第1回では、顧客の期待をヒアリングし几帳面に一言一句、聞き洩らさず議事録にしたのに企画や提案が上手くいかない。その原因は、依頼者の頭の中の、「思いついたこと、こうすれば、こうなるはず」という想いが未整理状態。頭の中では実現方法は完成している、上手く表現できていないだけと思っている。その「言葉」を受けて行動しても「期待」に応えたことにはならない解説しました。

「心で望んでいる期待 ≠ 口で言った言葉」の構造
・期待しているが、自覚していないことがある
指摘されないと気がつかないことが抜ける(知識があり必要と感じていても思いつかない)
・自覚できているが、表現できていないことがある
言葉で上手く表現できないことが抜ける(言葉にできる・できないは個人差が大きい)
・表現できるが、伝えないことがある
意識して伝えない(自己保身・必要性無しの判断)忘れていることが抜ける(まったくの失念)
・伝えたこと
正しい情報(期待していることの部分情報)
嘘:意図的な嘘(事実と願望の混在)
嘘:表現の捻じ曲げ(自己保身のため)
間違い(勘違い、記憶違い、言い間違い)
このように、「心で望んでいる期待」を正確な言葉にして伝えることは難しい。でも、頭の中では完成していて表現するだけと思っている人がほとんど。新規事業のアイデアを2時間熱く語っても願望だらけ。情報がほとんど無いということもありがち。でも、新しいアイデアの出発点は現状を無視した思いつきと願望。それを意識することが必要。
図1 期待を伝えていく・受取る構造

受信者(営業マン・部下)は、顧客の言葉を聞く時、
・聞き洩らしがあり(誰でも聞き洩らしはある)
・嘘と間違いを、そのまま受取り(判断できない)
・正しい情報を受取る
となり、嘘や違いを含んだ情報を受け止めることで
・誤って理解したこと
・正しく理解したこと
この2つがヒアリングで議事録として文書化されます。
ここに、発信者の「口で言ったこと言葉」が一言一句、几帳面に書き込まれていても意味があるのか。私自身、若い時はこの状態で「しっかり取材した」、「期待を受け止めた」と思い込んでいました。それをもとにシステム開発の要求定義書、新規事業や業務改善の企画書や提案書を作成したので、「違う!」という反応になったのです。
どうすれば、「心で望んでいる期待」を引出せるのか?
図2 依頼者の言葉から「期待以上」を掴む

まずは、相手に様々な視点からの質問をぶつけることで頭の中にある
1.自覚していないこと
2.言葉で表現できないこと
3.伝えていないこと
を少しずつ、具体的に明らかにしていく。
質問しながら一緒に考えることで、双方のイメージのすり合わせができ「期待以上」が、だんだんと見えてきます。
必要なのは、「内容を創る・表現する」の2段階
多くの場合「内容はできている」が分かりやすく表現できていないだけと思っている。私の体験でも、「分かりやすい図解で表現して欲しい」と依頼されてヒアリングしますが、願望だらけで内容がほとんどない場合があります。ある時、「池田さんは表現できるんですか?」と。かなり年配の社長さんなので「内容があれば..」ときつく返すこともはばかられました

必要なことは「期待する内容を創る」、「期待する内容を表現する」の2段階。事業企画の最初の一歩は、内容はほとんどなく、願望・空想からスタート、それが普通。
「表現する」から「創る」というアプローチへ意識を変えると動きやすくなる。するとヒアリングは、「一緒に目標・目的を確認して実現したい事を創っていく」ことになり指示通りに行動するのではなく「指示を再定義する」ができ、それが顧客や上司の満足を引出すことにつながります。
次回は、「顧客の発言がコロコロ変わる理由」を図解で構造から解説していきます。