図解リテラシー 第2回「トラブルが発生する問題の構造」

19.12.13 06:22 PM By s.budo

第1回では、顧客の期待をヒアリングし几帳面に一言一句、聞き洩らさず議事録にしたのに企画や提案が上手くいかない。その原因は、依頼者の頭の中の、「思いついたこと、こうすれば、こうなるはず」という想いが未整理状態。頭の中では実現方法は完成している、上手く表現できていないだけと思っている。その「言葉」を受けて行動しても「期待」に応えたことにはならない解説しました。

「心で望んでいる期待 ≠ 口で言った言葉」の構造

今回は、その原因を構造で考えます。

発信者(顧客)は、自分の期待を伝えます。図1で、「期待を伝えていく・受取る構造」を解説します。
発信者(顧客)が、部下や取引先に伝える時に

・期待しているが、自覚していないことがある

指摘されないと気がつかないことが抜ける(知識があり必要と感じていても思いつかない)


・自覚できているが、表現できていないことがある

言葉で上手く表現できないことが抜ける(言葉にできる・できないは個人差が大きい)


・表現できるが、伝えないことがある

意識して伝えない(自己保身・必要性無しの判断)忘れていることが抜ける(まったくの失念)


・伝えたこと

正しい情報(期待していることの部分情報)

嘘:意図的な嘘(事実と願望の混在)

嘘:表現の捻じ曲げ(自己保身のため)

間違い(勘違い、記憶違い、言い間違い)

このように、「心で望んでいる期待」を正確な言葉にして伝えることは難しい。でも、頭の中では完成していて表現するだけと思っている人がほとんど。新規事業のアイデアを2時間熱く語っても願望だらけ。情報がほとんど無いということもありがち。でも、新しいアイデアの出発点は現状を無視した思いつきと願望。それを意識することが必要。

図1 期待を伝えていく・受取る構造

受信者(営業マン・部下)は、顧客の言葉を聞く時、


・聞き洩らしがあり(誰でも聞き洩らしはある)

・嘘と間違いを、そのまま受取り(判断できない)

・正しい情報を受取る

となり、嘘や違いを含んだ情報を受け止めることで

・誤って理解したこと

・正しく理解したこと

この2つがヒアリングで議事録として文書化されます。

ここに、発信者の「口で言ったこと言葉」が一言一句、几帳面に書き込まれていても意味があるのか。私自身、若い時はこの状態で「しっかり取材した」、「期待を受け止めた」と思い込んでいました。それをもとにシステム開発の要求定義書、新規事業や業務改善の企画書や提案書を作成したので、「違う!」という反応になったのです。


どうすれば、「心で望んでいる期待」を引出せるのか?

問題が発生するのは、顧客の真意を掴まずに言われた指示通りに行動することが原因。言葉通りに動いて期待した結果が出ないと、「ちゃんと聞いていたの?」とか「しっかりやってよ!」などと顧客自身、自分の指示の言葉の不完全さには意識が向かない。その上、自分の期待していること自体が不明確・不完全であるという認識もありません。




仕事で必要なことは、「できるヤツ!」、「頼りになる!」と高い評価を得て指名で仕事を依頼されること、図2のように依頼者の言葉から「期待以上」を掴むこと。優秀と言われる人は、顧客の想定を超える企画や提案を行っている。それには議事録に書かれた「口で言った言葉」を出発点に、「心で望んでいる期待」を探っていくこと。「期待以上」を、一緒に創っていくこと。



図2 依頼者の言葉から「期待以上」を掴む

まずは、相手に様々な視点からの質問をぶつけることで頭の中にある

1.自覚していないこと

2.言葉で表現できないこと

3.伝えていないこと

を少しずつ、具体的に明らかにしていく。

質問しながら一緒に考えることで、双方のイメージのすり合わせができ「期待以上」が、だんだんと見えてきます。


必要なのは、「内容を創る・表現する」の2段階

多くの場合「内容はできている」が分かりやすく表現できていないだけと思っている。私の体験でも、「分かりやすい図解で表現して欲しい」と依頼されてヒアリングしますが、願望だらけで内容がほとんどない場合があります。ある時、「池田さんは表現できるんですか?」と。かなり年配の社長さんなので「内容があれば..」ときつく返すこともはばかられました

必要なことは「期待する内容を創る」、「期待する内容を表現する」の2段階。事業企画の最初の一歩は、内容はほとんどなく、願望・空想からスタート、それが普通。 

「表現する」から「創る」というアプローチへ意識を変えると動きやすくなる。するとヒアリングは、「一緒に目標・目的を確認して実現したい事を創っていく」ことになり指示通りに行動するのではなく「指示を再定義する」ができ、それが顧客や上司の満足を引出すことにつながります。


次回は、「顧客の発言がコロコロ変わる理由」を図解で構造から解説していきます。

プロフィール

池田 秀敏 図解エクスプローラー


中小企業における多くのシステム開発経験の蓄積から、現場で発見した「知恵」をもとに業務プロセスやコツ・工夫を図解で可視化して共有・伝承する仕組み作りを提唱。思考を整理し表現する方法として9つの要素(基本形)を組合せ構造化する図解手法を体系化。10,000枚を超える図解の作成経験とノウハウを活かして、図解手法による業務改善、企画・提案力向上セミナー、ワークショップ、講演、コンサルティング等、多岐にわたり活動中。


有限会社テオリア 代表取締役 http://www.teoria.co.jp/

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