NYノマド第7回:アメリカで興隆するオンラインフードデリバリーサービスしてみました!(後編)~提供価値デザイン編

19.07.26 09:10 AM By s.budo

食欲が湧き、メニューをもっと探索したくなるような写真や直感的デザイン

皆さんこんにちは。
中編では各社WEBサイトでの初回利用のユーザーに対する様々なデザイン上の工夫や、プロモーションを比較しましたが、後編では、実際に各サービスを利用した体験をもとに提供価値デザインを比較します。

(1)オンラインデリバリーサービスの探索~
(2) サイトにアクセス~
(3)アカウント情報の登録~
(4) デリバリー可能なレストランと料理の検索

を終え、次は、いよいよ

(5)デリバリー先のレストラン決定
(6)レストラン内メニュー選択

です。

これらのプロセスではすでにユーザーはレストラン検索を始めていますので、その行動をより購買に近づけるような、言わば”飛び石”のような橋渡しの役目を果たすプロセスです。
3社の個別レストランページのデザインを見てみましょう。

3社共に、レストラン名のすぐ下には、現在の想定配達所要時間と、ユーザー評価、配達料金に関わる条件が提示されています。これらの情報を上部に配置することで、ユーザーが自分の希望の配達時間と料金を満たすかどうか、利用者の口コミ評価も悪くないかなど、メニューをさらに見るに値するレストランかどうかをざっと概観し、スクリーニングすることを容易にしてくれます。


DOORDASHは個別レストランの情報とそのレストランお薦めの料理の写真がトップ画面にデザインされています。

個別レストランの情報のみの表示ですね。


料理の写真がある程度見やすいように加工されており、美味しそうなものがあるかも?と、メニューをさらにクリック、探索したくなる気持ちにさせてくれます。


GRUBHUBはお店の情報と口コミ情報の詳細のリンクがあり、トップ画面同様、真ん中に個別レストランに適用可能なクーポン情報が提示されています。そしてその下にはこのレストランで人気のあるメニューの写真が表示されています。


このレストランにしようかなという意思決定の行動を促してはくれそうですが、下部に提示されている人気メニューの写真がやや見づらく、ジュースや揚げ野菜というサイドメニューが人気メニューに表示されていると、メインの料理はあんまり人気がないのかも?と、メニューを見ようと思う気持ちが下がってしまいました。


顧客データに基づいて人気メニューを上位に挙げているのではないかと推察しますが、これでは本末転倒です。


また、Uber Eatsは文字が多いデザインになっており、料金に関する情報が真ん中に表示されていますので、もっと検索したくなる度合いは低めでしょうか。



総合的にみると、私の利用経験上では、DOORDASHが最も、面倒なご飯の準備を楽しく食べたいものを考える時間や経験に変えるという工夫がされていたように思います。


他にも、レストランおよびメニューの検索のしやすさのデザイン、口コミ情報の参照のしやすさのデザインなど、各社それぞれに工夫がみられました。


今回は、全てをご紹介できませんが、例えば、口コミ情報については、UberEatsDOORDASHは星評価のみが表示され、星の数を検索条件に設定することはできますが、利用ユーザーの個別の口コミコメントや評価の情報は提供されていませんでした。

GRUBHUBのみ、下記の写真のように具体的なレストラン評価の詳細ページが設定されており、①食べ物、②配達、③注文の3点から評価され、評価したユーザーのコメントとともに注文した日、注文内容の情報を全て詳細に見ることができました。


すでに利用したことがあり、比較的気に入っているレストランであれば、これらの情報はあまり必要ありませんが、新にレストランを見つけようとする際には大いに参考になるでしょう。

私もこの口コミ情報を何名か分ざっと流し読みすることで、このレストランに注文してよいかを判断および納得する材料となり、自分の意思決定が妥当そうかどうか、このレストランを信頼して注文してよいかどうかという安心と信頼感を提供してくれる口コミ情報のデザインになっていました。

デリバリー待ちのイライラ低減と安心を提供するデリバリー画面

最後に取り上げるのが、注文確定後、配達されるまでの間の情報提供についてです。

ユーザーが注文の決済を済ませ、あとは配達されるのを受け取るだけというところまで来ました。逆にここからは、確実に配達し、遅延や他のトラブルの発生を極力減らし、ユーザーの期待値を保ったまま、配達を届けるという、ノーミスが求められるプロセスとなります。


そこで、各社の注文確定後から配達までの情報提供について、アプリの画面を時系列に並べ、各社のデザインのポイントについて概説します。

UberEats


UberEatsでは注文が確定すると、注文の調理に入ったことを知らせ(①)、進捗のアップデートの通知をしてほしいかどうかの確認を求められます(②)。



配達員の名前と顔写真、配達手段(今回は自転車でした)、現在位置がマップ上に表示され、その進捗を追うことができます(③~⑤)。




しかしながら、自分のオーダー以外の配達を行っているという情報も表示され(⑥)、「私の配達だけではなかったの?!」という余計なストレスを感じてしまいます。


リアルタイムに実際の状況を知らせてくれるのはよいのですが、自分のデリバリー以外の情報を提示されることは、あまり好ましいものではありませんね。

そしてこの時、たまたま、配達員が道を間違え、待てど暮らせど、配達が届かない、全く違ったところに配達員が自転車を走らせてゆく姿をリアルタイムに地図上で眺めることに。


