NYノマド第7回:アメリカで興隆するオンラインフードデリバリーサービスしてみました!(中編)~提供価値デザイン編

19.07.12 09:58 AM By s.budo

アメリカ市場におけるオンラインデリバリーサービス上位3社

皆さんこんにちは。今回のコラムではオンラインフードデリバリーサービスプラットフォームを取り上げました。
中編では、前編でご紹介したアメリカでマーケットシェア上位3社であるUberEats、GrubHub、DoorDashのサービスを実際に利用してみて、前編で考察した顧客価値を各社がどのように具現化し、サービスとして提供しているのか、ユーザー目線から解読し、彼らのその成長の理由に迫ってみたいと思います。
まずは、3社の概要を表にまとめましたので、簡単にご紹介します。

表1. オンラインデリバリーサービス3社概要

各社、ほぼ類似のサービスを提供しているのが現状ですが、3社の特徴もしくは強みは以下に集約されます。
  • UberEatsは自社のアセットである輸送網とデータ解析を中心としたテクノロジー
  • Grubhubは提携レストラン数と類似サービスの買収によるユーザー数
  • Doordashは顧客の嗜好に合わせた豊富な視覚情報をベースにしたUIとサービスデザイン

顧客提供価値を顧客のサービス体験に埋め込む

前編の考察では、プラットフォーム型オンラインフードデリバリーサービスの主要な顧客はミレニアル世代と呼ばれる、2000年代に社会人となったデジタル世代のアメリカ人たちでした。社会人として仕事をしている彼ら彼女たちは、平日は忙しくオフィスで働き、週末は平日に仕事ですり減らし疲れている自分の休息やエネルギー補給、ストレス発散のために時間を使い、自分の食事作りにじっくり時間を割くことは多くありません。そして、「めんどくさいこと、煩わしいことや時間がかかることは極力回避!」というニーズを持っています。このようなオンラインフードデリバリーサービスを利用する顧客にとってメインの提供価値は次の2つに集約されます。
  1. 効率性とスピード、利便性重視!
  2. 自宅ではオフ、家から外にでるのが面倒、人に会うのも面倒

このターゲット顧客像と提供価値を踏まえると、オンラインフードデリバリーには、兎にも角にも、「思い立った時すぐに食べたいものが選べて、クイックにデリバリーがきて、時間と手間をかけずにさくっと食事を済ませられる」というサービスが求められるといえるでしょう。これらの提供価値を実際に各社はどのように顧客のサービス体験をデザインしているのかを紐解いていきましょう。まず、ターゲット顧客および顧客への提供価値を定義します。実際にサービス体験をデザインする際には、ターゲット顧客のペルソナに基づいて、顧客のサービス体験のジャーニーマップを設定します。ジャーニーマップとは、顧客があるタスクや目的を実行するためにサービスや商品を購入し利用するという一連の流れの中で、顧客がどのように考え、行動し、感じるかを含めて定義したものになります。基本的には、購買ニーズが発生し、商品サービスを知り、商品サービスを選び、購買の意思決定をし、利用するというフレームワークになります。今回のオンラインフードデリバリーサービスの場合、大まかには以下のカスタマージャーニーのプロセスとなります。

スタート:1.食べ物購入ニーズ発生 → 2.食べ物購入方法・手段・場所検討と意思決定 → 3.食べ物購入(決済)
                                           ↓
終了:7.口コミおよびサービス再利用(する人のみ) ← 6.後片付け←5.食事する ← 4.デリバリー

この顧客の行動や体験の中に、先に述べた二つの提供価値を埋め込んでデザインしていくこととなります。

3社のサービスデザイン比較

それでは具体的にどのようにこれらのサービスが展開されていて、どのような価値が顧客に支持されているのか、上記のジャーニーマップの2から4を中心に実際に私の利用体験をもとに、その顧客価値、サービスデザイン、UXなどについて考察してみたいと思います。

