図解リテラシー 第3回「顧客の発言がコロコロ変わる理由」

20.01.23 03:11 PM By s.budo

発言の表面だけを見ていても本質はつかめない

 第二回では、「心で望んでいる期待 ≠ 口で言った言葉」となる構造を解説しました。
今回は、依頼者が自分の「心で望んでいる期待」を理解していないために、その場の思いつきで依頼していることを構造で解説します。


 多くの人に、以下のような体験があると思います。顧客や上司の依頼通りにやっていたのに、できあがった企画書を見せたら「違う!」、「何を聞いてたの?」、「期待していたのに..」とダメだし。打合せを続けると、
・聞いていないことが、どんどんできてくる


やっぱり「これを止めて、こっちにして」となる


言っていたことのニュアンスが微妙に変化する


しっかり決めたことが、簡単に覆される


矛盾する要求が、当然のようにでてくる

 というようなことが、打ち合わせのたびに起こります。

議事録でしっかり確認してあるのに「それは、そういう意味じゃない」などと上から目線で言われます。打ち合わせのたびに追加と変更を繰返して、結局、最初に戻ってしまうこともあります。依頼を受けた側としては、「今まで、何だったの?」。まさに不毛なやりとりです。今までの時間と労力を返してくれと言いたくなります。当然です、しっかり考えて作っているのですから。


指示がコロコロ変わる理不尽な顧客とか上司の場合、感情的になっても意味がありません。当の本人は、その場・その場で一生懸命です。目の前に置かれた企画書や提案書を見て、その場で頭に浮かんだ「ここが違う・これを追加して」と言うのです。それまでの打ち合わせで何を指示したのかには興味がありません。記録していません。覚えてもいません。その結果、言うことはがコロコロと変わると感じられてしまうのです。それを指摘しても、自分は正しいし一貫性を持って臨んでいると本気で思っています。こういう人ばかりではありませんが確実に仕事の現場にはいます。自分でしっかり考えないで、思いつきのアイデアで新規事業や業務改善をしようと他人を巻き込んでリーダーシップを取ろうとします。でも、しっかりした旗頭を示せないので途中で投げ出すこともあります。若い頃に、これに何度も悩まされました。これに対処するには議事録をしっかり作ることです。でも、これは保身にはなりますが、根本的な解決策にはなりません。

1 発言がコロコロ変化する構造

コロコロ変わる根本原因は?

なぜ、指示がコロコロ変わるのか、その根本原因を理解して対処することが必要です。


図1の氷山モデルを使って考えてみます。

行動や発言は、氷山の上にでた現象でしかありません。行動がコロコロ変り、発言に一貫性がない原因は、水面に近い表層部分の「何を(What)・どのように(How)」に影響されるのです。「何を」→「どのように」→「行動・発言(Do)」が変化します。この「何を」→「どのように」部分は、まわりに大きく影響を受けます。

  • 目の前にある環境や条件
  • 自分や関係者の利害や感情
これらが変化することで「行動・発言」がコロコロ変化するのです。


一方、変わらない部分があります。深層の「何ために(Why)」の部分です。

現象として発せられる発言や行動に振り回されていては、顧客や上司の満足を引出すことはできません。必要なことは、口先の言葉に踊らされずに深層の「心の奥底」を理解することです。これが「行動の源」となります。ここをしっかり掴んで、「何を→どのように」を具体化することで、顧客満足につなげることができます。しかし、実際は本人ですら自分の中の「Why」に気がついていないことの方が多いのです。何となくぼんやりと意識している状態です。ここをしっかり言葉で定義できると「何を→どのように」へと具体的に展開することができブレがありません。

必要なことは指示や依頼を再定義すること

では、深層の「何ために(Why)」をどう探していくのか。
図2のように相手の発言を考える材料とすることです。ここでブレーキとなるのが、顧客や上司の指示はしっかり守らなければならないという意識です。


もっとも、この指示が「抽象度の高いもの」だと行動が人によって異なります。指示通りやったつもりでも、指示通りにやっていないと叱責されることになります。「求められる成果につながらないもの」だと、指示された方は「やっても無駄」と感じますが、指摘できません。途中で気がつくこともあります。



図2 相手の発言を考える材料とする

必要なことは、顧客や上司の指示や依頼を「再定義」することです。再定義しないで、言われた通りに行動する事は、依頼に応えたことにはなりません。


それには「聞いた言葉」を考える材料とすることです。言葉通りを信じない、大きくとらえて「相手を読む」ことが求められます。聞いた言葉を出発点に「問い?」を立て、




・指示の背景は何か

・目的や意図は何か

・満足する目標や着地点は何か

・利害関係の整理


などを言葉で具体化していきます。


重要なことは、一緒に考えることです。
一緒に考えることで、依頼者自身が見えていなかった「Why」を少しずつ明らかにしていくことができます。では、どのように「問い?」を立てるのか。図解を使ってMECE(ミッシー:もれなく、ダブりなく、全体を網羅して)となる「問いを立てる技術」で明らかにできます。
顧客の発言がコロコロ変わる理由を踏まえ、指示や依頼を再定義できれば、コミュニケーションロスを解消でき、仕事の密度、関係者間の信頼感が高まります。


次回は、「依頼の5段階と、上流に遡って再定義する」を図解で構造から解説していきます。


プロフィール

池田 秀敏 図解エクスプローラー


中小企業における多くのシステム開発経験の蓄積から、現場で発見した「知恵」をもとに業務プロセスやコツ・工夫を図解で可視化して共有・伝承する仕組み作りを提唱。思考を整理し表現する方法として9つの要素(基本形)を組合せ構造化する図解手法を体系化。10,000枚を超える図解の作成経験とノウハウを活かして、図解手法による業務改善、企画・提案力向上セミナー、ワークショップ、講演、コンサルティング等、多岐にわたり活動中。

有限会社テオリア 代表取締役 http://www.teoria.co.jp/