NYノマド 第9回:健康志向を追い風に肉を超える肉、植物性原料のプラントベースミート(オルタナティブミート)は定着するか?!(前編)

19.10.09 02:00 PM By s.budo

新学期の準備あれこれ

皆さん、こんにちは。10月になり、こちらの気候はめっきり涼しくなり、秋らしい季節となりました。この時期は、日差しがあると日中は半袖でも過ごせる日もありますが、長袖を着ないと肌寒い日が混じったような、日本とあまり変わらない気候です。

先月より新学期を迎え、私の娘も、プリスクールで学年が一つ上がり、PK-3(プレキンダーガーテン3歳クラス)からPK-4(プレキンダーガーテン4歳クラス)となりました。
上の学年の知り合いの方から、使わなくなったユニフォームのおさがりを譲ってもらったり、不要になった学校のグッズをもらったりと購入せずに済むのは大変に助かっています。

ちなみに、新学期が始まる前、夏休みから8月後半の間は引っ越しをする人も多く、引越に伴って個人が主催するムービングセール、ガレージセールなどが多く開催されます。
日本のメルカリ(☆WEB)のように、日本人同士で中古品の売り買いができるウェブサイトもありますし、もちろん現地アメリカ版の中古品売り買いサイト、アプリもたくさんあります。

代表的なものは、Let Goや、Offer upなどです。


日本では私も、渡米時の引っ越しの際に不用品をメルカリで販売した経験があります。
実は近々出産予定のため、ベビーグッズの中古品をこれらのウェブサイトで物色しているのですが、品数は少なくないものの、価格が総じて高め、かつ、品物の状態がそこまでよくなさそうな印象を受けます。もちろん、中にはお買い得!と感じるものもありますし、交渉してみて安くなるものもあります。
そして、Let Goは基本的に、購入者が販売者の指定する場所まで引き取りに行くことが必要となります。メルカリのように配送が基本の受け渡し方法ではありません。

日本人はおさがりを誰かにあげる際も、服であればきちんと洗濯したり、物であれば多少きれいに拭いたりなどして渡すことが多い印象を受けますが、こちらアメリカでは様々な人がおり、ワイルドな人も多く、あまりきれいな状態ではないケースも割とあるようです。
余談ですが、マンハッタンの美容院で美容師さんに聞いた話で、髪の毛を毎日洗いブローするのは日本人とアジア人くらいで、他の人種の人は毎日洗う人は極少数派とのこと。
なるほど、だから、こちらアメリカではブロー専門の美容室があるのかと納得したりもしました。。。

日本人は世界でもトップレベルの清潔さを重視する国民性なのかもしれません。




もちろん、新調しなければならない学校グッズもたくさんあります。
新学期の準備品を揃えるため、ショッピングモールやターゲット、ウォルマートなど様々なお店で"Back To School"と題した新学期準備セールが展開され、レイバーデーの週末はショッピングモールが大混雑です。

私の電子メールのメールボックスも、新学期セールの案内のプロモーションメールで一杯です。
例えば、よく行っている近所にある韓国系スーパーに"H Mart"というお店があるのですが、そこから来ていたプロモーションメールはこちらです。
(画像:H Martのプロモーションメール、筆者に届いたメールより引用)




"BACK TO SCHOOL K-BEAUTY SALE"

新学期セールと題して、韓国化粧品のセールの案内です。新学期とは関係ないような気が、、、。
ティーン以上の年齢の女子学生に向けたセールとも考えられなくはない?かもしれませんが、どんなイベント事も消費の需要を掘り起こす機会になってしまうところに、アメリカ社会がいかに消費需要を喚起する、もしくは機会を創出することによって、経済的、文化的に支えられているかを実感します。



アメリカ人の食生活に定着するか?!プラントベースミート

さて、今回のコラムの主題に入ります。

需要喚起というキーワードで、最近私が気になっているのが"プラントベースミート"もしくは“オルタナティブミート"と呼ばれる新しい代替肉商品です。

大豆や豆などを主原料とし、ニュースや記事などで、大手ハンバーガーチェーンがオルタナティブミートを使ったメニューを展開する計画を発表したり、採用を検討するといったものを目にするようになりました。

環境保護団体や政府関連の団体もこのムーブメントを後押しするように、様々な調査結果を公表したり、PRをしたりする動きが加速しているように感じます。

(写真:Impossible Foodsウェブサイトより引用)

日本では"大豆ミート"といった商品名で紹介されていることが多いかもしれません。健康食品の専門店に行かないとなかなか目にする機会は少ないですね。マクロビオティックのレストランなどでも使われています。健康志向の方や、お肉にアレルギーがある人などしかあまり食べたことはないかもしれません。

日本ではまだまだ認知度も低い中、ちょうど、最近、ポテトチップスなどのスナック菓子大手製造メーカーの湖池屋が、「罪なきからあげ」という大豆タンパク質を主成分とする唐揚げの新商品を開発し、東東京および千葉エリアのセブンイレブンで販売を始めたという広報リリースをウェブでみました。

一袋26グラムで124キロカロリー。

日本に行ったらぜひ試してみたいですね。


日本でも徐々にコンビニなど身近なチャネルでオルタナティブミートの商品をみたり、購入したりする機会が少しずつ増えていくと考えられますが、日本ではどのように展開していくのでしょうか?