主にジャーニーマップ内のステップ2、3、4、7についてオンラインデリバリーがサービスおよびUXをデザインし、提供する部分となります。5、6は主に各レストランが担う部分ですね。3社とも、サービス利用のステップはほぼ同じで、ざっと洗い出すと15のステップとなります。

(1) オンラインデリバリーサービスの探索と利用するサービスの決定
(2) サイトにアクセス、もしくはアプリをダウンロード
(3) デリバリー先住所の入力もしくはアカウント情報の登録
(4) デリバリー可能なレストラン内からレストランもしくは料理を検索
(5) デリバリー先のレストラン決定
(6) レストラン内メニュー選択
(7) 注文メニューの決定
(8) デリバリー時間、料金確認
(9) 支払い決済
(10) デリバリー
(11) 注文受け取り
(12) 食事する
(13) デリバリーの評価と口コミ
(14) サービス利用における問い合わせ、トラブル対応
(15) サービス再利用
これらのパーツを具体的にデザインしていくことになります。今回は2つの提供価値から鑑みて、特に重要と思われる以下のパーツに焦点を当てて、3社を比較してみたいと思います。
全てのプロセスを完璧にデザインできることに越したことはありませんが、ターゲット顧客の視点から見ると、ここを外してしまったら、一切利用してくれなくなるという、ジャーニーマップの中でも大きな山場が存在します。この山場では、望ましい体験がつつがなく履行されるとともに、顧客の心理的な負荷を低減したり、逆にポジティブな心理状態をデザインしてあげることが必要となります。
今回の場合はどうでしょうか?まず二つの提供価値それぞれ、「①効率性とスピード、利便性重視!」についてですが、こちらは、


・(1)から(9)に該当するプロセスにおいて、フードデリバリーを思い立ったその時に、すぐにオーダーのための情報にアクセスでき、ミニマムな登録ステップで食べたいものを探すページにたどり着きレストランとメニューを選ぶことができ、決済情報の登録も煩わしくなく、注文ステップも少ないこと


・(10)のデリバリーで、最短時間でトラブルやミスなく玄関まで届けてくれること、万が一トラブルが生じた場合、(15)のカスタマーサービスや該当担当者へのアクセスが容易かつ即座にでき、問題を解決できること


という顧客体験のデザインが必要となります。また、二つ目の提供価値は「②自宅ではオフ、家から外にでるのが面倒、人に会うのも面倒」というものでした。これに対しては、


・半ば、ご飯を食べるのも準備をするのもめんどくさいというネガティブな心理状態を、何を食べるか考えたり、レストランを選ぶこと、注文が届くのを待つことをネガティブからポジティブに体験に書き換え、楽しくするような体験

が求められるでしょう。それでは、今回は特に上記の(1)から(10)までのプロセスと、(11)のデリバリーにおいて3社がどのようにサービスおよびUX提供をしているのか、実際に注文をしてみた私の体験をもとに、各社のデザインがきらりと光るポイントを中心に考察してみたいと思います。

第一の壁、初回注文、脱落者を減らせ!

初回利用のユーザーが、利用したいサービスを探し、決定し、利用するまでには様々な工夫が必要となります。たくさんの類似サービスに囲まれている顧客にとっては、そのサービスを使うインセンティブは必須です。そして、少しでもマイナス要因があれば容易くサービス利用のプロセスから脱落していきます。では、3社それぞれどのようなサービスデザインをしているのでしょうか?
まず、「 (1) オンラインデリバリーサービスの探索と利用するサービスの決定においては、各社下記のような初回オーダーのインセンティブを導入しています。
  • Uber Eats:初回注文は時期により金額や内容が異なるが、クーポン提供あり(初回注文5ドルオフなど)
  • GRUBHUB:初回注文12ドルオフ
  • DOORDASH:初回注文配送料無料、時期により、10ドルオフ(15ドル以上の注文時)などのクーポンあり

ランチ利用でのデリバリーの注文は各社のサイト内のレストランのメニューを確認してみると、一食あたり、15ドルから20ドルくらいの注文になることが多いようです。思った以上に大きな金額のディスカウントを得ることができるのは、「安くなるんなら一回試してみようかな」と、初回利用の背中を大いに後押しすることでしょう。もちろん、私も利用できるクーポンは全て利用しました!

