店が豊富にあり、徒歩や自転車など比較的近距離で、かつ安価に食事をしたり、購入することができます。翻ってアメリカでは、マンハッタンなど相当な都会に住まない限り、飲食店が徒歩圏内という人は逆に少なく、車を出してわざわざ買いに行かなければなりません。こうした"食環境の近接性"は日本のデリバリーサービスの需要を下げていると考えます。


もう1点は、前回のコラムでも取り上げた、移民による労働力提供という点です。デリバリーサービスを支えるのは、レストラン、そして配達員です。UberやLyftと同様に、車を運転して配達をしてくれる配達員の労働力がかなりの程度確保できないとこのビジネスを展開できません。この点で、アメリカは移民を中心に、配達員の仕事の需要がまだまだあります。日本でも都内などでUberのデリバリーを自転車やバイクでする姿をちらほら見かけますが、飲食店やコンビニなどのリテール業界が人材確保に苦戦し、外国人労働者を積極的に雇用しているように、配達人材の確保には相当苦労しているに違いありません。これらの環境要因の違いも、市場形成や拡大に大きな影響を与えており、顧客の理解と共に、ビジネスを構成するプレイヤーや文化、社会構造要因をしっかりと捉えていくことがビジネスの成功を導いてくれるでしょう。


次回の後半編ではこの3社のサービスを実際に利用してみて、前半で考察した顧客価値を各社がどのように具現化し、サービスとして提供しているのか、ユーザー目線から解読し、彼らのその成長の理由に迫ってみたいと思います。

Keep in Touch !

ビジネス、公的な活動問わず、アメリカのこれらの事例から何かのヒントがお届けできれば幸いです。みなさんからのコラムに関するご質問や、こんなことを聞いてみたい、知りたい!というリクエスト、叱咤激励などなど、24時間365日お待ちしております。ではまた次回コラムでお会いしましょう。

Columnist

Aya Kubosumi ノマドマーケター


コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。