これはかなりのストレス、心理的負荷でした。


オーダーをキャンセルするという考えも頭を巡り、トラブルシューティングに関する情報を見てみましたが、一度オーダーして料理の準備に入ったものはキャンセルが不可ということで問題解決には至らず。

仕方なく、道が間違っていることを配達員にコンタクトし、知らせることにしました。

電話もしくはSMSのアイコンが配達情報に表示されており、そこから配達員にコンタクトすることができるのは評価ポイントではありますが、UberEatsは配達員のミスも相まって、総じてストレスが大きい待ち時間となってしまいました。

GRUBHUB


続いてGRUBHUBです。


こちらは逆にリアルタイムの配達状況は、オーダーをレストランに送りました、調理中、配達完了の3つと予想配達時間の表示のみ(①~④)。


配達員の情報やリアルタイムの配達員の位置情報などは表示されません。

シンプルで情報量が最も少なかったです。


これはGRUBHUBではUberEatsやDOORDASHが独自の配達員を配置しているのとは異なり、各レストランが配達員を持っている場合があるからのようです。

しかもこの注文では、なぜか、注文が届いて配達完了になった後もずっと“In the works(調理中)”のステータスが変わらず、一日経ってもこのままでした(④)。。。


ステータス表示が変わらなかったのは今回のケースのみかもしれませんが、果たしてちゃんと配達されるのだろうかという不安がぬぐえないデザインでした。

DOORDASH


最後にDOORDASHです。


こちらは配達完了にかかる予想時間、配達員(Dasher)の現在情報を、オーダーをレストランに引き取りに行っています、配達員がオーダーを(お店で)待っています、あなたのところに向かっています、配達がもう間もなくです、という4段階に分けて視覚的に表示され(①~④、⑥)、位置情報を同時に参照することができました(①、⑤、⑧、⑨)。




配達員へのコンタクトも、UberEats同様に、電話とSMSのアイコンが表示され、両方の手段でコンタクトが可能です。

また、SMSで実況中継のように配達に関するリアルタイム情報がプッシュ型で送られてきて(⑦、⑧)、いちいち私の方からアプリをタップして確認せずに済む点が非常によかったです。



このように、どのタイミングで、どんな情報を、どんな質と量、手段で提示するかで、待ち時間の経験が全く異なってきます。


3社を比較すると、DOORDASHが最も手間&不安が少なく、配達の待ち時間を過ごせました。

ユーザーを不安にさせない、イライラさせない、そして正確かつユーザーの注文についてのみ、ユーザー視点で情報提供することが待ち時間での配達情報デザインのキーと言えるでしょう。

番外編~ランチの配達、届きました!

今回私が注文してみたものを最後におまけでご紹介します。

Uber Eats


韓国系スーパー内にあるフードコートからのデリバリー、シーフードちゃんぽんです。

ラーメンなどの麺類のデリバリーはアメリカでは麺とスープが別々に入れられ、届けられます。

スープはかなり熱々の状態で配達されるのか、配達員のミスで届くのに大幅に時間がかかったものの、スープはそこまで冷めておらず、比較的美味しくいただけました。

GRUBHUB 


こちらはメキシカンレストランにタコスとライスのセットを注文してみました。


ジップロックバッグに入ったチップスやディップがついて、盛りだくさんです。

もちろん食べきれず、ライスには手を付けずに夜ご飯に。

DOORDASH


こちらはニューヨークでも比較的人気のあるハワイ発祥のポキ丼です。

自分の好きな魚を2種類選び、トッピングの野菜や海藻、のりなどとともに醤油などといったソースベースを選び、カスタマイズオーダーしたものです。
やはり、日本の丼ぶりの方が美味しいと思いましたが、トッピングも豊富で、野菜がたくさん食べられるので満足度が高いランチでした!



デリバリー文化が浸透するアメリカでは、料理によって、デリバリーのパッケージも多様ですね。


さて、今回はオンラインデリバリーサービスの提供価値に基づき、各社がどのようにサービスプロセスの中で提供価値を具現化し、ユーザーにとってよりよい体験を提供しようとしているのかについて、いくつかのカスタマージャーニーを取り上げ、検討しました。

今回、私自身も3社で注文をしてみてリピートしてみたいと感じたのはDOORDASHでしょうか。
アプリUIの随所にユーザーのUXを向上させる工夫を実感しました。
DOORDASHはグループ注文機能など、他社が展開していないユニークな機能の提供も始めています。グループ注文などはオフィスでランチ時に女性グループが一緒に注文する、プロジェクトのミーティングやワークショップの際にランチを挟む時などに便利でしょう。
トップ画面の料理ジャンルやスクリーニングに”Healthy”、”Vegitarian”というクライテリアがすでに表示されているなど、女性を意識したUXデザインや、グループという新たなターゲットユーザーを設定し、ユーザーの拡大を狙っている様子もうかがえます。

新規ユーザーの獲得だけでなく、リピーターの確保、そしてユーザー以外の要素、配達員の確保など、まだまだデザインの余地は大いにありそうです。

これからこの3社の競争がどうなって行くのか、ウォッチしていきたいと思います。

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ビジネス、公的な活動問わず、アメリカのこれらの事例から何かのヒントがお届けできれば幸いです。みなさんからのコラムに関するご質問や、こんなことを聞いてみたい、知りたい!というリクエスト、叱咤激励などなど、24時間365日お待ちしております。ではまた次回コラムでお会いしましょう。

columnist
Aya Kubosumi ノマドマーケター


コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。 

s.budo