続いて、「 (2)サイトにアクセス、もしくはアプリをダウンロード」、「 (3)デリバリー先住所の入力もしくはアカウント情報の登録」となります。3社すべて、最初にウェブサイトにアクセスすると、トップページに配達先住所入力のボックスが配置され、すぐに配達可能なレストラン検索に進めるようになっています。食べたいものを探す、というのがまずユーザーが一番やりたいこと。ここからスタートさせるデザインになっていました!恐らく、アカウント登録から始めさせたら、かなりの高確率で脱落者が出るでしょう。。。


さて、次はオンラインデリバリーサービスのメインのプロセスの一つ、「(4)デリバリー可能なレストラン内からレストランもしくは料理を検索」となります。最初に各社のアプリのトップ画面を見てみましょう。




UberEatsは上部にこのレストランなら配達料金がかかりませんよという表示と、「New options in 4:38」というあと4分38秒以内に候補のレストランが更新される機能を設け、ユーザーにメリットのあるレストラン選びを時間制限内に行動させることを意図する巧みなデザインをしています。

以前コラムでご紹介した行動経済学の知見を大いに活用していますね。

このデザインは、初回利用というよりは、2回目以降の利用時に「今だけ、ここだけ」利用できるディスカウントがあるという価値をユーザーに提示することで、「今、ここで注文しなくちゃ!」という気持ちにさせ、利用を促す設計になっていると言えるでしょう。




GRUBHUBのトップ画面はGRUBHUB側のオススメ順にレストランが想定配達時間とユーザー評価情報とともに表示されており、この中におっ、いいかも?と思えるようなレストランが表示されていればよいですが、されていない場合、さらにレストランを探索するトリガーが少なく、上部にある料理カテゴリとフィルター条件を設定するか、直接キーワード検索をするかというステップになります。

シンプルなのはよいのですが、広告料を出しているレストランに有意になるように表示させているのでは?と思わせ、探索意欲が少々減衰してしまいました。




DOORDASHは他の2社とは異なり、画面上部にはレストラン検索行動を促す料理カテゴリのアイコン表示と、その下にはユーザーの検索のフィルターのアイコンが設置され、ユーザーが希望する条件の設定をトップ画面だけでできるようになっている点が特徴的です。

そして画面中央にはユーザーの購買行動を促すインセンティブの表示ですね。

ダニエル・カーネマンらにより定義された、人間は獲得しうる利益よりも失いうる損失のほうが、心理的負担が大きいという“損失回避”を巧みに利用し、「残り9日間、配達料無料!」という表示で、こちらも「今、ここで注文しなくちゃ損をする!」という気持ちを醸成しようとしています。

初回利用者の目線に戻り、利用した私の経験からすると、3社の中ではDOORDASHのトップ画面が「何か美味しいものあるかもしれないから検索してみよう」という探索欲求と、「せっかく配達料無料になるから探さなくちゃ」という損失回避行動を刺激させられるデザインになっていました。


 (5)デリバリー先のレストラン決定、(6)レストラン内メニュー選択と続くステップは、今回、私自身も3社で注文をしてみてリピートしてみたいと感じたかの観点も交え、後編でご報告させて頂きます。

Keep in Touch !

ビジネス、公的な活動問わず、アメリカのこれらの事例から何かのヒントがお届けできれば幸いです。みなさんからのコラムに関するご質問や、こんなことを聞いてみたい、知りたい!というリクエスト、叱咤激励などなど、24時間365日お待ちしております。ではまた次回コラムでお会いしましょう。

columnist

Aya Kubosumi ノマドマーケター


コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。