アメリカの現状をもとに、今回はオルタナティブミートの市場動向や話題になっている背景、そして日本での可能性などについて考えてみたいと思います。

(写真:湖池屋上記ウェブサイトより引用)

現在の米プラントベースミート市場概況

今年に入ってから、食品や健康市場関連のニュースをみていると、プラントベースミート関連の情報がかなり増えてきているように感じます。


実際のプラントベースミート市場はどのような現状なのでしょうか。


スイス最大の銀行、UBSが発表した市場予測によれば、世界で2018年に46億ドル(日本円で約4943億円)だったプラントベースミート市場は、健康および環境志向への関心の高まりを追い風に消費者の関心と需要を喚起し、2030年に850億ドル(日本円で約9兆1344億円)に達すると予想されています。


アメリカでは肉以外にも、牛乳の替わりに豆乳、アーモンドミルク、ナッツ系ミルクを代わりに引用する文化が定着していますが、アメリカにおけるプラントベース(植物性原料)のミルク商品市場は昨年から6%成長しており、プラントベースの日用食品市場は2025年までにアメリカで375億ドル(日本円で約4兆302億円)まで大きくなると予想されています(https://www.fooddive.com/news/plant-based-meat-market-forecast-to-reach-85b-by-2030-report-says/559170/)。


もっとも、この予測をしているUBSはImpossible Foodsに投資しているので、この予測自体、かなりPR的な側面があるかもしれません。しかしながら、ワールドワイドに食品ビジネスを展開するダノンがプラントベースミートの商品の取り扱いを開始したり、ダノンが125億ドルでWhiteWaveという大豆などの植物性原料の商品をアメリカの消費者に販売しているオーガニック食品メーカーを買収したり(https://www.fooddive.com/news/plant-based-meat-market-forecast-to-reach-85b-by-2030-report-says/559170/)、米ディズニーが運営する施設でプラントベースミートを使用したメニューを提供すると発表しているなど、プラントベースミートの導入が加速しています。


このように、プラントベースミートはアメリカでもかなり大きな市場を形成すると予測されており、投資家たちもプラントベースミートを製造販売する企業への投資熱が高まっているようです。

米2大プラントベースミート企業

アメリカで初期からこの市場のプレイヤーは、Beyond MeatImpossible Foodsです。


前者はファストフードやレストランマーケットにシェアがあり、後者はスーパーなどの食料品店にフォーカスしてビジネスを展開しています。


Beyond Meatは2009年設立、カリフォルニア州に本部を置く植物由来の人工肉を製造・開発するアメリカ合衆国の食品テクノロジー企業で、2013年より全米のホールフーズ・マーケットで同社の商品が販売されています。
これまでにクライナー・パーキンスやオブビオス・コーポレーション(現Twitter)、ビル・ゲイツ、ビズ・ストーン、ヒューメイン・ソサイエティー、タイソン・フーズなどから資金を調達しています(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%A8%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%83%BC%E3%83%88より引用)。

Beyond Meatの商品は、ケンタッキー・フライド・チキン、サブウェイ、ダンキンドーナツ、カールス・ジュニアなどのファストフードチェーンや大手ファミリーレストランのティージーアイ・フライデーズ、家庭調理用食材キットを販売するブルーエプロン、ホールフーズやターゲットといった食料品スーパーなどで展開されています。また、Beyond Meatでは、近くのスーパーなどで同社製品を入手できるお店を検索できるマップや同社製品を使ったレシピなどを紹介しています。
また、プロスポーツ選手を中心に、"BEYOND AMBASSADORS"と名付けられた、PR大使を設置し、認知度及びブランド向上とともに、コミュニティ形成を図っています。

2大企業のもう一つはImpossible Foodsです。

スタンフォード大学生化学名誉教授のパトリック・O・ブラウンが2009年に、環境問題を解決するためには工業用畜産農業の廃止が必要と考え、動物を使用しない製品を開発するために、2011年に同社を設立。カリフォルニア州に本部を置き、植物由来の人工肉や乳製品を製造・開発し、アメリカと香港の1000以上のレストランで同社の人工肉を使用した「インポッシブル・バーガー」を提供しています(https://ja.wikipedia.org/wiki/インポッシブル・フーズ、および、https://en.wikipedia.org/wiki/Impossible_Foods)。

現在、Impossible Foodsはバーガーキングやホワイトキャッスルといったハンバーガーチェーン店、ハードロックカフェ、ファミリーレストランのチーズケーキファクトリーなどで同社の商品が使われています(https://finance.yahoo.com/news/impossible-foods-grocery-stores-fake-plant-based-meat-gelsons-130049260.html)。
また、Impossible Foodsでも、同社製品を導入しているレストランやカフェを検索できるマップを提供しています。

また、彼らは単にプラントベースミートを提供するだけでなく、導入しようとしている、もしくは導入中のレストランや店舗に、調理方法やレシピのアイディア、ポップなどのマーケティングツール、ウェイター、ウェイトレス、シェフなど従業員へのプラントベースミートの知識や情報といった教育(トレーニング)ツールなども提供しており、提供先企業や店舗と共にインポッシブルブランドおよび市場を創造し、拡大していこうとする姿勢が強くあります。こういったプロアクティブかつポジティブな施策とともに、この企業の近年の成長があると考えると、日本の食材や素材提供企業も参考にできる点がたくさんあるのではないでしょうか。


※画像:Beyond MeatとImpossible Foodsがカバーするマーケット、パートナー、ウェブサイトより引用

次回の中編では、プラントベースミート市場形成の背景、そして実際に商品を買って試してみた体験をお伝えします。

Keep in Touch !

ビジネス、公的な活動問わず、アメリカのこれらの事例から何かのヒントがお届けできれば幸いです。みなさんからのコラムに関するご質問や、こんなことを聞いてみたい、知りたい!というリクエスト、叱咤激励などなど、24時間365日お待ちしております。ではまた次回コラムでお会いしましょう。

columnist

Aya Kubosumi ノマドマーケター


コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。

s.budo